東北きってのそばどころ山形には「そば街道」と呼ばれるそばの聖地があります。その発祥の地である村山には全国からそば通がやって来るほど。
大正9年(1920年)創業、100年もの伝統を今に繋ぐ人気の老舗そば屋がここ村山の「あらきそば」です。江戸末期の茅葺き屋根の田舎家をお店として改装し使われています。30畳ほどの店内には囲炉裏もあり、畳敷きなので靴を脱いで上がります。
現在4代目の職人さんが初代と変わらぬそばを打っているそうです。メニューはいたってシンプルで、「板そば」と呼ばれ、50cmはあろうかという長い長方形の木の箱に薄く盛られたそば。結構太めのそば400グラムは通常の盛り「うす毛利」1200円です。薄く盛られている分、箱の底が透けて見えるので、一見すると食べられそうに見えました。
地元産「でわかおり」というそば粉を使用し、コシがあって太く、とてもいい風味が感じられます。木箱に盛ることで水分が適度に吸収されてより美味しくなるとか。
私は基本素うどんや素蕎麦が苦手で、天ぷらやきつね、ニシンなどの具が入っていないと、途中で飽きてしまいます。ここでもそばだけだと飽きそうなので、サイドメニューを探しました。メニューを見ると天ぷらやきつねなどは一切なく、唯一あるのは「にしんのみそ煮」のみ。それで私は「うす毛利 にしんのみそ煮付 1630円」を注文したのです。
最初に出てきたのが別皿に入った「にしんのみそ煮」です。最初見たときはギョッとしました。全身泥まみれみたいに真っ黒の、見栄えの悪いにしんです。でも食べてみると甘い自家製の味噌に包まれたにしんはかなり美味しく、その後出てきたそばによく合います。ネギと七味と一緒に浸け汁に入れて食べるのが、この太くコシのあるそばとのベストコンビネーションだとわかりました。
人気店なので込むことを予想して早めのランチで11時に入ったもので、まだそれほど空腹でなかったためか、そばは半分のところでギブアップ。最初から「半毛利650円」にすればよかったと後悔。
でも蕎麦湯を足して熱々の出汁を飲むと、ニシンの甘みも合わさって、お腹に染み渡る幸福感なのでした。
フランスで世界の1000の美食店を選ぶ「ラ・リスト」で2015年日本の127店中、東北で唯一選ばれたのがこの「あらきそば」だったのです。伝統あるそばの味はもとより、そばの打ち方や食べ方、その建物なども総合して評価されたのでしょう。この頑固ともいえるそばは日本の大切な伝統文化として、この先も継承されていくはずです。
(2020年10月訪問)
レストラン名 | あらきそば |
ジャンル | そば |
住所 | 山形県村山市大久保甲65 |
TEL | 0237-54-2248 |
予算 | 半毛利(半盛り) 650円~ |
座席 | 30席 |
個室 | なし |
予約の可否 | 予約可 |