「オーベルジュ・エスポワール」は蓼科高原の別荘で暮らすゲストや、東京方面からやって来るグルメなゲストを相手に本格的フレンチを出すこと23年。自然の美しい別荘地に3室のゲストルームを持つオーベルジュでもあります。レストランに入っていくと、マダムが出てきて歓迎してくれました。店内で食事しているのは皆さん上品な感じの年配のご夫婦やファミリーが中心で、ヨーロッパの高級リゾートのお店に紛れ込んだような気がしました。客層がとてもいいのです。これが東京のレストランだと若くて気取ったIT企業の男性とかが多いのに、ここは全く異なる客層です。ゆったりとした空気が流れているのです。
シェフのお父さんというご年配のオーナーである藤木氏。まさに「エスポワールの顔」として、この店に欠かせない存在です。1998年、息子であるシェフの藤木徳彦氏がこのオーベルジュを開くというので、手伝うために来られたそうです。今やこのお店に欠かすことのできない存在で、各テーブルを廻って常連さんといろんな話に花を咲かせています。初めて行った我々のテーブルにも、食事中ことあるごとに4~5回は話をしに来てくれました。話題が豊富で話し上手。接客はお父様やマダムであるお母様に任せてシェフは料理に専念できるから、親子のタッグが素晴らしいのです。
鹿や鴨や猪などジビエ料理を得意とするシェフは、日本ジビエ振興協議会理事長もするほどジビエのプロです。ブロイラーなどの家畜と異なり、すべて天然の食材である国産ジビエを美味しく生かしていくことをモットーに、7~8年前から日本でも定着してきたジビエを広める活動をされているのです。お父様の話を聞くと、決まった餌を与える牛や鶏や豚と異なり、ジビエは野生なので、食べるものによってもエリアによっても、例えば同じ鴨でも味が違うそう。それを知った上でいかに上手く料理するかは料理人の腕にかかって来るので、ジビエは料理人にとって面白い食材なんだそうです。
ランチは軽くと思って、一番安い4500円のAコースを頂きました。それなのに、アミューズ、前菜2皿、メイン、デザートと5皿も出て、しかもすすめられた朝採れのキノコのソテーまで追加したので、ボリューム満点でお腹いっぱいになりました。
アミューズは新玉葱とチーズのキッシュ。粒マスタード入りクリーム添え。前菜の1皿目はパテアンクルートでいろいろな肉類がモザイク状に入っています。信州野菜やジビエのシャルキュトリー(サラミなどの肉加工品のこと)の盛り合わせも。もう1皿は佐久の鯉のスライスしたもの(エギュイット)と山ウドのアイスクリーム、鯉のジュレ添えというユニークな一皿。意外に爽やかな味わいです。メインは肉か魚か選べ、肉は牛肉と豚肉の盛り合わせです。アップ料金で鹿肉や鴨肉、そして驚くのが「カラス肉」というメニューも!!カラス??隣のテーブルの親子はお父さんが鹿肉、中学生くらいの息子はカラス肉をオーダーしていました。黒い羽根が一緒に飾られて出てきたお皿にギョッ!でも息子のカラス肉を味見した父親は「鹿肉よりカラスの方が断然うまい!」と叫んでいたのです。
さすがにカラスは食べるのに勇気が要りそう。でもジビエは鉄分などいろんな栄養素がふんだんに摂れるのと、コレステロールフリーでヘルシーな肉も多いそうです。
一番少ないランチコースを持て余していた私。それを見てオーナー氏いわく「うちのお客様は皆さんよく肉を食べられますよ。ディナーはもっとたくさん料理が出ますが、80歳を超えた女性の方でもぺろりと平らげるんです。肉を食べる方は皆さん元気です」
たしかに反対の隣のテーブルにいた老夫妻もそんな年齢かもしれない風貌ですが、ランチのもっと高いコースを完食なさっていました。さすが!
私もこれからはもっと頑張ってジビエにも挑戦しようと思いました。(カラスはちょっと・・・・ですが)
(2021年7月訪問)
レストラン名 | オーベルジュ・エスポワール |
ジャンル | フレンチ(フランス料理) |
住所 | 長野県茅野市北山5513−142 |
TEL | 0266-67-4250 |
予算 | ランチコース 4500円~ ディナーコース10000円~ |
座席 | 40席 |
個室 | あり |
予約の可否 | 予約可 |