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    acca(アッカ) (イタリアン/瀬戸内市/岡山県)~オリーブの町 牛窓に移住した人気シェフ

    acca アッカ
    牛窓国際交流ヴィラが併設している建物

    牛窓国際交流ヴィラが併設している建物

    17時開始のディナーはまだ明るくて絶景が一望のもと

    17時開始のディナーはまだ明るくて絶景が一望のもと

    「自分はこういう料理を本当に作っていきたかったのだろうか?」シェフをしていたら、きっとそんな風に悩むことがあるのではないかと私は推測します。実際、シェフも人間なのだから、自分が心底食べたいと思える料理をお客さんにも食べてほしいのではないでしょうか?
    ここacca(アッカ)のシェフ林冬青氏は、そういう思いから自分が本当に求める料理を作るために、当時予約の取れない人気店だった東京の店を閉じてまではるばる牛窓へ移住されたのです。東京にいてはそれは実現できなかったのです。
    「日本のエーゲ海」との呼び名が高い岡山県瀬戸内市牛窓。海を見下ろす木々の緑濃き山の上、絶景をほしいままにできる最高のロケーションにこの店はありました。広々とした店内は天井が高く開放感が抜群です。ガラス張りでお洒落なカフェのようなムードです。でもカフェと一線を画すのが存在感を見せる奥の暖炉です。イタリアの田舎ではよく薪焼の料理をするためにこうした暖炉が使われているそうですが、この暖炉こそがこのお店の特徴であり要(かなめ)的存在なのです。
    イタリア各地で長年の修業の後、東京で自らのお店をオープンし、予約が取れない人気店だったそのお店を7年前にクローズしてこの牛窓のお店を開いたのです。東京で活躍するシェフが地方に散って地方を盛り上げるのが面白いとは林氏の言葉。まさにそうしたシェフたちがローカルガストロノミーを担うのでしょう。でも、いろいろ話を聞いてみても皆さん自分の実家に戻って店を開いたというケースがほとんどです。

    目印のaccaの文字の前で記念撮影

    目印のaccaの文字の前で記念撮影

    ところが林シェフは自分でとことん調べて、縁もゆかりもなかった(はずの)この牛窓という土地を選んだのだそうです。今では東京にはもう戻りたくないようで、それだけ自然溢れるこの地が気に入っておられるのでしょう。2017年に岡山出身の奥様と結婚されたので、二人仲良くこのお店を切り盛りされているようです。
    そんなシェフが目指した料理とは、まさに郷土色にあふれる素朴なイタリアンなのです。東京で今流行りの、フレンチかと見間違うほどの華美な料理をイタリアンのシェフの多くが作ります。林シェフも同様だったのでしょう。しかし本当に食べたいものはそういう料理ではなかったのです。新鮮な食材を使って、まさに漁師の料理みたいなワイルドで直球のイタリアン。それがここで実現したわけです。
    無駄なものは削り取るシンプルさ。これは料理だけでなく、紙のメニューもお店のカードも作らないお店のコンセプトにも反映されています。ディナーメニューは可愛いイラスト付きで黒板に手書きされています。シェフやマダムのあっさりしすぎた対応・・という声もネットで見かけますが、私はシェフの温かみ溢れる笑顔も見たし、優しく有能なマダムとのおしゃべりも楽しかったです。単に過剰なサービスをしないことがここのコンセプトなのでしょう。それが誤解されやすいのかもしれません。

    本日のメニューは手書きの可愛いボード参照

    本日のメニューは手書きの可愛いボード参照

    ディナーにお邪魔したところ、ラッキーなことに他にゲストはおらず貸し切り。シェフも奥様も独占という贅沢な夕べだったのです。7皿で11500円のコースのみ。料理はどれもが南イタリアの港町なんかで食べるような、これぞイタリアン!と実感できるものばかり。店のムードも眺めも相まって、日本にいるのが不思議なくらいです。
    盛り付けにこだわるなどとは無縁の世界。写真を撮っても意味がないし、暖炉の窯で焼き上げた熱々の料理を冷めないうちにすぐ食べてほしいからなのでしょう。料理の撮影はここではNGなのです。(ちなみに暖炉も撮影不可)だから料理の写真は一つもありません。
    どこかでちょこっと盛り付けられたアミューズなんかとは対極にある1皿目のインサラータ(サラダ)。玉ねぎやスズキの刺身、ベイカをカリッとフリットしたのをソースと一緒にバーッとお皿に盛ってあるだけ。でも心まで温かくなる美味しさです。次のHANEのグリルは、スズキの仲間の魚であるハネの炭火の焼きたて。オリーブオイルのソースが敷いてあるただの焼き魚。でも素材も調理法も「普通じゃない焼き魚」。次の渡り蟹の料理は、牛窓で揚がった身が引き締まって味わいのある蟹に、トスカーナのパッパルデッレという自家製の平たい麺のマイルドなクリームソース和えを載せてあります。蟹は手掴みでワイルドに食します。手も口の周りもベトベトで楽しい!
    オコゼのヴァポーレ(蒸し料理)は頭もヒレも皮も付いたままのワイルドオコゼ。オリーブオイルのほかにエシャロットや魚醤などの隠し味が入ったソースに浸して食べる熱々のオコゼの身は絶品です。もちろんパンも浸して食べます。スパゲッティ・アマトリチャーナもさすがの美味しさですが、メインの但馬牛のローストには度肝を抜かれました。炭火で理想的な焼き加減のお肉は塩コショウのみ、変なソースも付け合わせも一切なし。シェフの「この肉を食べてみろ!!」という主張を感じる、本来の肉の美味しさだけが凝縮して迫ってくる、そんなお肉に仕上がっていたのです。はるばる来てよかった!
    今度お店を移転して、この牛窓でよりラグジュアリー感のあるお店を再度オープンされるという計画をマダムが話してくださいました。もちろんぜひまたお邪魔したいものです。  (2021年5月訪問)

    レストラン名acca(アッカ) 
    ジャンルイタリアン(イタリア料理)
    住所岡山県瀬戸内市牛窓町牛窓496
    TEL2022年11月15日現在閉業中
    予算ディナーのみ 11500円のコースのみ
    座席10席
    個室なし
    予約の可否完全予約制

     

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