東京・青山で7年間ミシュラン3ツ星を取り続けて来られた日本料理の江崎新太郎シェフ。そのお店をクローズして心機一転、2018年ここ八ヶ岳の自然の中にお店を移転されました。長年にわたり構想を練って場所を探し続けて見つけたのがこの地だとか。白樺林に囲まれた建物は丸い屋根がチャーミングで内装はスタイリッシュなお店です。店内は広いオープンキッチンの横に大きなテーブルが1つだけ。シンプルなインテリアが素敵です。すべてを一人でやるから1組のゲストしか取らないお店なのです。
梅雨の日、降り続く雨の中ランチにお邪魔しました。本来ならもっと素晴らしい自然を眺められるはずのガラス張りの店内。しかしながら雨の中でも白樺の緑は美しく、十分癒される眺めの中ランチタイムの始まりです。
ランチもディナーもおまかせの1コースのみの設定です。ドリンクメニューは厳選されたシャンパーニュ、ワイン、日本酒が数種類ずつボトルで置かれています。1組のゲストだからもちろんグラスワインをいろいろ飲むというわけにはいきません。シャンパーニュのハーフボトルと地元の日本酒をボトルでチョイス。
まず最初のお皿は蝦夷アワビです。蒸して野菜の白いソースをかけたもの。アワビはとても柔らかく、円やかでクリーミーな白いソースは乳製品は使っていないというから驚きです。一皿目から「口福」の始まりです。
次はダルマイカと押し麦のリゾットです。ほんの少し茹でたイカはねっとり感もしっかりあって、ぷつぷつした押し麦との食感がいいコンビです。ここに普通ならアワビの肝ソースをかけるのが定番。ところがここでは有明海苔のソースがかけられています。見た目はパッとしないリゾットですが、すべてを軽く混ぜて口の中で混然一体となった時の美味しさたるや、さすが江崎シェフ!!と唸りたくなりました。
「礼文島の雲丹が入って来てたのでラッキーですね」とシェフ。造りのお皿には見事な雲丹と平目です。礼文島の雲丹は甘く本来の上質な雲丹の美味しさが凝縮され、一口食べてシャンパーニュを飲み、また一口食べてはシャンパーニュ。お酒も進みます。青森の天然平目もさすがに新鮮です。いろいろ並べなくてもこの2種で大満足。いいものを少しずつ、が私好み!
次に出たのはスペシャリテだという鮎のすり流しスープ仕立て。鮎の味覚と栄養のすべてを優しい味わいのクリームスープに変貌させるとは!超高級老人ホームで出すのもいいですね。すべての人に元気を与える1品です。
次のメインは根室で1本釣りされたきんきの煮付け。きんきの質の良さももちろんですが、ちょうどいい頃合いの甘辛い味付けが堪りません。1匹丸ごとをパクパク食べ始めると、お箸が止まりません。気が付けば頭と尻尾と骨だけに・・・。これほど美味しいきんきは初めてだと断言できます。
自家製で1年半ものの味噌を使った家庭的なみそ汁と甘鯛の炊き込みご飯へと続きます。どれもが本当に素晴らしく、やはりこれが3つ星シェフの実力かと納得しました。
今はたった1人ですべてやるのは大変ではないですか?私が聞くとシェフいわく、「大変でも1人は気楽でいいし、思うように何でもできるのが楽しい」とのことです。東京で超多忙な日々が長く続き、3ツ星を取り続ける中での重圧もあったのでしょう。「東京だとお客様ともこうしてお話しする時間もなかったですし、今はお話しできることも楽しいんです・・・」とおっしゃいます。今はよいゲストに恵まれて悠々とお仕事をされているのでしょう。
私たちが車で出発する時は、店の外まで出てきて、車が見えなくなるまで手を振って見送ってくださいました。お元気で、ずっとこの地で絶品料理を作り続けてほしいと心から願っています。 (2021年7月訪問)
レストラン名 | 日本料理 八ヶ岳えさき |
ジャンル | 日本料理 |
住所 | 山梨県北杜市大泉町谷戸5771-210 |
TEL | 0551-45-8707 |
予算 | お任せコースのみ 19800円(税込、サービス料別) |
座席 | 1組1テーブル |
個室 | 1組のみ |
予約の可否 | 完全予約制 |