皆さん水炊きには2種類あることをご存知ですか?恐らく多くの人が思い浮かべるのは、昆布出汁の中に鶏肉や野菜などの具材を入れる関西風の水炊きでしょう。「それ以外に水炊きってあるの?」と思われるかもしれませんが、実は水炊きの本場・博多では一般的な水炊きとは全く違う食べ方をします。
では2つの水炊きの決定的な違いは何かと言うと、出汁の取り方にあります。先ほども書いたように関西風の水炊きは昆布出汁。対して福岡では鶏の皮や骨付き肉などを煮込むことで旨味成分たっぷりのスープを作っていき、野菜を入れるのはあくまで最後です。
両親が京都出身ということもあり、我が家の水炊きは関西風。ですが今回博多に訪れる機会があったので、本場の水炊きを味わうべく人気水炊き専門店「橙」へ足を運んできました。
ご紹介する「橙」はそもそも「鳥次」という焼き鳥店が経営する水炊き屋。そのため鶏肉へのこだわりが強く、その質の良さが人気の秘密となっています。そしてここのメニューは水炊きと唐揚げのみ。やはり専門店としての自信を感じます。
水炊きはコースが3500円。雑炊を追加する際はプラス350円というお手頃価格です。東京の居酒屋などで水炊きを注文すると大抵具材がいっぺんに運ばれてきて「後はお好きにどうぞ」といったスタイルかと思います。しかし本場の水炊き屋では正しい作法というものが存在して、それに従って食べるのが主流。とは言っても面倒なことはすべてスタッフさんがやってくれるので、私たちは出されたものを食べるだけでOK!楽ちんです。
では具体的にどういう順番で食べるのかと言うと、まずは鶏の出汁がきいた濃厚スープから。余計なものを入れずにシンプルにお好みで塩だけ振っていただくのですが、その美味さと言ったら…感動です。そしてこの「まずスープだけを飲むこと」こそが博多の水炊きの大きな特徴なのです。この後追加でお肉を入れていくのでもっと味が深くなるのですが、この時点で〆の雑炊への期待が高まります。
スープを味見したあとはいよいよお肉!骨付きのもも肉やスネ、手羽元の3種類を自家製ポン酢につけていただきます。部位によって食感は勿論味も全然違うのですが、どこをとっても美味。なんでも食鳥処理免許を持つプロが1羽を丸々捌いて、新鮮で最も美味しい状態で提供しているのだとか。3種のお肉も食べ応えがあっていいのですが私が特に気に入ったのが鶏つくね。少し粗めにミンチされているので肉感があり、それでいて旨味もたっぷりです。こちらはあっさりと塩でいただくのがオススメ。つくねもすべて店員さんが鍋に入れて食べ頃になるとお皿によそってくれるのが嬉しいところです。
そしてそんな鶏の旨味エキスたっぷりのスープにキャベツや豆腐、葛切り、えのきを投入!鍋と言うと白菜のイメージですが、水分で味が薄くなるのを防ぐため博多流の水炊きではキャベツを採用しています。これも大きな特徴の2つめに数えられます。たしかに加熱され甘みが増したキャベツと絶品スープの相性は抜群です。めちゃくちゃご飯が欲しくなりますがここはグッと我慢。〆の雑炊のためにお腹をあけておきましょう。
そしていよいよ最後の雑炊。今回私はお米を選択しましたが、素麺を選ぶことも可能です。溶き卵を入れただけのシンプルな雑炊ですが、スープが絶品なのでこれで満点。一緒に出されたニラ醤油を数滴垂らすと更に風味が豊かになるのでオススメです。
鍋は最も簡単な料理の一つだと思います。とりあえず肉や野菜を突っ込んでおけば出来るし、どれだけ料理が下手な人でもそれなりのものに仕上がる数少ないメニューです。しかしこうして鍋の専門店に行ってその味を知ると、「これは家では真似できない」とすぐ分かるはず。今回「橙」でいただいた水炊きもまさにそんなクオリティ。手取り足取り鍋の面倒も見てくれて最高の水炊きが堪能できる「橙」。博多に行くなら一度は訪れたい水炊きの名店です。(2021年5月訪問)
レストラン名 | 博多水炊き専門 橙 |
ジャンル | 水炊き、鶏料理 |
住所 | 福岡県福岡市中央区大手門1-8-14 |
TEL | 050-5597-4377 |
予算 | ¥3,500~ |
座席 | 74席 |
個室 | 無し |
予約の可否 | 予約可 |