金沢から少し離れた野々市市に、1972年この寿司屋を創業したのは先代の高谷進二郎氏でした。旬の食材にひと手間もふた手間もかけて、一番おいしい状態で出してくれる寿司は大人気で、たくさんの常連さんが付いたとか。その先代が2年前に急に亡くなられた後は、もう店をたたんでしまおうかと思ったと、今も店に出ておられる娘さんは言います。でも先代の寿司を愛してくれたお客さんがおられるから頑張って続けようと、今の大将である向野公士氏に引き継いでもらい、4人の職人さんが今では立派に先代の味を受け継いでおられます。それはカウンター10席、お座敷16席の店内がほぼ満席だったことでも証明されていました。
初めての寿司屋なのに最初から楽しませてくれたのが、コミュニケーション能力抜群の寿司職人佐々木さん。話し上手で楽しませつつ、お寿司の説明も詳しくしてくれて、流れるようにコースが進んでいきました。
決して奇をてらうことなく、つまみと寿司を交互に、また同時に出してくれます。たとえばしめ鯖もおつまみと棒寿司の両方を同時に、一口サイズに切ってくれるので食べやすいのです。能登の長尾の車海老も同様です。シンプルなメニュー構成ながら、今までで一番美味しいと感じた寿司との出会いがいくつもあり感動的なひとときでした。
甘海老はその卵を混ぜたシャリに味噌と甘海老をのせるというひと工夫。口の中でとろけつつもプリプリの海老。アワビは水と昆布とお酒だけで8時間煮たものでびっくりする柔らかさです。
気仙沼の鰹の藁焼きの握りは、迷い鰹で脂がのっていて、以前高知で食べた鰹のたたきより断然おいしいと感じました。
香箱蟹、シャコ、太刀魚、蛤などいろんなネタに感動していると、いよいよスペシャリテ「のどぐろの温かいお寿司」の登場です。先代が20年前から始めたものだそうで、旨みが引き立つ優しい味の蒸し寿司は絶品です。
イカをレモンと塩で、タコも叩いて柔らかくして、マグロも10分漬けにして、鯵、毛ガニ、穴子あぶりで締めて、大満足の夜となりました。
立派な先代の跡を継ぐということは並大抵ではできないことでしょう。おしゃべり上手な佐々木さんの隣で、とても寡黙ながら一生懸命頑張っておられた向野さんに心からのエールを贈りたい気持ちでした。(2020年8月訪問)
レストラン名 | 太平寿し(たへいずし) |
ジャンル | 寿司 |
住所 | 石川県野々市市大平寺 |
TEL | 076-248-5131 |
予算 | ひとり12000円から |
座席 | 26席 |
個室 | あり |
予約の可否 | 予約可 |