目次
木曽の御嶽山の麓、近くには馬の牧場やブルーベリー畑のある風光明媚な地に、一軒家の割烹料理店がありました。店主が一人で、1日1組か2組のゲストを自分の家の1階でふるまうというプライベート感覚あふれるお店です。しかも店主は自分もお食べるために自ら野菜を育て魚を釣り山菜やきのこを採る、まさしく「地産地消」ならぬ「自産自消」の暮らしをしているのだと言います。
そんな仙人のような料理人のいるお宅に招かれる気分で、10月末のとあるランチタイムにお邪魔しました。
仙人が住んでいそうな静かなお店で出された料理とは?
10月下旬の日曜日、ランチで11時半の予約で伺うと、我々だけの貸し切りでした。1人4000円のお任せコースです。
足の便が悪い場所にあるので、車で来るリピーターのお客さんが多いようです。ランチからお酒を飲む客がいないせいか、まったくお酒をすすめられず、黙っていると当たり前のようにほうじ茶が出ました。我々はタクシーで来たけれど、今日のランチはお酒抜きで行こうと決定。なんとへルーシーな!
無口な大将は特に話しかけることもなく、順番にお皿を運んでくれます。シーンと静まり返った空間。静けさはやはり仙人の家です。背筋を伸ばして料理を待ちます。特にメニューやお品書きがあるわけでもなく、何が出るかは出てのお楽しみです。
まず最初に出たのが野菜とキノコのお浸し。パッと見、大皿に盛り付けられ普通の量の倍以上はありそう。ボリュームありすぎない?と思いつつ、食べてみると、シャキッとしたほうれん草、菊の花、しめじ、舞茸、えのきは新鮮でとてもさっぱりして味付けも理想的です。美味しいのでどんどんお箸が進み完食。
どれもがここでしか味わえない心温まるヘルシー料理
次のお椀がまた絶品でした。生のきくらげ入りの真丈が入ったお吸い物で、柔らかくまろやかな真丈にコリッとした生のきくらげが見事な食感。ミルキーなほど味わいのある一品です。
岩魚の塩焼きが出ました。焼き立て熱々で、カリカリと頭から丸ごとかぶりつきます。香ばしく塩気もしっかりしているけれどシッポまで美味しく頂きました。木曽の田舎ならではの獲れたての魚の美味しさを丸ごと味わう贅沢は都会ではできないことです。
お食事はちらし寿司です。岩魚の刺身とイクラに似た岩魚の黄色い卵をたっぷり載せてあります。岩魚のイクラはさっぱりしてプチプチ感がしっかりして美味しく、ご飯にはレンコンと人参、大葉だけのシンプルな具材ですが、後引く美味しさ。おひつにたっぷり4人前サービスで入れてくれたのを3人で完食したのです。
田舎の親戚のお家でご馳走してもらったという印象の心温まるお食事でした。お酒なし、デザートなし、とりわけ愛想なし(笑)のお店ですが、こういうお食事をしていたら心身ともに健康でいられるだろうなと思わせてくれる料理ばかりでした。ここでしか味わえないそうした特別の料理を頂いた体験は貴重なものでした。 (2021年10月訪問)
レストラン名(ジャンル) | わらび野 (日本料理) |
住所 | 長野県木曽郡木曽町開田高原末川3899-6 |
TEL | 0264-42-3211 |
予算 | ランチ おまかせ3000円~ ディナー おまかせ 5000円~ |
座席/個室有無 | 1日1組か2組限定 |
予約の可否 | 完全予約制 |
公式サイト | http://www.kis.janis.or.jp/~warabino712/ |
まとめ
大将の生真面目で誠実そうなお人柄はまるで仙人のように思えました。愛想を振りまくような人はこのお店には似合いません。寡黙でまじめに料理に向き合っている姿勢こそ、生み出された料理に似合います。
自分で育てられた大切な野菜、自分で釣って来た生きのいい魚。そうした都会では食べることのできない贅沢な食材を最高に美味しい形で出してくださる大将。だからこそまるで親戚のおうちでもてなしてもらうような特別感を味わえる、そんな素敵なお店なのです。