極上の里浜ガストロノミーのお店「pesceco(ペシコ)」。食べログ4.33(2021年3月現在)グルメランキング、イタリアンで九州ナンバー1.ミシュラン2019年度版1ツ星獲得と光り輝くお店なのです。
長崎の島原の海を目の前に、不思議な空色のBOXのような小さな建物が。よく見ると看板にpescecoの小さな文字が書かれています。タクシーで最初通り過ぎてしまうほど目立たない建物ながら、よく見るとかなり個性的でした。
ここが1986年生まれの若きシェフ井上稔浩(たかひろ)氏の超が付くほど予約が取りにくい人気店「ペシコ」です。現在は最大6席2テーブルのみでの営業で、私たちがお邪魔したランチタイムは2人組2テーブルでした。カウンターも6席あるものの、今は使っておられないようです。セミプライベート感覚でゆったり楽しめます。
「里浜ガストロノミーコース」はイノベーティブの要素が強い内容で、全11品。この日は食材の関係でコース料金が約19000円となりました。大きな特徴はメインとしての肉料理が出ないこと。主役は魚介類。そして主役を引き立てるための脇役はこだわり野菜だったり米だったり生ハムだったりします。
「この土地の山と海がもたらす自然の恵みと、里浜の守り継がれてきた人々の文化」をシェフは見事に数々の料理に昇華させていくのです。
テーブルに座ると、ちょうど目の前の高さに海が望める長方形の窓があります。海と空が一緒に眺められるインテリアの一部となっています。食材はこの目の前の海で知り合いの漁師さんが素潜りで採って来てくれた牡蠣とか鮑とか。だから新鮮なことはここでは当たり前なのでしょう。
井上シェフのお父様は島原で魚屋を経営され、シェフもかねてから魚のことはお父様から教え込まれてきたそうです。素材を知り尽くしているから美味しく料理できるはずです。最初は親子で居酒屋を経営したものの、作る料理は安くないと売れないし苦労の日々が続いたのだそう。その後、「pesceco(ペシコ)」を商店街にオープンしたけれど、やはり当初はカジュアルな店でした。そこで井上シェフは一念発起し、コンセプトも変更して2018年に今あるオーシャンフロントに移転して、見事成功を収めたのです。地域で愛される店から島原を発信する店になり、ここで食事をするために島原へわざわざやって来る、そんな名店になりました。
かつて同級生だった幼馴染の奥様は居酒屋時代からシェフを手伝い、ずっと苦楽を共にしてこられたのです。そして今も2人でこのお店を切り盛りされています。
「浜辺のスナック」「波紋のように」などなど抽象的な表現しか書かれていないメニュー。どれもが食材の新鮮さや旨味を感じられる逸品ぞろいで、記憶に残る料理でした。アミューズはそれこそ漁師さんが素潜りで採ってきた紫雲丹と柔らかいコウイカのタルトレット。幸せな時間の幕開けです。
次は見ただけで美しさに歓声を上げた牡蠣のお皿。生牡蠣は海のミルクとも呼ばれるから、山のミルク・ジャージー牛乳と合わせた料理にしたそうです。牡蠣も種から2年かけて育てた絶品。九条ネギや美しいお花も添えて。全部まとめてツルッといくと、爽やかな旨味が口いっぱいに広がり、牡蠣が何より大好物の私はもう嬉しくて嬉しくて!!あと3個くらい欲しかったです。
島原湾のオコゼは少しのお米をリゾット風にして刻んだピクルスや雲丹、オコゼの肝などと合わせ昆布水の泡で包んであります。この後はフグ料理、ちょっと中華っぽい芝海老のラビオリスープ、クエのフリットと生ハムを合わせた意外な組み合わせのお皿、アルデンテの素麺とカニを合わせた料理に、蟹を載せたブルスケッタと続きます。パン好きの私はこのブルスケッタ、毎日ランチで食べたいほど気に入りました。大好き!!ここではパンは色々出さなきゃダメという普通の発想はなく、自分のやり方を通しているのが潔いのです。
カサゴのしゃぶしゃぶ風、鮑のバターソテーにあおさ海苔や鮑の肝と黒ニンニクソースと続いた後、〆はサラッとしたおじや風のリゾットです。すべての甲殻類や魚介類のエキスがギュッと染み込んだ熱々のおじやはあまりにも美味しくて、満腹なのに一口お替りしてしまいました。後引く旨さ!!
しかし30代半ばでこれほど完成された絶品料理を作るシェフは、この先どうなっていくのでしょうか?遠い島原ですが、また時々お邪魔したいものだと思いました。(2021年3月訪問)
レストラン名 | pesceco(ペシコ) |
ジャンル | イタリアン(イタリア料理)、イノベーティブ |
住所 | 長崎県島原市新馬場町223-1 |
TEL | 0957-73-9014 |
予算 | ランチ・ディナー共 16000円~ |
座席 | 6席 |
個室 | なし |
予約の可否 | 完全予約制 |