富山市岩瀬地区。江戸時代から日本海を走る北前船の要衝として栄えたこの町は、今もなお当時の建物が多く残っています。そんな風情溢れる町を歩いていると現れるのが「酒商田尻本店」。富山の地酒をテイスティングできるこの場所は、酒好きなら思わずふらっと立ち寄ってしまう場所です。そして「酒商田尻本店」と同じ建物にあり、更に奥に進んだ場所に暖簾を構えるのが、いま富山で注目を集めているフレンチレストラン「カーヴユノキ」なのです。
店名の「カーヴ」とはフランス語で「蔵」を意味する言葉。なんでもワインのようにゆっくりと時間をかけて熟成していきたいという思いを込めてつけられたのだとか。加えてお店自体がかつては蔵(カーヴ)として使われていたものを改装したそうで、天井の高い広々とした空間にラウンジ、テーブル、キッチンが揃います。テーブルの仕様もユニークで、普通であれば1組1テーブルですが、ここでは大きなテーブルが1つドンとキッチンの前に鎮座。そこに間隔を空けて椅子がセッティングされており、みんなで一緒に食べるようなスタイルです。とは言ってもランチ時を除いてお店は1日1組限定。私はランチに訪れましたが、その時は私たち以外にもう1人のみ来店していて、ほとんどプライベート感覚でいただくことが出来ました。
そんな「カーヴユノキ」のオーナーシェフを務めるのが柚木栄樹氏。元々富山県出身の彼は、国内でフランス料理の腕を磨いた後、2009年岩瀬に自身のお店「カーヴユノキ」をオープン。以来、富山県の食材を用いたフレンチをこの場所から発信し続けているのです。
さて、今回私が富山に訪れたのは3月もそろそろ終わりを迎えるころ。この時期の北陸の旬素材と言えばやはり「ホタルイカ」でしょう。実際この旅行でたくさんのお店を訪問しましたが、やはりどこに行ってもホタルイカ!しかし不思議と飽きないのはやはり新鮮な旬の素材だからなのでしょうか。
6,600円、8,800円、11,000円の3つのコースの中から私たちは6,600円のランチコースを選択。アミューズと料理4皿、デザートの計6品構成です。地産地消にこだわるお店というのは地方に行けば行くほどよく見られますが、ここもそのうちの1つ。各お皿にたくさんの富山県の食材が散りばめられ、「春の富山」を頂いているような感覚です。特に前菜のマイワシが美味。脂の乗ったイワシはマリネにし爽やかにリンゴのピューレと共にいただきます。ホタルイカのお料理は同じく旬の菜の花と。ヤギのハーブチーズと合わせるのが斬新で、嫌な臭みがなくペロっと食べることが出来ました。勿論ホタルイカの鮮度は抜群で、歯を入れた瞬間に弾ける味噌の美味さはこの時期の北陸でしか味わえないでしょう。
しかしながらメインの魚料理は奇をてらったのか、思いもよらぬ食材が登場。なんと出てきたのはエイヒレ。軟骨ごといただけるというこの品は、酸味のあるバターソースと共に濃厚にいただく…のですが、残念ながら口には合わず。やけにコッテリと重たい料理で、身よりも軟骨部分の方が多いように感じました。エイに限らずあまり軟骨を好き好んで食べない身としては、もう少し一般受けする食材にすればいいのにと思いました。
実は後で知ったのですが、酒屋と隣接しているだけあって「カーヴユノキ」はワインよりも日本酒と合わせた食べ方をオススメしているよう。残念ながら今回はワインをチョイスしてしまったのですが、それを知って思わず納得。それでエイヒレだったのか…!日本酒のペアリングも得意なようなので、こちらでお料理をいただく際は富山の地酒をいただいてみてはいかがでしょうか。(2021年3月訪問)
レストラン名 | カーヴ ユノキ (Cave Yunoki) |
ジャンル | フレンチ/フランス料理 |
住所 | 富山県富山市東岩瀬102 森家土蔵群二番 |
TEL | 076-471-5556 |
予算 | ランチ¥6,600~ ディナー¥8,800~ |
座席 | 26席 |
個室 | 無し |
予約の可否 | 完全予約制 |