北海道の南西端、函館から渡島半島を横断して1時間ほど車で走り、日本海に突っ切ったところに江差はあります。漁村のある港町の冬の日は寒々しく、初めて訪れた江差は、最果てにやって来たという感じです。そんな海辺に突如として現れたのが、スタイリッシュな高級旅館「江差旅庭 群来(くき)」。
宿のプロフィールにこう書かれていました。「群来には女将も仲居もいません。おもてなしするのは7部屋のお客様のための執事です」。
平屋づくりで各部屋にテラスと温泉風呂を備えた7室が、海に面して並んでいます。実際、出迎えからお食事、出発までのあれやこれやのお世話をしてくれる男性の「執事」さんと女将さんのような存在の女性版「執事」さんがいて、本当にきめ細やかなサービスは温かくて、極寒の地でも身も心もポカポカになったのです。
私たちが泊まった日は、なんと他にゲストはおらず全館貸し切りでした。もちろん男女の執事さんも独占!シェフも独占という贅沢を味わいました。館内ではお好きなように過ごしてください、と言われて俄然嬉しくなりました。
大浴場はないものの、お部屋にある源泉かけ流しの湯はとてもいい天然温泉で、身体の芯まで温まります。この辺は温泉が出るところが多く、旅館を建てる際にうまく温泉を掘り当てたのだそうです。しかも身体にいいのはもちろん、美肌も保てる魔法の湯と呼ばれているそうです。
店主 棚田清氏によると、「素朴でありながら温かいサービス」をモットーに一人何役もこなす少数精鋭のスタッフは皆地元出身だそうです。なるほど都会では味わえない真心を感じました。
江差らしい食を提供すべく、棚田氏が「地産地食」と呼ぶ「半径25㎞以内の食材しか使わない」をスローガンとしたお食事。江差の地の利を生かした海の幸と共に、直営農場「拓美ファーム」での有機野菜や地鶏、卵、羊肉などすべてが自然のもので、食の安心を目指しているそうです。
お食事処の個室では、男女の執事さんのおもてなしを受け、たくさんの江差の滋味あふれる料理の数々を頂きました。メニューに書いていない特別のお皿を合間に3品も出してくださり、貸し切りの私たちへの大サービスにますます拍車がかかったようです。
飲み物がオールインクルーシブなのもいいところでした。しかもめったに味わえない離島の奥尻産ワインもあったのです。そういえばお部屋のミニバー(すべてフリードリンク)には奥尻の水も入っていました。水がいいのはさすがに北海道です。
チェックアウトの時も、プレゼントのお塩ですと上質の藻塩をくださったり、道中にどうぞと飴玉をしのばせてくれたり、いろんなおしゃべりも楽しんだ女性の執事さんの優しさは忘れることができません。リピーターが多いという帰りのタクシーの運転手さんの言葉に深く納得したのでした。
(2020年12月訪問)
旅館名 | 江差旅庭 群来(くき) |
住所 | 北海道檜山郡江差町字姥神町1番地の5 |
TEL | 0139-52-2020 |
お風呂 | 大浴場はなし |
予算 | 2名1室の場合 1名37500円~(2食付き、飲み物代別の場合) |
露天風呂付客室 | 全室ガラス張りの温泉風呂付き |