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    山人(やまど)(湯川温泉/岩手県)~消滅可能性町村の温泉が生き残る方法とは?

    山人
    3人で泊まった為ベッド3つですが、本来は2人で広々

    3人で泊まった為ベッド3つですが、本来は2人で広々

    部屋風呂。景色を眺めながら純度100%の温泉を堪能

    部屋風呂。景色を眺めながら純度100%の温泉を堪能

    春には花が咲き乱れ、冬には毎年10mを超える雪が降る。夏にはホタルが辺りを明るく灯し、秋には山のキノコが旬を迎える。
    都会で暮らしているとまず見られない原風景。そんな四季の移ろいを五感で楽しむことが出来る場所の一つとして、湯川温泉はぴったりの地でしょう。岩手県の山奥、観光ルートから外れた僻地に位置するこの温泉。三方を山に囲まれ、清流のせせらぎを感じられる絶好のポイントに「山人(やまど)」という高級温泉宿があります。
    そもそも「山人」のある西和賀町は消滅可能性町村とされ、将来的に人口の大幅な減少により消えてしまう可能性のある場所。冬には2m以上の雪が積もる豪雪地帯で、見どころと呼べる場所もありません。しかしそれほど厳しい環境にありながら、「山人」は常に旅行客の姿で賑わっています。それは日本人だけにとどまらず、評判を聞きつけた外国人がわざわざこの地に訪れるほどです。そのためか、この宿のスタッフは非常に国際色豊か。中国人は勿論のこと、雪に馴染みのないはずのバングラデシュ人、そして最近入ったばかりのアルメニア人女性などあらゆる言語に対応した人材が揃っているのです。これも温泉のある西和賀町の魅力を世界に発信し、より多くの外国人に来てもらいたいというオーナーの想いが込められているのです。私はバングラデシュもアルメニアも行ったことがあるので、彼らと故郷の国の話で大いに盛り上がり楽しかったです。

    山菜をふんだんに使った八寸

    山菜をふんだんに使った八寸

    「山人」の魅力は言うまでも無く豊かな自然でしょう。広い敷地の中には木々だけでなく小川も流れ、雰囲気も抜群です。またこれだけ大きな敷地を持ちながら客室はたったの12室というのも素晴らしく、のんびりと目の前の自然を味わうことが出来ます。
    お部屋は6タイプありますが、今回私が泊まったのは「桂」と呼ばれるお部屋。1番大きなお部屋(52.01㎡)の1つで、最も貸切露天風呂から近いお部屋になります。自然光が優しく差し込む窓からは、山の麓を流れる小鬼ヶ瀬川を堪能できるのが魅力です。天井も高く広々としたお部屋にはキングサイズのベッドが2つ。部屋風呂も24時間源泉かけ流しというなんとも贅沢な空間です。勿論このお風呂からも目の前の山と川を眺めることが出来るので、気のゆくまで絶景を味わえました。
    一方貸切露天風呂のほうはというと、こちらは開放感抜群!脱衣所と浴場を仕切る壁も無く、目と鼻の先には清流が流れます。鳥の声と川のせせらぎに耳を傾けながら入るお風呂は至高の一言。今回は春に訪れたので雪はほとんど残っていませんでしたが、冬になって雪化粧をした山を眺めながら入るお風呂もきっと素晴らしいことでしょう。

    野菜が新鮮だからこそ美味いバーニャカウダ

    野菜が新鮮だからこそ美味いバーニャカウダ

    また「山人」を語る上で「食事」も欠かすことは出来ません。世界中から美味しいものを取り寄せるのは難しいことではないけれど、敢えて「いまこの瞬間にこの場所でしか食べられないもの」を何より大事にしている「山人」。地元の食材を知り尽くした料理長がつくり出すのは、身近な食材ながら意外性に溢れた料理。こうした温泉宿としては珍しく、1品目からバーニャカウダが出てくるのも驚きです。しかしそれにも理由があって、生の野菜をそのまま食べてみてほしいという願いからこういう形になったのだとか。実際採れたての野菜はどれもシャキシャキしていて鮮度抜群。ソースの美味しさも相まって食べる手が止まらなくなってしまいます。2品目は春の山菜と野草の盛り合わせ。いろんな珍しい山菜が味わえ、スタッフも皆知識があって説明できるのも素晴らしいところ。その他にも野菜のテリーヌ、南部かしわスモークハム、岩魚のソテー、白金豚のロースト、ソバの実と山菜のリゾットなどなど、地元の食材をベースにした料理が続き、かつ非常にボリューミー。これに加え夜食までもらえるので、残すのが忍びない人はあらかじめ量を少なめにしてもらうと良いかもしれません。
    「山人(やまど)」とはこの地域の言葉で、山仕事の達人や山を熟知している人のことを指します。「山人(やまど)」のように自然の美しさや恵み、そして時にはその厳しさなどを知ってもらいたいという願いからこの名前をつけたのだとか。
    また、写真や動画だけでは伝わらないリアルな自然の様子を届けたいという思いから、「北風放送」と呼ばれるラジオ企画までやっているというから驚かされます。レストランにいたバングラデシュ人男性もパーソナリティを務めているそうで、かなり本格的な内容になっています。ここ「山人」で働いているのは外国人スタッフも含め、本当にこの地を愛し、それを多くの人に知ってもらいたいと望んでいる人ばかりなのでしょう。だからこそどのスタッフさんも笑顔が絶えず、仲が良さそうなのだと感じました。環境、お部屋、サービス、食事…どれをとっても満足度の高い「山人」は、時間をかけてでも行く価値のある宿なのです。(2021年4月訪問)

    旅館名山人-yamado-
    住所岩手県和賀郡西和賀町湯川52地割71−10
    TEL0197-82-2222
    お風呂貸切露天風呂あり
    予算2名1室利用の場合、1人あたり1泊¥31,900~(2食付き)
    露天風呂付客室無し

     

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