7月、イナカーザという横浜のイタリアンレストランを訪れました。イナカーザという店名なのでイタリアの田舎料理を主にやっているお店なのかと思いきやどうやら違うらしく、シェフの稲崎匡彦氏(INA)と、その家(CASA)でイナカーザという名前にしたのだとか。その店名に相応しく、まるでシェフの自宅に招かれたような落ち着いた雰囲気が魅力です。お店はシェフとマダムの二人三脚でやっているそうで、事前に口コミを見ていると「美味しいけど料理の提供に時間がかかる」とのコメントがちらほら。しかしそういった意見を受けて改善されたのか、私が訪れた時には特別提供が遅く感じることはありませんでした。
お店はJR京浜東北線東神奈川駅から徒歩10分ほどの住宅地に位置します。横浜とは思えないほど辺りは静寂に包まれていて、なんだか本当に田舎にやって来てしまったかのような感覚。お店はカウンター席と個室に分かれていて、今回案内されたのは扉をくぐったすぐ横にある個室。隠し部屋風で、個室へと続く扉が本棚になっていたのがユニークでした。
小さな隠れ家レストランですがイナカーザには最先端の調理器と伝統的な調理器の2つが揃っており、かなり本格的な料理が楽しめます。最新の調理器には素材に繊細な加熱を施すスチームコンベクションを、伝統的な調理器には料理の風味を一段階上に仕上げる薪のクッキングストーブを採用しています。以前別の薪料理のお店へ訪問した際、薪焼きは煙の問題があるからなかなか都会でやるのは難しいという話を聞いたことがあったのですが、まさかこんな住宅街で薪焼きのお料理をいただけるとは驚きました。一般的な炭火焼きと違い、薪焼きは薪自身が持っている水分が蒸発し食材に移るのでジューシーに仕上がるのが魅力です。
今回は1人6,930円のランチコースを注文。アミューズを含めて全5品の構成です。イナカーザの料理は特別創作性のある料理というわけではありませんが、どれも洗練されています。特に前菜のトウモロコシの冷製スープが素晴らしく、渥美半島で採れる白いトウモロコシ「雪の妖精」と「ゴールドラッシュ」という糖度の高い品種を贅沢に使用しています。またスープの下には根室のウニとアクセントに伊豆のワサビが埋まっており、軽く混ぜて食べると病みつきになる美味しさでした。
またパスタも本格的で良かったです。ブジアーテと呼ばれるショートパスタは立て巻きパーマのようにくるくるとした見た目が特徴的で、ショートパスタでありながら噛んでいるとロング麺のような食感が楽しめます。一緒に合わせるパスタソースは尾崎牛を使用したラグーソース。下には通常のものよりクリーミーなモッツアレラチーズを敷き、上には今が旬のオーストラリア産の冬トリュフを振りかけます。トリュフの香りとラグーソースの濃厚な旨味、そして風味をマイルドにしてくれるチーズの相性が最高です。
またじっくりと焼いてスモークにかけたメインの幸福豚もレベルが高かったです。シェフはソースをかけない主義らしく、皿の手前にエジプトの塩とマカ、バルサミコを煮詰めたソースの3種類を用意。お好みでつけて食べることが出来ます。ただ、ソースをつけずとも肉本来の旨味やスモークの香りが芳醇で、そのままで十分楽しめます。一見火が通り切っていないように赤っぽく見えるお肉ですが、火加減が巧みで噛んだ時のジューシーさや柔らかさなどが絶妙でした。
料理はもちろんのこと、イナカーザはサービスも素晴らしかったです。マダムのコミュニケーション能力が高いことに加え、シェフはあまり喋る時間がありませんでしたが、帰る時には店先まで出てきて深々とお辞儀してくださりました。横浜の住宅地にありながら、まるで田舎のプライベートレストランを訪問したような特別感。落ち着く店内はゆっくり楽しむのには最適で、記念日などにも向いているレストランと言えるでしょう。
田舎の小さなレストランのような温かみのある接客を目指しているから「イナカーザ」とつけられたのではないかと思えるほどアットホームで、素敵な時間を過ごすことが出来ました。(2021年7月訪問)
レストラン名 | イナカーザ (INACASA) |
ジャンル | イタリアン/イタリア料理 |
住所 | 神奈川県横浜市神奈川区神奈川2-1-1 |
TEL | 050-5595-0637 |
予算 | ランチ¥6,930~ ディナー¥11,495~ |
座席 | 11席 |
個室 | 有り |
予約の可否 | 完全予約制 |