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    職人館(そば,創作料理/佐久市春日/長野県)~地産地消・農家レストランのパイオニア

    職人館
    田んぼの中にある古民家を再利用したお店

    田んぼの中にある古民家を再利用したお店

    名物の蕎麦のリゾット風。ユニークで美味!

    名物の蕎麦のリゾット風。ユニークで美味!

    地産地消、農家レストラン、ローカルガストロノミー、ビーガン・・・今や全国各地でこれらを謳うお店が増えてきました。しかしここ「職人館」はそんな地方レストランの先駆けとも言える存在です。北沢正和氏は30年前役所を辞めたあと、一念発起してなんと1992年蕎麦屋をオープン。当時、新幹線も高速道路も無い八ヶ岳の山麓にある小さな村で、地元の料理が流行るわけがないと笑われたこともあったそうですが、今では連日満席になる人気店です。古民家を再利用したというお店は雰囲気も抜群で、まさに「職人」が居そうな佇まいです。
    美しい水が豊富に手に入る長野では昔からそばがよく栽培されていて、県の至る所で蕎麦屋を見つけることが出来ます。しかしそれだけ美味しい蕎麦屋が数多くある中で、わざわざこんな田んぼの中に足を運ぶ理由はどこにあるのでしょうか。
    「食と料理は健康に生きて暮らすためのもの」との思いから、食の安全にもこだわり、近隣の農家さんが作る無農薬野菜をふんだんに使用しているという北沢氏。蕎麦屋としては珍しくお膳に大きなサラダがついてくるのも特徴的です。自然のものはなるべく手を加えずそのまま食べるべきだと語る彼の料理は、名だたる料理人たちを魅了させるようなパワーを持っています。

    本日の創作蕎麦は無農薬野菜を使ったパスタ風蕎麦

    本日の創作蕎麦は無農薬野菜を使ったパスタ風蕎麦

    今回私たち家族が注文したのが、「そばと何か欲しい膳 2,800円」と、蕎麦のリゾット風、そして本日の創作蕎麦の3品です。この日の創作蕎麦はなんと無農薬野菜を使ったパスタ風蕎麦とのことで、わくわくしながら料理を待ちます。
    まず出てきたのが「そばと何か欲しい膳」についてくるお豆腐。これもこの村で作られる豆で出来た豆腐だそうで、大豆の甘みや旨味が凝縮された一品です。丸々1丁はありそうな豆腐にはじめはこんなに食べられないと思っていたのですが、これが何故か箸の止まらない美味しさ。余計な添加物は使わない、採れたままの大豆で作った豆腐だからこそ、こうした素朴な優しい風味がするのかもしれません。
    さて次いで出てきたのはセットメニューのサラダ。地産地消、無農薬にこだわるだけあってサラダは最高品質。どの野菜も新鮮でみずみずしく、普段東京で食べている野菜とは段違いです。これはサラダ嫌いの子供でもパクパク食べられる気がします。
    「わざわざそば切りにこだわる必要はない」と語る北沢氏の考案するメニューは、非常にバラエティー豊か。特にお店の人気メニューでもあるリゾットはユニークで、ソバの実や無農薬のお米・雑穀を使用します。クリーミーな味わいですがトマトの爽やかさがプラスされ、重たさを感じません。まさか蕎麦屋でこんなに本格的なリゾットが食べられるとは…知り合いのフレンチレストランのマダムがこちらのリゾットを推しておられたのですが、なるほどこれはオススメしたくなるお味です。しかもフレッシュな野菜がふんだんに使われているのも素晴らしく、これほど健康的なリゾットは他に無い気さえします。
    一方、本日の創作蕎麦はというと、こちらはビーツやコリアンダー、ヨーグルトを使ったエスニックな冷製パスタ。昔は世界中飛び回っていたという北沢氏らしく食材の組み合わせがユニークです。特にビーツとヨーグルトを合わせるスタイルはロシアの郷土料理ボルシチを思い出させます。麺は勿論そば粉を使ったものですが、パスタ風に打たれており歯ごたえあり。噛むと微かに蕎麦の香りも感じられ、面白い一品となっています。

    笑顔が素敵なご主人と一緒に記念撮影

    笑顔が素敵なご主人と一緒に記念撮影

    勿論蕎麦屋らしく、シンプルな蕎麦を楽しむことも出来ます。数種類の蕎麦から好きなものを選べるのですが、今回は店員さんオススメの挽きぐるみ蕎麦(黒い)というものを注文しました。普通の蕎麦と比べると明らかに蕎麦の風味が強烈で、自然な旨味を感じます。つけ汁の甘辛さとも相性が良く、ここは一流の蕎麦屋であったことを思い出しました。
    「良薬は口に苦し」と言いますが、果たして本当でしょうか。そう疑問を持ってしまうほど「職人館」で出される料理の数々は充実していて、また健康的なものばかりでした。事実、70歳を超えた北沢氏自身もこれまで特に大きな病気もしたことが無いそうで、一度肺炎になった時も僅か3日通院して点滴をしただけで治ってしまったのだとか。美味しいものを食べてそれが健康にも良いなんて願ったり叶ったりです。
    これだけ多くの人に愛されプロも認める蕎麦を提供している北沢氏ですが、ご本人はいたって謙虚で親しみやすい人柄。その飾らない優しさも人々を惹きつける理由の一つなのかもしれません。
    「上も見て行って。娘がお店してるから」と仰る北沢氏の言葉に甘えて、2階にもお邪魔させていただきました。そこには週末限定オープンの小さなカフェとブティック「クイラー(Cuilor)」が。フィレンツェに長い間暮らし、現地でスタイリストとして活躍されていた娘さんは、イタリアの高級ブランド「ロロピアーナ」のカシミアのセーターがお手頃価格で手に入る直販のブティックをされていました。「職人館」でリゾットやパスタが出たのも、もしかしたら娘さんの影響があったのかもと腑に落ちたのでした。(2021年7月訪問)

    レストラン名職人館(しょくにんかん)
    ジャンルそば、創作料理
    住所長野県佐久市春日3250-3
    TEL0267-52-2010
    予算¥3,000~
    座席34席
    個室無し
    予約の可否予約可

     

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