「小ぢんまりとしたちょっとレトロな雰囲気が漂い、毎日のように顔を出す常連がいる」
私の中の洋食屋のイメージと言えば、ドラマで出てくるような昭和で下町風情溢れるもの。店主が一人で切り盛りしていて、定番は創業から変わらないビーフシチュー。常連客は決まってそれを注文し、料理よりも和気あいあいとした雰囲気を目当てにやって来る…コテコテかもしれませんが、洋食屋と聞くとそういうイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。
今回私が訪れたのは京都にある「グリルフレンチ」。二条城前にあるこちらのお店は50年以上続く老舗店です。とは言っても創業100年以上がざらにある京都では老舗の部類ではないのかもしれませんが…。店名に「フレンチ」と入っていますが、メニューにはハンバーグやビーフシチュー、カレーなど洋食屋らしいラインナップが並びます。店名から勝手にチープな雰囲気だと思っていたのですが、実際のお店は白を基調としたオシャレ空間。2階建てのレストランにはゆったりとしたカウンター席とテーブル、個室まで完備されています。50年の歴史があるとは思えないほど清潔に保たれた店内は、都内の高級フレンチ店と遜色なし。それでいて、コック帽をかぶった料理人さんたち数人が料理から接客までこなしている様子は、京都らしい割烹スタイルのようでもあります。
料理はアラカルトが基本ですがお任せで頼むことも可能。私はせっかくなら好きなものを食べたかったので、アラカルトでジャガイモのポタージュスープやアスパラサラダ、カニクリームコロッケをはじめ、洋食屋らしいハンバーグやビーフシチューを注文しました。
下町の洋食屋に行ったことが無いので比較することは出来ないのですが、ここの料理は確実に分かるレベルの高さ。一つ一つ丁寧に作られていて奥深い味わいが特徴的です。
特に私が気に入ったのがカニクリームコロッケとビーフシチュー。カニクリームコロッケは目の前で調理した揚げたてをいただけます。表面はサクッと、中はトロッとした特製のクリームソースが湯気を立て、ひとくち食べてその美味しさに感動します。一方ビーフシチューはクラシカルな味付けが奇をてらわず美味。お肉も口の中でほろっと崩れ、まさに理想的なビーフシチューなのです。
どれを頼んでも期待以上のものが出てくる「グリルフレンチ」。普段は食の細い連れも相当気に入ったのか、〆にエビフライサンドを追加注文。ぷりぷりとした大ぶりのエビフライを贅沢にトーストでサンドしたそれはお持ち帰りも可能でしたが、美味しくてあっという間に完食してしまいました。
町の洋食屋さんを想像して行くとお値段は張りますが、下手な高級フレンチに行くよりもずっと安く美味しいものをお腹いっぱい食べることが出来ます。今回は3人で訪れてお会計は17,000円ほど。もしかしたら居酒屋に行くより安いのでは…?これだけのレベルの高い料理をこの価格で楽しめるとは…これは常連客が増えるのも頷けます。高級洋食店ではありますが、だからと言ってお高くとまっている感じは一切なく、流れるような作業の中でも私たち客とのコミュニケーションは忘れません。楽しそうな常連客の笑い声がそこかしこで聴えてくる店内は、なるほど私が想像していた「町の洋食屋さん」と変わらないのかもしれません。なんでもシェフは24歳の時に開業し、以来51年間も現役でカウンターに出ているのだとか。今でもお客さん一人一人に挨拶する姿に、このお店が長く愛されている理由を見つけた気がしました。格式張ったお店が多い京都で、肩ひじを張らず美味しい料理を堪能できる…「グリルフレンチ」はそんな素敵な洋食店なのです。(2021年4月訪問)
レストラン名 | グリルフレンチ (Grill French) |
ジャンル | 洋食 |
住所 | 京都府京都市中京区小川通御池上ル下古城町377 |
TEL | 075-213-5350 |
予算 | ランチ¥3,000~ ディナー¥6,000~ |
座席 | 17席 |
個室 | 有り |
予約の可否 | 予約可 |