世界屈指の温泉湧出量を誇る別府の中でも、とりわけ高温の温泉である鉄輪地区。あちこちに地獄谷があって、もくもくと湯煙が立ち上っている独特の風景が見られます。江戸時代から温泉の地熱を利用した「地獄釜」は料理に使われ、地獄蒸しで食材を蒸し上げる料理法が今に伝わってきたのです。
イタリアンの名店と言われる人気の「オット エ セッテ」はイタリア語で8と7を表します。そのいわれは大分県下が幕末まで8藩7領の小藩分立制度を取り、独自の文化を生んでいたことに由来します。海も山もありバラエティに富んだ風土が豊かな食材をもたらしてくれ、ユニークな料理法で素晴らしいイタリアンに仕上げている、まさに「ここでしか食べられない」とお店が自負する料理なのです。
古民家風のお洒落なインテリアと、行き届いたサービスの中で頂く料理は、驚くべきハイレベルなものでした。
まずは「プレリュード」から。おからとしめ鯖の団子、黒オリーブのタルトに茄子のラグーを載せたもの、ドラゴンフルーツとリコッタチーズの不思議なピンク色の団子、椎茸のクリームを詰めた最中。面白い4つのアミューズが載せられた木箱の引き出しを開けると、中からスモークされた鮎の姿焼きが煙と共に登場。桜チップで燻製にした後、10時間も地獄蒸しして、粉を付けてカリカリに揚げている鮎は、食べたことがないほど全部丸ごと香ばしいものに変身していました。
次に出されたミニスープは由布院の椎茸と鴨の手羽、トマト、温泉水を使った熱々コンソメ。火傷しそうに熱くて奥深い味わいにほっこり幸せ気分です。焼き立てで出された小さな丸いパン。大麦とほんのり甘い生姜の香りが口の中に広がる、昔懐かしいような格別の美味しさです。
前菜の「伊勢海老街道」は蒸してからカボスでマリネした伊勢海老に柚子胡椒と自家製カボチャのペーストが添えられています。その上のカボチャのサラダは薄くスライスしたカボチャを美しく盛り付けてあります。(一番上の写真の料理です)
とても気が利くサービスも印象的でした。その夜はあまり食欲がない・・・という私に、濃厚な牛タンとポルチーニのパスタの代わりに、小量のペペロンチーノを出してくれたのです。「これもシェフの得意なパスタですので味わってみてください」とのこと。確かにニンニクとオリーブだけのシンプルでピリ辛のパスタは嬉しい臨機応変な配慮でした。いろいろ料理の説明もしてくれた親切で知識も豊富な女性スタッフが言っていました。
「これからやっと涼しくなって、釜の熱気が温かく嬉しい季節になります。夏は大変でしたから」
「まさに地獄ですね!」と私。(笑)「その通り!!」と彼女。
この環境で働くのは夏は本当に過酷で大変だろうと想像できました。素晴らしい料理を生み出している人々の陰の苦労を知った気がしました。
(2020年9月訪問)
レストラン名 | オット エ セッテ 大分 OTTO E SETTE OITA |
ジャンル | イタリアン(イタリア料理) |
住所 | 大分県別府市井田2組 柳屋内 |
TEL | 0977-66-4411 |
予算 | ランチコース 3000円~ ディナーコース 5000円~(アラカルトも有り) |
座席 | 40席 |
個室 | あり |
予約の可否 | 予約可 ディナーは完全予約制 |