首都圏からのアクセスが良い温泉はいくつかありますが、その中でもオススメしたいのが長野県は別所温泉。信州最古と伝わる温泉地で、そこから湧き出る弱アルカリ性のお湯は美肌効果もあります。歴史ある温泉街だけに老舗旅館もいくつか見られますが、私が今回選んだのは創業百余年の「かしわや本店」です。
天長2年(825年)開創の北向観音の隣りに建つこの宿は、書院造のどこかレトロな雰囲気。玄関をくぐると従業員の方々が今どき珍しい三つ指でお出迎えしてくれて、伝統ある老舗旅館らしいおもてなしを受けられます。事実「かしわや本店」は多くの文人墨客に愛された歴史があり、女形の名優・花柳章太郎翁や小説家・川口松太郎は足繫くこの旅館を訪れたのだとか。
「ゆっくり、ゆったりをおもてなし」と謳っているだけあって、「かしわや本店」での滞在はとても静か。全15室と決して少なくない客室ですが、団体や小学生以下の子供の滞在を不可としているので、こうした穏やかな時間を過ごすことが出来るのです。大人のための宿といっても過言ではないこの宿。お部屋も華やかさはないものの、洗練されていて落ち着いた雰囲気が漂います。
私が泊まったのは離れにある106号室「早月の間」。天然温泉露天風呂付きの客室です。襖で仕切られた10畳+7.5畳のお部屋は最大4人で泊まれる広々とした空間。女子旅など小グループの旅行にもぴったりです。木漏れ日が差す檜(ヒノキ)の露天風呂は雰囲気も抜群で、1人で浸かるには十分な広さです。
またチェックインの後それぞれ好きな浴衣を選ぶことが出来るのですが、その種類も豊富。特に女性は何十種類もある中から好きな柄の浴衣や帯を選ぶことが出来るので、それも楽しみの一つです。
好きな浴衣に着替えたら、是非「かしわや本店」自慢のお風呂に入りに行きましょう。合わせて6つのお風呂があるのですが、それぞれ趣が異なります。本館にあり当旅館で最も大きな「岩の湯」は昔ながらの雰囲気を残すお風呂。内風呂がごつごつとした岩で囲まれたお風呂になっていて、檜で作られた露天風呂が旅の疲れを癒します。一方、離れにある「悠々自適の湯」は壁も屋根もお風呂もすべて檜で出来た空間。優しい檜の香りに満ちていて、朝には温かい陽射しが、夜にはほのかにライトアップされて雰囲気も抜群です。また広めの貸切風呂の用意もあるので、ゆっくりとくつろぎたい人に最適です。
お風呂やお部屋、サービスなど充実した旅館ですが、私が特に気に入ったのが食事でした。この日いただいたのは信州牛三昧のコース。信州牛を石焼き、朴葉焼き、すき焼きの3つの調理方法でいただけるなんとも贅沢な夕食です。お肉はどれも柔らかく、脂の乗りもちょうど良かったです。なんでも信州牛のエサの中にはリンゴが含まれているそうで、それが美味しいお肉になる秘訣なんだとか。朴葉焼きの味噌にも信州のリンゴが入っているそうで、ほのかな甘さが牛肉とよく合っていました。
北向観音をはじめ多くの歴史的建造物が点在しているこの地域。きっと昔の人々も参拝の帰りにこの別所温泉へ立ち寄り、その疲れを癒したのではないでしょうか。温泉街にありながら静寂を保つ「かしわや本店」は「ゆっくり、ゆったり」とくつろぎたい人にぴったりの宿の一つなのです。(2021年7月訪問)
旅館名 | 別所温泉 観音様となりの宿 かしわや本店 |
住所 | 長野県上田市別所温泉1654 |
TEL | 0268-38-3011 |
お風呂 | 温泉の大浴場、露天風呂有り |
予算 | 2名1室利用時、1人当たり1泊¥26,400~(2食付き) |
露天風呂付き客室 | 有り |