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金澤の台所「近江町市場」の近くに、150年もの歴史ある建物をリノベーションして5年前にオープンした町屋のレストランがあります。その名は「レスピラシオン」。スペイン料理でありジャンルを超えたイノベーティブな料理でもあり、オープン後すでにミシュラン2ツ星、ゴ・エ・ミヨで16点、食べログでは石川県総合4位という高評価のお店になったのです。コロナ禍の現在8席で4組のゲストで、昼も夜も一斉スタート。9月下旬のある日、ディナーにお邪魔しました。その内容は驚きに満ちていて、感動のひとときだったのです。この後その詳細をお届けしましょう。
蔵のウェイティングルームとは?
「レスピラシオン」の素晴らしさは、その料理だけにとどまりません。町屋の風情ある建物を快適に改装した和モダンのスタイリッシュな空間。テーブル席もかなりスペースを空けたり、ゆったりと食事できる工夫もされていました。まず来店すると、食事が始まるまでの間ウェイティングルームに通されます。今年できたばかりの蔵を改装した不思議な部屋です。薄暗い部屋には真ん中に起伏のあるユニークなテーブルがあって、それを取り囲むようにゲストが座ります。
ここではまずスタッフの挨拶。そしてアミューズが始まる前のお茶が出されます。加賀棒茶とセイロン紅茶、アッサム紅茶などをブレンドした少しほろ苦いお茶です。口の中をリセットしておくための1杯だと、スタッフの説明。ここの素晴らしさのひとつにスタッフのサービスの良さがあげられます。まず2時間ちょっとの制限あるディナータイムの中で13皿も出すスピードにも無理なく対応できるスキルと十分なスタッフ数。そしてゲストとのコミュニケーションもうまく取れるこなれたサービス。全く急かされたりもなく、予定時間にうまく食事が終わったことにも感心しました。オープン当初は3人のシェフが一緒にやられていたそうですが、その後2人は他の系列店に移動し、今では梅達郎氏1人がアシスタントと一緒にやっているそうです。シェフはスペインで修業後日本でも他の店で活躍していた経歴があります。
アミューズから感動のインパクトシュリンプ!!
蔵のウェイティングルームからテーブルへ移動したら、いよいよディナー開始。まず最初にアミューズとして登場したのが、オープン当初から作り続けてきたという「インパクトシュリンプ」というスペシャリテである甘エビの1皿です。塩麴でマリネした甘エビの身を殻と卵の粉末を練り込んだタルトに載せ、エビを砕いて出した味噌で作ったシートを載せる。一口で味わうと、この土地の甘えびを丸ごと味わう至福の気分。その芳醇な旨味や香ばしさ、ねっとりしたエビの身やカリッとしたタルトの食感が混然一体となり、あー幸せ。
いきなりガツンと来た後は、優しい蕪の1皿です。3時間かけて火入れした蕪にハマグリの泡がそっと載せられ、滋味あふれるとはこういう料理だと思うのです。そして能登の「あんがとう農園」の野菜やハーブを酸味のあるガスパチョにさして風味を移した1品。メニューにないもので、とても爽やかで美味しい。このお店では石川県の地産地消はもとより、数々の生産者と繋がって、素晴らしい食材を使用しているのです。自家製のパンも加賀のうどん粉を使用し、もちもち感十分。スペインのオリーブオイルと共に頂きます。
まだまだ続く絶品料理
シェフが朝採ってきたという舞茸と七面鳥の料理には朝採れた牛乳から作り立てのフレッシュなブッターナチーズや能登の栗の泡が載っています。次にはピルピルというバスク地方の伝統料理で、マハタを1週間熟成しマハタのゼラチンで作ったピルピルソース添え。生クリームは使っていないのにクリーミーで不思議です。太刀魚が出て目鯛と続きます。目鯛も能登産で1週間熟成させ、輪島のキャビアソースや加賀野菜の金時草が添えられています。次に出た焼き茄子のお浸しが大好きでした。これはヘタ紫茄子という糖度2倍のもので、焼き茄子風洋風お浸しです。七面鳥のスープがいい出汁です。
日本鹿の背ロースは柔らかく美味しいお肉です。付け合わせの肉団子は猪肉。能登半島が近いのでジビエが豊富です。イノシシは臭くなくて、スパイスが効いていてむしろ美味。ノドグロのパエリアは2週間熟成のノドグロです。少々味付けは塩辛いけれど、今日使った食材をまとめてソースを作っているので、味が凝縮されて旨味が素晴らしいのです。メニューにない1品がまた出ます。毛ガニの入ったスペイン風おじや。デザートも加賀しずくという名の梨のアイスに大葉オイルを垂らしてさっぱり仕上げています。タルトも出て、ミニャルディーズも充実していて満足感はかなり大きいものでした。ランチもディナーも同じ16000円で13皿のコースのみです。こうした料理の数々と卓越したサービス、それに加えて様々な驚きをもらえたので、値段以上の価値が十分あったというのが率直な感想です。
データとまとめ
店のデータ
店名 | レスピラシオン |
住所 | 石川県金沢市博労町67 |
電話 | 076-225-8681 |
席数 | 現在は8席 |
個室 | なし |
予算 | 13皿くらいのコースが16000円(税込み17600円) |
店のwebサイト | https://respiracion.jp/menu.php |
予約 | 予約可 予約が取り難いので早めに予約を |
まとめ
料理が美味しいだけではなく、サービスが卓越していること、お店が和モダンで情緒満点なこと、蔵のウェイティングルームがあったり驚きがたくさん用意されていること。予約が取り難い人気の訳が分かりました。グルメ目的で金沢に行くなら、このお店を候補のひとつにして外れはないでしょう。 (2021年9月訪問)