飛騨高山の田舎に160年前の豪農の館を改築した宿がありました。その名は「日本の宿 ひだ高山 倭乃里(わのさと)」。なんと15000坪もの敷地に原生林があり、小川が流れる中に茅葺屋根の家が建ち、まさに飛騨高山のムードも満点。母屋に足を踏み入れると、古民家らしく高い天井に木の梁、今も使われている囲炉裏があって、田舎家にお邪魔した気分です。
私たちが泊まったのは離れの「天領」のお部屋。部屋も古民家風で、太くてツヤツヤの木が部屋の真ん中に柱のようにドーンと置かれ(これはインテリアとして運び込まれたそうです)、テラスの真ん中にも大きな松の木が生えています。古民家風の宿にありがちな薄暗いムードとは全く異なり、ワイドなガラス張りの部屋は採光がよく明るいのがいいところ。原生林の大自然を居ながらにして見渡せ、面白いのは目の前に水車が回っていることです。
和洋室の部屋といってもベッドではなく布団が敷かれます。リビングには赤い毛せん(フエルト状カーペット)が敷かれ、床暖房が入っていてホカホカです。炬燵もあって和むし温かいのです。3月末とはいえ、ここ飛騨高山はまだまだ雪が降るそうで、真冬の暖房が必要なのです。
室内の装飾は白壁の下部に木を用いて飛騨地方独自のえんじ色の「春慶塗」が施されレトロなムードです。ライトはオレンジ色で夜は薄暗いのですが、テレビは大画面だし、コーヒーセットなどの設備もひと通り揃っていて快適です。部屋の内風呂もヒノキのお風呂でゆったり入れます。
大浴場は男女入れ替え制で、女風呂はヒノキのお風呂、男風呂はちょっとユニークな洞窟風呂のイメージの石風呂です。温泉だそうですが、元が冷泉なので加熱しているとか。部屋にも大浴場にもフカフカで白い新しいタオルが置かれているのが印象的でした。まるで出来立ての新しいホテルのようで、やはりタオルが新しいのは気持ちいいものです。
ウェルカムスイーツの良し悪しでその宿の料理の美味しさが分かったりすることがあるのですが、ここもそうでした。チェックインの時出された林檎ジュレ入りのお餅が爽やかですごく美味しかったのです。ディナーは2階の個室でテーブル席。1階の囲炉裏端が見下ろせるユニークな部屋です。田舎風メニューのお料理はどれも美味しく、工夫がありました。仲居さんのサービスも明るくて感じがよかったです。
前菜に出た雛寿司に驚きました。今日は3月29日。もうひな祭りは終わっているはずなのに・・・・。仲居さんいわく、ここ飛騨ではおひな祭りは旧暦の4月に行われるとのこと。確かに桃の節句と言われるひな祭り。桃が開花する旧暦にするのがいいかも。
薄焼き卵でウズラ卵や海老を巻いたお雛様、穴子ご飯を巻いたお内裏様、お団子なども出されました。メインの飛騨牛A5ランクのを自分で焼きながら食べるのも最高。ニンニク塩が合いました。
食後は囲炉裏端で「囲炉裏おじいさん」こと語り部の中嶋 紀夫さん(82歳)に竹の筒に入ったかっぽ酒を振舞われながら、飛騨に関する話や民話などを聞かせてもらいました。気さくで駄洒落が得意な中嶋さんはこの宿の名物的存在です。引退後は年を取ってからもいろんな人と出会って話ができるのが生き甲斐だそうです。
田舎のおじいちゃんにのんびり昔話を聞いているみたいで、なんだかホッと癒され、囲炉裏の火を眺めながら飛騨の夜は更けていくのでした。 (2021年3月訪問)
旅館名 | 日本の宿 ひだ高山 倭乃里(わのさと) |
住所 | 岐阜県高山市一之宮町1682 |
TEL | 0577-53-2321 |
お風呂 | 大浴場 |
予算 | 2名1室利用の場合1名28000円~(2食付き) |
露天風呂付客室 | なし 温泉の内風呂 |