加賀温泉駅から送迎バスで20分ほど。山代温泉の薬師山という眺めのいい高台にある老舗の温泉旅館が「べにや無何有」です。20年ほど前に一度訪れたことがあり、今回は2度目の訪問です。前回は真冬で、今は亡き母も一緒に蟹を目的に泊まりに来た思い出の宿です。入口にも雪がたくさん積もっていて、母と私に手を繋がれて、ツルツル滑りそうになって歩いていた小さかった娘も今は24歳。今回は桜の季節に一緒にやって来ました。
小ぢんまりした宿は、前回来たときよりロビーなどもきれいになっていました。3000坪もある敷地に全室露天風呂付きのお部屋が16室だけ。
今回はかなり広くてゆとりのスペースがある和洋室「唐紅花KARAKURENAI」という素敵な名前のお部屋に泊まりました。竹敷広縁付の和室とベッドルーム、それに温泉露天風呂付きで、お部屋の広さは85㎡。ウォークインクローゼットも備えています。竹の床が素足に心地よいリラックススペース(竹敷広縁)では、ガラス張りの大きな窓から眼下に満開の桜と、遥か彼方に加賀観音像が見えます。遠いけれど手を合わせたくなる美しさです。
部屋に付いている露天風呂は檜でできた結構ゆったり大きなお風呂。湯はかけ流しで、ちょうどいい温度で常に湧いていて好きな時にいつでも入れます。眺めを楽しみながら入るお風呂タイムは格別なのです。
大浴場は比較的小さめで、部屋の露天風呂の2倍くらいの大きさなので、2-3人一緒に入ればもはや3密。特に込んでいる時の洗い場は、隣の人と近すぎて銭湯みたいで、シャワーが隣の人にかかりそうで湯船にも入りそうな距離。仕切りもないし、さすがにこれは高級感に欠けると思いました。唯一の残念な点でした。
夕食は食事処ですが、個室ではなくテーブル席です。ほぼ満席で、このコロナ禍にしてはかなり賑わっていました。メニュー構成も味も良く、サービスも丁寧で申し分ありません。とりわけ気に入ったのは、先付の春の白和えという1皿。ごまペーストの上に海老や空豆、新筍、どんこ椎茸、数の子、茗荷、蕗などが美しく立つように盛り付けられています。毛蟹のジュレ、アワビの煮物、お椀、造りの後、焼き物で出たのどぐろの香ばしさも格別。驚くほど大きなハマグリと春の野菜の鍋物もユニークで、季節感あふれるものでした。
翌朝、朝食の炊き立てご飯も絶品で、すべてのメニューがかなりレベルが高いものでした。
「べにや」は老舗旅館で、代ごとに名前が変わってきたそうです。初代は「安楽荘」、2代目は「永楽」、そして現在3代目が「無何有」。オーナーは中道幸子氏です。古い建物をリニューアルして、今の時代に合わせたスタイリッシュでモダンな要素を取り入れて、シンプルでも上質を極め、贅を尽くした極上の宿となっています。
老舗だけあってアメニティもかなり研究されています。スパがあるのでより一層こだわりがあるようで、部屋に置いてあった「薬師山アメニティ」は成分を見ても試しに使ってみても、とってもいい香りがして上質なものでした。気に入ったので「薬師山ローション」を一つ購入して帰りましたが、いまだに我が家では朝夕欠かさずローションを娘共々愛用しています。何ともいえずいい香り!薬師山の文字を見るたびに、この宿のことを思い出しています。 (2021年3月訪問)
旅館名 | べにや無何有 |
住所 | 石川県加賀市山代温泉55−1−3 |
TEL | 0761-77-1340 |
お風呂 | 大浴場 露天風呂 |
予算 | 2名1室利用の場合 1人 約46000円~(2食付き) |
露天風呂付客室 | 全室露天風呂付き |