徳島市内から車で1時間半。山が迫る海辺の町・ウミガメで有名な日和佐は、都心育ちの私から言わせると「ど田舎」という言葉が相応しい、緑に溢れた小さな町です。
「こんな辺鄙なところになんでわざわざ?」と思われる方も多いでしょう。実はここには1日数組限定でオープンしているフレンチレストランがあるそうで、せっかくなら訪れてみようとなったわけです。まさに「こんなところにフレンチレストラン」だ・・・。
古民家をそのままレストランとして使用している「ラトリエ・あべ」。看板は出ているもののあまりに周辺の建物と馴染みすぎて、一度車で通り過ぎてしまったほど。カラカラと引き戸を開けると中から店員さんが笑顔でお出迎え。ちゃんと靴を脱いでスリッパに履き替え、食事のスペースに案内されます。
テーブルは居間を衝立で仕切った2つのみ。昼と夜で2組ずつしか予約を受け付けていないそうで、室内の雰囲気も相まってなんだか趣味でレストランをやっているような印象を受けます。
お冷の代わりにお茶が出されたり、ワインはすべて自家製で赤と白1種類ずつしかないなど、なにかと変わっている「ラトリエ・あべ」ですが、私が特に驚いたのがカトラリーの数。普通食事を終えるごとに使用した分のカトラリーを下げ、新しいものをセットするのが一般的ですが、ここはあらかじめすべてのカトラリーがテーブルの上にズラリ!フォークとナイフが5本ずつにスプーンが4本も並ぶテーブルセットは流石に初めてでした。
しかしそんな珍妙な雰囲気とは裏腹に肝心の料理のレベルは高く、東京のフレンチと十分張り合えるほどの美味しさ。どの皿もびっくりするほど手間が掛けられていて、前菜のサラダは金目鯛を燻製に、フォアグラはモンブラン風に調理した鳴門金時と一緒に・・・などなど、いくつも手間をかけているのが分かります。シェフである阿部節夫氏は「料理は趣味」と語っていますが、趣味にしてはレベルが高すぎます!なんでも以前は別の場所で「シェアベ」というレストランをやっていたそうですが、2001年に今の場所に名前を変え移ってきたのだとか。まさかこんな徳島の田舎でこれだけのフレンチを食べられるとは思ってもみませんでした。
しかもこれだけ凝っていながらコースは全12~13品。なんとデザートだけでも3品出たのには驚きました。これでランチコース5000円はなんだか申し訳ないほど。コスパ最強のあったかフレンチに出会えることが出来ました。(2021年1月訪問)
レストラン名 | ラトリエ あべ |
ジャンル | フレンチ |
住所 | 徳島県海部郡美波町山河内字なか26 |
TEL | 0884-77-3755 |
予算 | ランチ・ディナーとも¥5,000~ |
座席 | テーブル2つのみ |
個室 | 無し |
予約の可否 | 完全予約制 |