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奈良県東部の辺境にある曽爾村(そにむら)。標高約550mの場所にある自然の美しいのどかな村に、1日1組限定の小さなオーベルジュが2019年7月オープンしました。その名は「森のオーベルジュ星咲~きらら~」。
料理と農業を学んだご夫婦が二人で始めた静かなオーベルジュでは、里山の風景を眺めながらゆったり寛ぎの時間を過ごせます。お二人が自分の畑で栽培した野菜をはじめ、土地の野菜をふんだんに使った絶品フレンチを、シェフでソムリエでもあるご主人の厳選ワインと共に味わえ、奥様の手作りパンやデザートも満喫できます。ここでの素晴らしい時間がはたしてどんなものだったか、今回、その滞在記を皆さんにもご紹介したいと思います。
里山の風景広がる曽爾村
三重県との県境に近く、屏風岩やすすきの名所である曽爾高原などの見どころが近くに位置する奈良県奥地の曽爾村。日本で一番美しい村のひとつに数えられ、日本昔話に出てくるような村なのです。
緑がいっぱいで雄大な風景が広がる曽爾村の丘の上に建つチャーミングなオーベルジュが「森のオーベルジュ星咲~きらら~」。オーナーご夫妻が芝田秀人さんと委久(いく)さん。優しくて人柄も素晴らしいお二人ですが、ご主人はこの曽爾村出身だとか。子供の頃は不便な村だとしか思わなかったそうですが、実はかけがえのない魅力がある村だと気付いたのだそう。東京のお店で修業した後、地元でオーベルジュを開くことに決めたそうです。
変化に富んだ地形を持つ村の細い道を抜けて、斜面を上まで登ったところにこのお宿は建っています。このオーベルジュに居ながらにして見える風景は、朝は雲海が広がる幻想的な里山の眺めで、夜は一面に輝く星空なのです。一日中眺めていても飽きることがない、癒される光景。
「絵本に出てくる森の虫が住む家」をイメージした、木をふんだんに使ったあたたかいムードのインテリア。長い歴史を持つこの村に溶け込むようにして佇み、不思議な魅力を持ったオーベルジュが、訪れるゲストを心からもてなしてくれるのです。
1日1組限定のオーベルジュ
1日1組限定、つまり他のゲストは泊まっていない…そのことがどれほど贅沢で素晴らしいことかは泊まってみて実感できます。素敵なオーベルジュすべてが自分たちだけで独占できるのです。ダイニングには暖炉もあって、太い木そのままの柱があって、田舎の別荘にでもいる感じです。オーナーご夫妻と話していると、昔からの友人のお宅にお邪魔しているような気にさえなりました。そして食事時になれば、まるで専属シェフとソムリエさんが自分たちだけのために料理をし、サービス係のマダムが付きっきりで振舞ってくれるという、最高の時間が訪れるのです。
お部屋もまた可愛くて温かみの溢れるインテリアです。デッキチェアの置かれたテラスもあって、村の眺めを楽しめます。バスルームには大きいバスタブがあって、ガラス張りなので半露天風呂のよう。信楽焼のブルーのバスタブは素敵で、洗面所のシンクとお揃いで、使い勝手がいいようにデザインしたマダムが特注で作ってもらったそう。お湯をはっておけばいつでも好きな時にお風呂に入れて眺めを満喫できる、お気に入りのお風呂になりました。
2年前にオープンしたところなので、タオルもピンクのフワフワのものが用意されて、リネン類もきれいで快適です。エスプレッソマシーンや無料の水のボトルも用意され、アメニティは化粧品セットなどひと通り必要なものが揃っています。マダムのきめ細やかさが伝わる、手書きのメモ書きがあちこちで見つかるのも、心がほっこり温まります。
絶品の里山フレンチ
コンセプトは「FARM TO TABLE」。建物のすぐ下の自家農園で収穫した野菜をはじめ、曽爾村の美味しい野菜や地元の食材、大和ポークや大和牛などを使った料理は、どれもが驚きの美味しさでした。田舎のオーベルジュとは思えないレベルの高さなのです。7皿からなるディナーコース。焼き立てパンやデザート担当のマダムの委久さんは元パン職人であり、奈良で有名な郷土料理店「粟ならまち店」の元副店長もしていたそうで、野菜愛にも溢れています。そんな2人3脚で生み出される貸切ディナーは思い出深いものとなったのです。
まず最初に出たのがシェフのスペシャリテでもある「トマトのファルス」。曽爾村産の甘みも酸味もバランスが抜群のトマトをくり抜いてアボカド、エビ、きゅうりとソースを詰め込んだ一品。爽やかで懐かしい美味しさに魅了されます。
アマゴのコンフィも低温で長時間かけて柔らかく、頭から丸ごと行けました。タコの料理は九州産タコをラビゴットソースや塩レモンで調理。元気の出る味わい。白トウモロコシのスープやタイのポワレ、大和牛のフィレのグリルなど、どれもが美味しく完食できました。デザートはチーズケーキのスモモソースがけ。最後まで満足のいく料理でした。
朝食もまた素晴らしく、トマトウォーターの透明なジュースから始まり、ミネストローネスープのトマトなしバージョンのような味わい深い野菜スープ、自家製ヨーグルトに村の米粉を使ってマダムが焼いためちゃ旨クロワッサン、野菜の美味しさがダイレクトに感じられるサラダ、また目玉焼きにベーコン添えなど、朝は食欲が出ない私が、クロワッサンを娘から半分横取りしたほどでした。(笑)
宿データ
宿名 | 森のオーベルジュ星咲きらら |
住所 | 奈良県宇陀郡曽爾村小長尾658−1 |
電話番号 | 0745-88-9155 |
アクセス | 近鉄榛原駅から車で約30分。別途有料送迎も頼める。 |
風呂 | 部屋に半露天風呂あり。別途、車で15分ほどに「お亀の湯」という曽爾高原温泉の共同浴場があり、トロトロの美肌の湯でおすすめ。露天風呂や内風呂など色々楽しめる。入場料750円 オーベルジュから無料送迎をしてくれる。 |
予算 | 1泊1室39,600円(2名利用の場合、食事別)、ディナーコース1人8,800円、朝食2,200円 つまり2名利用で1人1泊30800円(2食付き) |
まとめ
いかがでしたか?奈良の田舎、曽爾村にある人気のオーベルジュの魅力がわかってもらえたでしょうか?
実は昨今、全国のシェフが注目するという奈良の田舎。1300年もの歴史を持つこの地が、美しい里山の自然の中で野菜や家畜など山野の恵みを美味しく調理する知恵を持ち、個性的な食材を収穫できることなど、魅力に満ちているためなのでしょう。せっかく奈良を訪れるなら、そうした田舎にある美食のオーベルジュに泊まってみてはいかがでしょうか?(2021年8月訪問)