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名物に旨い物なし? 初めて食べたラグマンの記憶
私が人生で初めて食べたラグマンは、記憶を辿ると2008年の中国の新疆ウイグル自治区のウルムチでのことでした。
ラグマンとはラム肉やパプリカなどを炒めたトマトベースのスープや餡掛けで食べる手延べの白い麺料理のことで、中央アジアで最もポピュラーな料理の1つです。中国では拉条子(ラーティアオズ)や拌面(バンミェン)とも言われるそうです。
私が新疆ウイグル自治区の旅行中にアテンドして下さったガイドさん(漢民族)がしきりに「今日の夕食は有名な麺料理だよ!」というので、とても期待して行ったら「なんだ、日本のうどんの方が美味いじゃない」とガッカリしてしまいました。
その時のお陰でラグマンに対して「新疆ウイグル自治区にある、私とはあまり相性が合わなかったけれどやたら周りの人が美味しいという食べ物」という強い印象が残ったのです。
そして2017年にカザフスタンを始めとした中央アジアに旅行した時に、改めてラグマンを賞味しました。
約10年ぶりに食べたラグマンでしたが、その時は違和感なく「美味しい!」とすぐに思ったのです。
2008年と2017年の間に私も様々な国を旅行し、美味しくないものも含めて色々食べてきて、味覚の許容範囲が広がったのかもしれません。或いはただ単にそのお店が美味しかっただけかもしれません。でも私はカザフスタンだけでなく、その後もウズベキスタンでもキルギスでもラグマンを食べて美味しいと思ったので、やはり特定のお店だけということではないでしょう。
そのため、あまり美味しいと思えなかったウルムチのラグマンに対して「中国と他の中央アジアのラグマンに大きな違いがあるのでは?」と思わずにいれませんでした。
ラグマンにはラグマンの世界があります。あなたもラグマンの世界へ。
そんな中、東京に新疆ウイグル自治区のウイグル料理レストランがあると知りました。東京・西新宿にある「シルクロード・タリム」です。
中野にあるキルギス料理店には既に伺ったことがあり、そこもジャンルとしてはウイグル料理ではありましたが、今回は同じウイグル料理でも中国の新疆ウイグル自治区が源流です。
2010年にオープンしたこのお店はウイグル料理店の先駆けとしてオープン。新疆ウイグル自治区出身のオーナーであるスラジディン・ケリムさんは2001年に日本に留学し、その後レストラン・ホテルなどでアルバイトの経験を積んだ後、日本とウイグルの架け橋となることを夢見て、日本有数の繁華街である新宿にてシルクロード・タリムをオープンさせました。
私が訪れたのは年の瀬も差し迫る2020年12月の金曜の夜。50%くらいのお客の入りでしたがコロナ禍において、これだけのお客がいるお店は相当な人気店とも言えそうです。
早速私は、ラグマンとポロを注文しました。ポロとはいわゆる日本のピラフの原型で、ラム肉やニンジンなどの野菜やスパイスを入れたスープで炊き上げたご飯料理のことです。ウズベキスタンなどではプロフと呼ぶことが一般的ですが、中国のウイグル人にとってはポロの方が通りはよいそうです。
ポロにはヨーグルトが付いてきました。どうやらポロに混ぜるようです。「ご飯にヨーグルトをかけて食べるの?」と日本人としては驚きの食べ方ですが、ヨーグルトがポロの味わいをマイルドにしてくれ、非常にマッチするのです。
そして肝心のラグマン。見た目は私がウルムチで食べたラグマンと似ています。パプリカなどの大きめに切られた野菜とラム肉、トマトベースの餡に沈む麺の白さが映えます。まず一口食べて驚いたのがその喉越し。ツルツルでコシの強い麺は噛む度に口の中に幸福感をじんわりと広げてくれます。餡に適度に絡んだ麺と野菜やラム肉を一緒に味わうとそれぞれ違った食感を楽しめ、ラグマン独特のハーモニーを感じました。
私が生まれて初めてウルムチでラグマンを食べた時に「うどんの方が美味しいのでは?」と思ったのは、ガイドさんの煽りもあったので期待しすぎたのかもしれません。でもそこでシルクロード・タリムのラグマンが出てきたら「さすがウイグル一有名な麺料理だ!」とのたまっていたことでしょう。
それくらいシルクロード・タリムのラグマンは中央アジアで食べたラグマンのどれにも負けないくらいの美味しさでした。
そして同じ麺料理でもラーメンとスパゲッティの美味しさを比べられないように、ラグマンとうどんも比べられないことを実感したのです。
なぜならラグマンにはラグマンだけの世界があるのですから。(2020年12月訪問)
レストラン名シルクロード・タリム
ジャンル | 中央アジア料理 |
住所 | 東京都新宿区西新宿3丁目15番8地 西新宿バールビル1階 |
TEL | 03-6276-7799 |
予算 | ¥2500〜 |
座席 | 34席 |
個室 | なし |
予約の可否 | 可 |