蔵王温泉の坂の上に建つ、1716年創業の老舗温泉宿「深山荘 高見屋」。全19室の旅館ながらお風呂の種類が9つもあるというのに驚きました。それも蔵王の名湯の白濁した源泉掛け流しで、檜の四角いお風呂や円形の樽状のお風呂、石風呂、信楽焼きの風呂、それぞれが個性的なお風呂です。ひとつひとつ湯めぐりを楽しんでも飽きることがありません。そして湯の花が浮いたお湯は特に美肌効果が高いのだそうです。
部屋もユニークで、私が泊まった離れはなんと蔵を改装した客室で、入り口は重厚な白い扉付きの本物の蔵です!情緒はありますが、改装してもそれは蔵。内部が薄暗い印象で、メゾネットの2ベッドルームで、2階の寝室は全く使わず無駄でした。4名ならちょうどいいようです。でもこの部屋には素晴らしい露天風呂が付いていたのが嬉しいところでした。
この宿の素晴らしさは料理でも発揮されています。料理長の井上勝氏はまさに創意工夫の人。前菜の「山と海の贈り物」は小さい宝石のように美しくオリジナリティ溢れる品々。熟し柿とクリームチーズをプチ積み木状に。生ハムに三度豆や人参を巻いたり、ローストビーフにウニを巻いたり、ボイルした海老にイクラを挟んだり。
鮑の香草蒸しは柔らかく、肝のクリーミーソースで頂くと美味。熱々の土瓶蒸しも鶏肉まで入っていて味わい豊かです。造りには冷やした生麩が入っていたのが新鮮な驚きでした。
でもここでもっとも注目すべきは名物の「すきしゃぶ鍋」。一度にすき焼きとしゃぶしゃぶを味わいたいとのゲストの要望に応えたオリジナルメニュー。米沢牛はとろける脂が旨いのでしゃぶしゃぶ用に鍋のドーナツ状部分で、しっかりした噛みごたえと旨みが深い蔵王牛はすき焼き用に真ん中の部分で調理します。そういえばありそうでなかった贅沢な料理。これは高見屋さん独自の画期的なやり方だったのです。
お部屋には「ごゆっくりお休みくださいませ」とか「おはようございます。楽しい思い出いっぱいの蔵王となりますように」など、旅館滞在中は女将自らのメッセージがメモに書かれて折り紙と一緒に置いてあります。
メッセージがとても心温まり和めたので、チェックアウトの時に挨拶に来てくれた16代目だという女将さんの岡崎純子さんにお礼を言いました。
ずっと疑問に思っていたことも質問してみました。乳白色のお湯に湯の花が浮いていたり浮いていなかったりするのは泉質が違うのか?という質問です。女将さんの答えは温泉のお湯は空気に触れた瞬間から湯の花が生まれ始めるのだそうです。その時々でその分量が異なるので、湯の花が多かったり少なかったりするのだとか。泉質の違いではないそうでした。でもこの温泉には全部で3種類のお湯があるのだそうです。
さすがは女将さん。的確な答えに、またひとつ勉強になりました。
女将さんは私たちが長い階段を下りるまで見送ってくれ、最後に大きな声で「さようならー」と手を振ってくださったのが印象的でした。 (2020年10月訪問)
旅館名 | 深山荘 高見屋 |
住所 | 山形県山形市蔵王温泉54 |
TEL | 023-694-9333 |
お風呂 | 大浴場 露天風呂 |
予算 | 2人部屋利用の場合1人19800円~(2食付) |
露天風呂付客室 | あり |