美味しい食事のためならどんなに辺鄙な場所にだって行く。きっとそういう行動が出来る人こそ真のグルマンと呼べるのでしょう。中には旅行の目的は「食」で、それ以外の観光には興味が無いという人もいるかもしれません。しかし観光を楽しみつつ、美味しいものも食べたいというのが大多数の考え方。そんな方にご紹介したいのが、鎌倉にある「リストランテ・イル・ノード」というイタリアンレストランです。
鶴岡八幡宮へと続く小町通りは、多くの土産物屋や食べ歩きグルメのお店が軒を連ねる人気スポット。常に多くの人で賑わいを見せるこの場所ですが、実は1本横の道に入るだけで観光客の数はまばらになります。「リストランテ・イル・ノード」があるのもそんな小町通りを曲がった人気の少ない建物の2階。鎌倉駅から徒歩5分ほどという好立地でありながら、まるで隠れ家のように緑に覆われ、先ほどまでの喧騒が嘘のようにゆったりとした空間が広がっています。
こちらのお店でいただくのは、地元鎌倉の無農薬野菜や神奈川の食材をテーマにした創作イタリアン。シェフ自ら農家や漁港に赴いて、野菜を摘み漁に出ることもあるのだとか。オーナーシェフの松井昭憲氏は元々青山の老舗イタリアン「サバティーニ」で修業をされていたそうで、その時に出会った鎌倉の生産者さんとのつながりを今も大事にしているのだと言います。それはコースメニューを見ていても歴然で、メニューには生産者さんの名前や品種の名前が丁寧に綴られています。また店名である「イル・ノード」はイタリア語で「絆」や「縁」を意味する言葉。生産者さんとの縁、そしてお客さん一人一人との縁を大事にするのが彼のポリシーなのです。だからこそオーガニックで新鮮な食材が手に入るのです。
今回私がいただいたのは全8品4,800円のランチコース。お店はシェフとマダムらしき女性の2人で回していますが、カウンターキッチン越しに見える調理姿も淀みなく、提供スピードも理想的でした。そして私が特に素晴らしいと感じたのが帆立を使った一品。ローストした帆立と合わせるのは、小田原で採れる湘南ポモロンというトマト。赤と緑2色のトマトと、万願寺唐辛子のエキスをしみ込ませたクスクスをサワークリームでまとめ、アクセントにウイキョウのオイルを垂らします。初めて食べる味でしたが夏らしい重くない料理で、またイタリアンにクスクスを使うという発想もユニークでした。
個人的に鎌倉グルメと言われて真っ先に思い浮かぶのがシラスなのですが、この日は焼きナスとシラスを使った絶品前菜も味わうことが出来ました。一見和食のような組み合わせですが、焼きナスの上に載るのは1ヶ月発酵させたという香ばしいシラス。そして一緒にあわせたクリームソースにも釜揚げしらすが使用されていて、リコッタチーズとカレーリーフとの相性が抜群です。
メニューをよく見てみると、万願寺唐辛子やナスなど何度か同じ食材が登場します。ですが一つとして同じ味付けはなく、食べていて気付かせない工夫が素晴らしいと思いました。きっと食材と真摯に向き合っているシェフだからこそ、それぞれの素材の特徴を捉え、美味しい料理を生み出すことが出来るのだと思います。これだけの料理を8品もいただいて4,800円は良心的。オーガニック野菜が主役で肉や魚が脇役ですが、十分満足できました!野菜本来の「酸味」「渋み」「塩味」「甘み」を最大限楽しむことができるオススメのお店です。(2021年7月訪問)
レストラン名RISTORANTE IL NODO (イル ノード)
ジャンル | イタリアン/イタリア料理 |
住所 | 神奈川県鎌倉市小町2-6-12 くすの木443 2F3号 |
TEL | 050-5597-1346 |
予算 | ランチ¥4,800~ ディナー¥10,000~ |
座席 | 10席 |
個室 | 無し |
予約の可否 | 完全予約制 |