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能登半島の付け根に位置する石川県七尾市。JR和倉温泉駅から車で15分ほどの塩津にある旧海水浴場跡地に建つイタリアンレストラン「ヴィラ・デラ・パーチェ」。のどかな風景を一望できる素晴らしいロケーションに、2020年11月にできたそうです。できてまだ1年もたたないから、地元のタクシードライバーも知らないようでした。
東京生まれのシェフ平田明珠(めいじゅ)氏はイタリアのお店で修業後、能登の七尾が気に入って2016年に七尾市でお店を開店。でも2020年11月に念願のこの海辺への移転を果たされたのです。リニューアル後すぐ、2021年度ミシュラン1ツ星獲得、ゴ・エ・ミヨでも14.5の高評価で、今や予約の取れにくい名店となっています。9月下旬ランチにお邪魔して平田氏の料理を満喫しました。今回はその内容をご紹介したいと思います。
唯一無二のユニークなロケーション
場所がわからないタクシードライバーに「旧塩津海水浴場の海の家跡地」というとわかってもらえました。かつて海辺にあった集会場を改装してできたお店なのです。海の家だから海が近いはず。近いというより十数歩で海なのです。
お店のパーキングに到着し、建物が2つあるのでどちらに行くのかと考えていると、海側の建物から男性スタッフがやって来て声を掛けてくれました。その方がソムリエの塩士さんでした。「ようこそようこそ!!」と満面の笑みで温かい出迎えです。荷物も運んでくださり、心配りが素晴らしい方です。初めからお店の印象が急速にアップしたのです。こういうサービスの出来るスタッフさんがいるだけで、このお店は絶対安泰だと思いました。シェフもサービスを任せて料理に専念できるから助かるはず。
もう一つの建物が1日1組のゲストが泊まれる宿泊施設棟でした。海側で眺めが良い方がレストランです。中に入ると、ゆったりとした店内はまず大きなガラス越しに切り取られた海と空、そしてかつて砂浜だったところに草が生え、そのグリーンもきれいです。それにしてもこんなに海が近いレストランは初めてです。1日中眺めていても飽きないほどのんびりして癒されます。景色もご馳走だから、料理がより美味しくなるはずです。こんな辺鄙な場所にまではるばるやって来てお食事を楽しめることの贅沢に感謝。最初に塩士さんが言われたように、食事時間は3時間かかります。11皿ほどのコースはランチもディナーも同様で、ランチでも急かされることはなく、心地よい時間が流れて行きます。
能登の自然をふんだんに感じる料理の数々
平田シェフの料理のコンセプトは「能登でしか味わえない料理」であり「能登の自然を感じられる料理」だといいます。素晴らしい生産者さんと繋がり、地元のこだわった食材を使った料理なのです。能登半島の豊かな里山や里海の人々の暮らしそのものが「世界農業遺産」に指定されているそうです。オリーブオイルと小麦以外の95%の食材は何でも揃う能登のものです。能登の食材は東京でも取り寄せられますが、田舎のおばあちゃんが朝採って来てくれたきのこや山菜、手作りの発酵食などの能登ならではの食文化はここでしか味わえないものだと言います。そうした貴重な食材を素晴らしいイタリア料理に昇華させていくシェフの手腕は見事です。
アミューズの前にシェフのスペシャリテのひとつ「蕎麦がき」からコースはスタートしました。日本風の食材ですが、シンプルに美味しいイタリアンの1品です。椎茸の中でも肉厚なブランド椎茸115という原木椎茸と塩と水だけで作った素朴なスープを蕎麦がきにかけたもので、ほっと気持ちがほぐれていくような優しい味わいです。それからアミューズが3品出て、アオリイカの前菜へと続きます。3日間寝かせたアオリイカに豚の背脂を薄くスライスして纏わせ、柑橘系のさっぱりしたソースで。ねっとりした熟成されたイカの甘味が絶品です。
まさにこれは能登でしか味わえない!
次は鱧の料理です。鱧にはセモリナ粉をまぶして調理。白茄子のソース、きゅうりを添えモロヘイアの葉っぱやつるむらさきを載せて。取り合わせの妙で鱧が美味しく感じます。
パスタはアカタケ、サクラシメジ、松茸などの天然茸をふんだんに使ったタリアテッレ。能登の食文化に欠かせない魚醤いしりが隠し味になっているそうです。確かに味に深みが出るのです。パスタ2皿目はラザーニャ。臭みが全くなくて美味しい猪肉と甘くて最高の取り合わせの栗がゴロゴロ。栗の粉のソースで、ベシャメルソースを使わないところもシェフのこだわりです。
ここでさっぱりとした野菜尽くしの登場です。30種類以上の新鮮な野菜をそれぞれの調理法で最も美味しく見た目も宝箱みたいに美しく!!野菜の味を引き立たせる、主張しすぎないドレッシングもいい味です。
この後、魚料理と肉料理へと続きます。甘鯛に緑茄子を添えたもの、肉は自然豚で、添えられた大きな万願寺唐辛子にはもちろん自家製のソーセージを詰めています。豚は放牧豚で、ぶどうの枝で燻しているそうで、深い味わいに魅了されました。
能登でしか味わえない能登の自然を丸ごと味わえた、記憶に残るランチでした。ちょうどよいペースで料理を運び、説明をしつつ、料理に合う最善のワインも選んでくれた塩士さん。店のムード作りにも欠かせない存在感を見せていました。 (2021年9月訪問)
お店のデータとまとめ
お店のデータ
店名 | ヴィラ・デラ・パーチェ VILLA DELLA PACE |
住所 | 石川県七尾市中島町塩津 乙は部26-1 |
電話 | 0767-88-9017 |
予約 | 完全予約制 |
席数 | 現在は2組限定 |
宿泊 | 1日1組4名まで宿泊可能 |
予算 | ランチ・ディナー共11皿ほどのコース 13200円(税込み、サ別) |
お店のwebサイト | http://villadellapace-nanao.com/ |
お店の地図
まとめ
能登半島の豊かな里山里海の食材を生かして、この地の自然を丸ごと味わえる素敵なイタリアンレストラン「ヴィラ・デラ・パーチェ」。ここの人気の理由がよくわかりました。能登半島の付け根の七尾市。辺鄙なロケーションのイメージですが、和倉温泉の駅からも近いので、ぜひ一度行ってみてください。優しいシェフご夫妻ととソムリエさんが生み出す感動の絶品イタリアンが待っています。