勝浦の港から専用船の送迎を受け、碧い海に浮かぶ島のホテルに到着します。その名は「熊野別邸 中の島」。周りは島の緑に囲まれ目の前には美しい海が広がる、船でしか行けない楽園のごときホテル。ここはかつて長い間「ホテル中の島」という南海電鉄系列が経営する150室もの大型老舗旅館でした。それをリニューアルし、2019年4月に大きく変貌させてオープンしたのです。豊かな天然温泉はそのまま生かし、全室露天風呂付きの洋室の新館「凪の抄」10室を作り、他の部屋も全室オーシャンフロントのスモールラグジュアリーな旅館を目指しスタートを切ったのです。
私が選んだ部屋はかねてより高級客室棟だった別館「潮聞亭」の和洋室。115平米の部屋にはベランダに小さな絶景露天風呂付き。何より素晴らしいのが、開放的な海の風景と、イルカの訓練所が目の前にあること。露天風呂に入りながらイルカたちがジャンプする姿が見られる楽しいロケーションだったのです。全部で15匹ほどいます。どうしてここにイルカがいるのか?大浴場の露天風呂にいた地元のおばさまに訊いてみると、「この辺ではイルカを食べる人がいるんですよ」との話。ぎょっとしてホテルの人に聞くと、真相は水族館に連れていく前に訓練しているのだそうです。食べなくてよかったー!健気に一生懸命ジャンプの練習をして、早朝見ると背中を見せてプカプカ浮かんで寝ています。何とも愛らしいイルカたち。新館では見られないので、すっかりこの部屋が気に入りました。
部屋を減らしたとはいえ部屋数はいまだに多いし、食事処に行ってもつい立てはあるものの結構詰め込まれて、食事のレベルも中級宿の内容。まぐろ尽くしはちょっと飽きてくるものでした。中途半端なサービスも目立ちます。送迎船の待合室からホテルライフは始まるはずなのに、桟橋まで荷物を自分で持たされたり、サービスが行き届いていません。高級旅館のポリシーを持って、個室で食事を取らせたり、まだまだ改善の余地はあるでしょう。貸切風呂を有料にしている割に設備が今いちだし、お部屋の冷蔵庫に何も入っていないってビジネスホテルみたいです。アイランドリゾートを目指すなら、連泊してもらうためにプールやスパも必要では?
このような素晴らしいロケーションと質の高い温泉があるという優位性をもっと生かして、今後は本物のスモールラグジュアリーを目指していってほしいと切に願っています。
(2020年8月訪問)
旅館名 | 熊野別邸 中の島 |
住所 | 和歌山県東牟婁郡那智勝浦町大字勝浦1179-9 |
TEL | 0735-52-1111 |
お風呂 | 大浴場 露天風呂 洞窟風呂など |
予算 | 2名1室の場合 1人29500円から(2食付き) |
露天風呂付客室 | あり |