和歌山のフレンチといえば、グルメ通なら知らない人はいないこのお店「オテル・ド・ヨシノ(hotel de yoshino) 」。なにしろこの店の料理は食べログ4.07(2021年6月現在)、ゴ・エ・ミヨ16.5の高得点!!東京にあるタテルヨシノのお店には何度か行っていたので、シェフが違えどヨシノさんの名前を冠したこのお店に注目していたのです。
和歌山市内から少し外れたコンベンションセンターのあるエリア。県の施設が入った「ビッグ愛」という高層ビルの12階にレストランは入っていました。35席もある広い店内はグランメゾン風でエレガントなムードいっぱい。インテリアが美しく、見渡す眺めも良くて、夕暮れ時は夕陽が差しこんで、最高にロマンチックなのです。静寂の中で始まる至極のディナータイムのはじまりにわくわくします。
アミューズを頂き、シャンパーニュを飲んで幸せな気分になって来たときでした。ひとりの高齢の男性客がドカドカ入って来てスタッフにあれこれ怒鳴り始めたのです。常連のような?めちゃくちゃエラそうな口ぶりの男は奥の方まで入り込み、しばらくスタッフに罵声を浴びせ、一旦いなくなったと思ったら、今度は女性を連れて来店。その時もまた大声でスタッフを怒りつけています。すでに食事をしている私たちがいることなど眼中にないようです。素敵なムードは木っ端みじんに吹き飛んだのでした。しばらく我慢しながら顔をしかめつつ食事していると、その男は女性との食事を始めやっとおとなしくなりました。でもその会話は品がないもので、かなり離れていても嫌でも聞こえます。最初はお店の関係者かとも思いましたが、そんな人が騒ぐはずもなく。このビルが県の施設のビルなので、県の関係者なのか?それにしても客層が悪すぎる気がします。レストランのマネージャーが静かにさせることもできないから、よほど偉い立場の人なのか??どちらにしろフツーの客のクレームではありません。たまたまなのかもしれませんが、お店がこういうビルに入っていることの宿命なのか、とかなりがっかりしたのです。聞いたところ、ここのシェフはオーナーシェフではなく、グループ会社であるリネン関係の会社の経営のようです。
はるばる東京からやって来たのだし、客が悪いのはお店のせいでもないだろうしと、気を取り直して食事を続けます。若いスタッフは皆さん一生懸命で感じが良いし、サービスも一流で、パリのステラマリスでシェフを務めたシェフの「王道追及」の正統派フレンチが続きます。今回ディナーの予約をしたのはムニュ・テロワールという名が付く6品7000円のコース。けっこうスピーディーに出たので1時間でデザートまで進みました。
ただ食事は全般的にちゃんと美味しいけれど驚くような料理はなく、どれもがそれほど印象に残らない普通のフレンチでした。シマアジのマリネはグレープフルーツなど付け合わせの柑橘の酸味しかしなくて、魚の旨味を感じない一皿なのは残念でした。フォアグラのプレッセはプルーンが挟んでありフランスでよく出るパターンですが、本場で食べるしっかり固まっているフォアグラでなく、なぜか食べ進むうちにフニャっと柔らかくなったのが好みではありませんでした。
メニューにその土地に根差したという意味合いのテロワールと謳い、地産地消をこの店のコンセプトにしているのにかかわらず、地元産の食材のアピールが少なく、メインのビーフに至ってはなぜかアイルランド産というのには首を捻りました。
ディナーコースは7000円のこのムニュ・テロワールからはじまり、10000円、16000円、20000円と続きます。一番安いムニュ・テロワールを選んだのがいけなかったのでしょうか?
せっかく和歌山という土地にあるのだから、このお店の地の利を生かして、もっと本格的なテロワールを追求してほしい。そして全国に発信していくローカルガストロノミーの旗手のひとりになっていってほしいと思いました。 (2021年5月訪問)
レストラン名オテル・ド・ヨシノ(hotel de yoshino)
ジャンル | フレンチ(フランス料理) |
住所 | 和歌山県和歌山市手平2丁目1−2 和歌山ビッグ愛12F |
TEL | 073-422-0001 |
予算 | ランチコース 3700円~ ディナーコース 7000円~ |
座席 | 35席 |
個室 | あり |
予約の可否 | 予約可 |