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皆さん東京のフレンチレストランと聞くとどんなイメージがあるでしょうか。銀座のようにキラキラとネオンが輝く場所にあるお店?六本木の小洒落たお店?一等地にあるお店ほど洗練され料理のレベルも高い…そんな風に思われるかもしれません。
しかし今回ご紹介する「ハセガワコウタロウ」というレストランは「フレンチ」のイメージとはちょっと外れたお店なのです。
商店街の中にある予約困難なフレンチ
「オシャレ」「高級」「敷居が高い」これが恐らくほとんどの人が持つフランス料理のイメージだと思います。しかし「ハセガワコウタロウ」があるのは銀座でも六本木でも無く、なんと新御徒町の「佐竹商店街」。新御徒町駅から近く、日本で2番目に古い商店街と言われているこの商店街には、お肉屋さんや弁当屋さんなど、地元に根差したお店が軒を連ねます。そんな中で突如として姿を現すのが、なんだか少しオシャレな空気を放っている当店。商店街にあるフレンチと言っても侮ることなかれ。なんとここ予約が非常に困難なことで知られる超人気店なのです。
シェフはフランスの3つ星レストランでの修業経験の他、帰国後には「ひらまつグループ」の「サンス・エ・サヴール」や「ラ・フェットひらまつ」で料理長を務めた方です。2007年には日本人で初めてボキューズ・ドール国際料理コンクールで入賞するなど輝かしい経歴をお持ちですが、2018年に自身の地元であるこの場所にお店を開いたのだそう。
「ハセガワコウタロウ」ってどんなお店?
「ハセガワコウタロウ」をひと言で言い表すなら「地元に愛されるフレンチ」という言葉が相応しいでしょう。予約の取れない人気店にもかかわらずシェフはこの新御徒町という土地に合った価格を貫いています。普通東京でフレンチのディナーを食べようと思ったら10,000円~なんてざらですが、ここでは5,000円からコースの用意があります。最初あまりに安すぎて見間違いかと思いましたが、他店がランチで取っているような金額で、ディナーをいただくことが出来るのです。
またシェフもマダムも非常に気のいい方で、腰が低いのが印象的でした。これだけの経歴があってこれだけの料理を作られる方とは思えないほど、シェフは謙虚で笑顔が絶えない方で、これはファンになって何度も訪れてしまう人の気持ちが分かります。まるで地方の小さなレストランに訪れたかのような温かいサービスが素晴らしかったです。
5,000円のディナーコースは?
今回私がいただいたのは、1番お手頃な5,000円のディナーコース。その上に8,000円、10,000円と計3つのコースがありますが、5,000円と言ってもデザートまで含めて計5品も出る充実ぶりです。
まず出てきたのはモンサンミッシェル産のムール貝を使った一品。チャウダー風に仕上げ、食感のアクセントにクルトンやキャベツの仲間のユニークな野菜コールラビを加えています。これがホッと一息つくような優しい味わいで、シンプルながら高級店と遜色ない満足感がありました。
次いで出てきたのは足赤エビとクスクスの料理。エビのソースで味付けられたクスクスの上には、エビの他にカリッと焼かれたリードヴォー(牛の胸腺肉)やアクセントにオレンジが載せられます。ソースはさっぱりとビネグレットで。一見バラバラに見える食材ですが口に入れてみると驚くほどまとまりがあり、互いの旨味を引き出しあっています。こういう巧みな食材の組み合わせを見ているとシェフの腕の良さがビシビシと伝わります。
またパンはわざわざフランスから取り寄せて厨房で焼き上げるこだわりがあり、ホイップバターをたっぷりとつけて食べるのが「ハセガワコウタロウ」流。このバターがまた絶品で、升に並々と入っていたのにパンを2回もおかわりして両方とも完食。これは美味しい。
最初から最後までハイクオリティ!
前菜の後は魚料理、肉料理、デザートと続きます。
この日の魚料理はイシダイ。炭火で香ばしく炙ったイシダイは細切りにした人参やポロネギなどと合わせて、白ワインと柚子のソースでいただきます。付け合わせの万願寺唐辛子やブロッコリーとの相性は勿論のこと、香りのアクセントでクミンが使われていて面白かったです。
肉料理は千葉県産の麦豚のロースト。柔らかく甘みのあるお肉としつこさの無い脂身が特徴で、タスマニア産の粒マスタードや黒キャベツのソテー、紫大根、カラメル状に炒めた玉ねぎといただきます。やはりこちらの一品も伝統的なフランス料理とは異なり、こってりと濃厚な印象は無く、食べやすく仕上がっていました。
デザートはチョコのテリーヌと梨、刀根早生柿(とねわせかき)のソルベ。濃厚なテリーヌは梨の爽やかで軽い甘みや、柿の優しい甘みと相性抜群。全てシェフ1人で作られているようですが、どれもハイクオリティで驚かされました。
データ
店名 | KOTARO Hasegawa DOWNTOWN CUISINE |
ジャンル | フレンチ |
住所 | 東京都台東区台東4-2-11 |
電話番号 | 03-5826-8663 |
席数 | 16席 |
個室 | 無し |
予算 | ディナー¥5,000~ |
予約 | 予約可(人気店の為予約必須) |
お店HP | 無し |
まとめ
店内にはシェフがボキューズ・ドールを受賞した際の写真が飾られているのですが、同じ写真に映っている日本人があともう2人いました。それが大阪の3つ星レストラン「HAJIME」のシェフである米田肇氏と、パリで3つ星を獲得した「Restaurant Kei」のシェフである小林圭シェフ。長谷川シェフは「凄い人たちと一緒に映ってしまって…」と謙遜されていましたが、私は彼らにも負けないくらいの料理を、この小さな商店街の小さなフレンチレストランで味わえたように思います。
たしかに彼らが作るようなエンターテインメント性溢れる華やかな料理ではないかもしれません。しかし値段以上のとてつもない味と温かいサービスがそこにはありました。(2021年11月訪問)