「当銀行はオーベルジュへと生まれ変わります!」
実際にこんなアナウンスがあったかは定かではありませんが、町の顔である伝統的な銀行が宿泊施設へと生まれ変わるなんて、きっと周辺の人はかなり驚いたに違いありません。
スペインにもパラドールと呼ばれる、歴史的建造物を改装し宿泊施設にするという取り組みがありますが、日本でそういうところに泊まるのは初めて。昭和初期の名建築が一体どんな風に生まれ変わったのか・・・元銀行ってことはお部屋に超巨大な金庫があったりして~なんてふざけたことを考えながら、兵庫県豊岡市「豊岡オーベルジュ1925」へ行って参りました。
そもそも豊岡市と言えばお菓子やカバンで有名な町。上等な革製のカバンが、デパートの半分以下の値段で手に入れることが出来る、ショッピング好きには堪らない町なのです。そんな町の中心地にあるのが、かつて「兵庫縣農工銀行」の豊岡支店としてこの町と共に歳を重ねてきたこの建物。西洋の影響を受けた重厚感のある石造りの建物は、国の有形文化財にも登録されていてノスタルジックな雰囲気を放ちます。
しかし外見の荘厳さと比べ内部の造りは想像以上に廃れた印象で、ある意味このまま映画のセットとして使えそうですらあります。客室は天井の配管が剝き出しで、お風呂も湯舟はなし。気密性も悪いようで、部屋が狭く暖房が2台あるにもかかわらず肌寒く感じるほど。部屋より廊下のほうが暖かいなんて…そんなホテルありますか?こんな設備なので、勿論巨大な金庫だってありません(笑)またオーベルジュに欠かせないレストランも造りが悪く、インテリアもどこかちゃちに感じてしまいます。
そして肝心の料理は、兵庫県の小さな町のホテルでこれだけ食べられれば十分かなといったレベル。フォアグラは風味が無かったので微妙でしたが、スープや魚料理など一つ一つ丁寧に作られているのは伝わってきました。それでも、決して料理目的で訪れるほどの価値はないでしょう。
私は今回もっと外見に違わない重厚感のあるお部屋に泊まれると思っていたので拍子抜けでしたが、こういった歴史を感じさせる素朴な建物や豊岡に関心のある人であれば、もっと違った印象を受けたのかもしれません。
一生懸命頑張っていたスタッフもいたものの、そのサービスも概ねマニュアル通り。このように設備もサービスも改善する余地があり過ぎるほどあるので、それらの問題をクリアしていけばそれなりに伸びしろのあるホテルだと思いました。(2020年11月訪問)
旅館名 | 豊岡オーベルジュ1925 |
住所 | 兵庫県豊岡市中央町11-22 |
TEL | 0796-26-1925 |
お風呂 | シャワーのみ |
予算 | 2名1室利用の場合、1人¥19,481~(朝・夕付き) |
露天風呂付客室 | なし |