フランスには「フランスで最も美しい村協会」というのがありますが、日本にも同じように「日本で最も美しい村」連合というのがあったのです。知らなかった!そしてここ群馬県北西部の六合(くに)という村もそれに認定されています。秘境のように大自然に包まれて日本の原風景とも呼べる緑濃い風景が広がっています。そんな六合にある尻焼温泉は、川底から湧き出す豊富な湯を堰き止めて造られた温泉郷。天然の源泉かけ流しの温泉は秘湯ムード満点で、露天風呂の素晴らしさはそれこそ「日本で最も素晴らしい露天風呂」協会でもあれば私なら一番に認定したいところです。
男女入れ替え制で、最初夜まで女性用の露天風呂だったのが、四方八方緑に包まれるように木々が近く、秘湯ムード満点の大きなお風呂だったのです。ラッキーなことに訪れた日は他に2組だけのお客さんとあって、すれ違いはしても湯船は常に独占状態。本当に幸せな時間だったのです。ここの特徴でもありますが、湯は柔らかく、何度入っても湯疲れしないのも良い点です。
かけ流しなので最初は湯の温度が熱すぎましたが、宿の人に言えば調整してくれるし、部屋の露天風呂は自分で調整が可能。
男性用の露天風呂は渓流に面していて、階段を下りていくというアクセスも秘湯気分です。私は翌朝入ることができました。こちらは昨晩のお風呂より狭いものの、川に近くて一人で入っていると気分は最高。
「白砂」という離れにある部屋に泊まりました。掘りごたつのある居間と眺めを楽しめるデッキ、露天風呂付きです。この露天風呂も緑が滴るように美しい新緑のシーズンは最高のお風呂タイムなのでした。この部屋は二人で泊まれば2食付きで1人23000円~。お風呂なしの部屋なら13200円からで、家族風呂が貸し切りで空いている時はいつでも入れます。
湯上りラウンジスペースがあって、コーヒーメーカーが置いてあるので、いつでもコーヒーや紅茶を自分で作ってひと休みも可能です。夜は他に2組だけとはいえ、とっても静か。しんしん・・・という静寂の音は聞こえてきそうな秘境です。コーヒーはコクがあって美味しくて、これも豆のチョイスが良いことに嬉しくなりました。
この宿の料理は予想を超えた美味しさでした。食事処は仕切られてほぼ個室で安心です。接客も丁寧で、地元の人々のおもてなしには実直さや優しさを感じます。
最初にひと口だけ炊き立ての蕗ご飯を出すのは斬新です。先付けや造りの後は八寸。スティックブロッコリーとサニーレタスを人参ソースに挿してあったり、サラダ春菊を生ハムに巻いたり、白和えやこんにゃく麺などの和の料理に洋を取り交ぜ変化に富んで、見た目も華やかで面白いものです。ぬたのほかに、ピューレやペースト、ムースにプリンといった柔らかい食感の料理が得意なようです。茶わん蒸しにとろけるチーズが入っていたのは、他に具材は入っていなくてもすごく美味しくて、火傷しそうに熱々なのも素晴らしい点でした。いろいろ創意工夫があって飽きないメニュー構成です。
この宿は草津温泉の老舗「草津ホテル」の系列とのこと。「草津ホテル」の経営者の妹さんである大谷郁美さんが女将をやっているそうです。3年前にお父様に言われて急遽女将になることが決まったそうです。それまでは東京で暮らしていた方が3人のお子さんを連れてこんな田舎にやって来て頑張っておられるのです。そしてこちらに来られた翌年、残念なことにお父様は亡くなられたそうです。旅館を長くやって来られたお父様の後を継いで、ここまで素晴らしい宿にされたことに感動しました。
彼女が目指すのは「居心地の良い宿。静かに過ごせる宿」。インバウンドをもっと増やして・・などという周りの声があるのに、あえてそうしてこなかったのもそのためです。小さくて静かで環境抜群の露天風呂があって、お食事も美味しい宿。まさにこの宿は私の理想を叶えてくれました。心から女将さんを応援したい気がしています。
紅葉の見頃は10月中旬~11月上旬とのこと。紅葉に包まれた露天風呂に入りに、また絶対来ないと!! (2021年6月訪問)
旅館名 | 星ヶ岡山荘 |
住所 | 群馬県吾妻郡中之条町入山1539 |
TEL | 0279-95-5121 |
お風呂 | 大浴場 露天風呂 貸し切り家族風呂 |
予算 | 2名1室の場合 1名 13200円~(2食付き) |
露天風呂付き客室 | あり |