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京丹後の魚菜料理のお店として食通の間で大人気のお店がここ「縄屋」さんです。以前一度お邪魔してその魅力を知り、再訪の機会を願っていたのですが、なにしろ京都府北部の丹後半島のかなり辺鄙な場所にあるため、なかなか叶いませんでした。今回は運よく予約も取れて、1年ぶりにそのチャンスが巡ってきました。
18時半一斉スタートで、カウンターのみ最大8席のところ、その夜は平日とあってあと常連さんひとりのゲストだけでゆとりのディナータイムとなりました。大将と奥さんの生み出される縄屋の世界はどうだったのでしょうか?再訪のレポートをお届けします。
大将と奥さんの2人が生み出す独特の世界観とは?
1年前に来店してランチを食べて、驚きがいっぱいだったユニークなお店「縄屋」。今も変わらず大将の吉岡さんと奥さんが2人でお店を営んでおられました。以前と全く変わらず丁寧な仕事を続けておられるのが嬉しい気持ちでした。まるで職人さんが綿々と芸術品を作り続けるような、独特の世界観とでもいうのでしょうか。縄屋さんの店内にいると、そこでしか味わえない世界に身を置くこととなるのです。お二人が生み出す世界観に、ゲストは身が引き締まる思いで立ち向かいます。
ここで作られるのは「魚菜料理」。地産地消の魚や大将のお母様が育てておられる新鮮な野菜を使った、とても滋味深く優しくヘルシーな料理です。そして薪火を使って焼いて旨味を凝縮させた料理というのも特徴のひとつです。
メニューは一切ありません。お任せのみで12000円のディナーのコースが始まります。何が出るかは出てからのお楽しみです。
一斉スタートのディナーの始まりです
前回来たときはランチだからか他のゲストも多く満席でした。最初に奥さんの薪料理の説明があるのは今回も同じでしたが、大将も奥さんも決して社交的なタイプではないので、むしろ前回はシャイな方々という印象で全然話せないまま失礼したのが心残りだったのです。でも今回はゲストが少ないのでたくさん話せました。実はお二人とも話好きで全然シャイではなかったとが分かって、それも収穫?でした。
まず一皿目はコッペガニと野菜の薪焼き。主役は自家菜園の野菜たち。蕪やブロッコリー、人参に白ネギなどを薪焼に。本当に野菜のうま味が引き出されて、これほど美味しい野菜はない!!と心底感嘆するほどの美味しさです。それだけでも十分なのに、今年も今日で最後というコッペガニの身をほぐして混ぜていただくのです。タレは程よくかかっています。無限に食べられる幸せな一皿からのスタートでした。
薪火を使うことでどれだけ美味しくなるのだろうか
次はスズキの昆布締め。ツマとわさびと梅ソースを添えてあります。梅の入り酒は酒の成分を飛ばしてあり、これらを付けて頂けば、造りとは全く異なる次元の料理になったのです。
クエのお椀は身が締まっていて旨味があり、青梗菜の他、香ばしく揚げた生麩の香りが出汁にも溶けだして余分な塩分は一切使っていないというのにこの美味しさ。ヘルシーでもあります。
次のマグロは「こなれ寿司」だそう。固めのお粥の酢飯だけれど発酵してないので「こなれ」で、マグロの刺身の上にこなれが載っているわけです。
甘鯛は鱗焼きで。はっきり言って甘鯛の鱗焼きはしょっちゅう食べますが、ここの鱗焼きは全くレベルが違っている、今までで最高の鱗焼きでした。鱗が薪焼で香ばしく完成された、その部分だけ別の料理のように出来上がっているのも薪焼の成果です。焼浸しして、天然の椎茸や根っこ付きほうれん草をたっぷり添えて頂きます。汁の最後の1滴まで飲み干さずにいられません。
次の太刀魚は炙りにルッコラ酢、ソウメンカボチャを添えた一品。
海老芋は味を付けて炊き、米粉をまぶして揚げて網焼きで香ばしくして辛子を付けて食べます。手間暇かかった一品ですが、少し私には量が多すぎたので半分で良かったかも・・・
今回は猪肉も登場
魚菜料理だけあって魚はどんどんいろんな種類が登場します。次なる鯖は燻製にして野菜に載せて赤酢をかけたもの。さっぱりして食べやすい料理です。
肉は出ないかと思っていたら、今回は出ました。それも猪肉というのはさすが京丹後です。今が一番美味しいシーズンという猪肉は脂身も美味しいのです。丸大根、小松菜、九条ネギを入れて煮物にし、きんぴらゴボウをペーストにしたのをかけます。もちろんこれも汁まで飲み干しました。猪肉がこれほど美味しいとは!
最後は鯛のうずみ雑炊です。鯛の身を沈ませています。春菊を刻んで入れているのも美しい色彩です。さっぱりと完食できました。
デザートは楊枝にも使われる黒文字の枝を煮出した黒文字茶のアイスと焼き芋のアイスです。昔懐かしい気持ちになる素朴な味わいの、それでも洗練された甘味でした。
後で写真を見ると、どれもが茶色と緑の料理ばかりで、見た目は素朴です。でもすべてが研ぎ澄まされた調理法で生み出された、素晴らしい食材の組み合わせで成り立つ絶品料理の数々。ワーッと驚くのではないけれど、ジワーッと美味しさが染み出してため息が出て、そして次には至福ともいえる気分になっている、そんな料理なのです。
縄屋の特別の世界観を味わうために、また訪れなくては始まりません!!
(2021年12月訪問)
レストラン名(ジャンル) | 縄屋 日本料理(魚菜料理) |
住所 | 京都府京丹後市弥栄町黒部2517 |
TEL | 0772-65-2127 |
予算 | ランチ、ディナー共にお任せコース 12000円 |
座席/個室有無 | 8席 個室なし |
予約の可否 | 完全予約制 |
まとめ
再訪してますますこのお店の世界観のファンになりました。大将は日々地道な努力を続けられて来たからこそ、ますます進化した魚菜料理を生み出されているのでしょう。
都会から遠く離れているからこそ、行きにくい場所だからこそ、食通の人々はこの店に通い続けるはずです。私も次のチャンスが来る日を楽しみにしています。この世界観に浸るために・・・・・