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三重県桑名市と言えば焼きハマグリで有名な水郷の町です。そんなのどかな町の田園風景の中にひっそりと佇んでいるのが、今回ご紹介する「ダ・センプレ」というイタリアンレストランです。シェフとマダムの2人でやられているそうで、まるでご夫妻の家に招かれているかのような、そんな肩ひじ張らない雰囲気が魅力です。
地元食材に絞ったコースで三重の食を発信
「ダ・センプレ」では地元野菜にこだわった、ここでしか食べられない創作イタリアンを楽しめます。ディナーは6500円と10000円の2種類ありますが、今回は11品10000円のコースを選択しました。特に圧巻だったのが、「菜園」と称された料理。マダムのおばあさんがここ桑名で野菜を育てているそうで、そこで採れた数十種類の野菜を使用した1皿です。少量ずつそれぞれの野菜にあった方法で調理され、崩してしまうのが勿体ないほど美しく盛り付けられています。もちろん新鮮でみずみずしい野菜や果物は味も最高で、スペシャリテにふさわしい料理でした。
素材が良いだけでなく、シェフの発想力には目を見張るものがあります。私がそれを特に感じたのが1つめのパスタを食べた時でした。出てきたのは自家製のタリオリーニ。合わせているのは今が旬の鱧と茄子です。タリオリーニには焼きナスをつくる際に生じる茄子の皮の炭を練り込んでいるそうで、麵自体にも深みがあります。焼きナスと鱧のソースもアイディアが面白く、香ばしさや茄子の苦みが加わったクリーミーなソースがタリオリーニと相性抜群。シェフは調理を1人で担っているためその分所要時間は長かったのですが、この味ならいくらでも待てると思えるような料理でした。それにしても1人で調理をこなす場合、大概シンプルな料理になりがちですが一切の妥協をしないあたり、シェフのプロ意識の高さを感じます。
モーニングの店からミシュラン1ツ星へ!!
これだけの料理を堪能させてくれる「ダ・センプレ」ですが、元々はモーニングを提供するような普通のカフェだったそう。モーニングとは「モーニングサービス」の略。喫茶店やレストランが朝の時間帯にドリンクやトーストなどを朝食として割安価格で提供することを指します。そんなモーニングで有名なのが愛知県。発祥の地ともされていて、度々そのボリュームの多さがテレビなどでも取り上げられていますよね。ここ三重県も名古屋の文化圏であることからモーニングを提供しているお店が多く、このレストランもかつてはそんなカフェの1つでした。
それが「もっといろんな料理に挑戦してみたい」というシェフの想いから2015年に心機一転、高級イタリアンのお店としてリニューアルオープンしたそうです。しかし実際にモーニングの提供を辞めたのは2020年3月のこと。惜しむ声が多かったそうですが、「モーニングを食べに来てくれていた地元の方が、今度はディナーに訪れてくれるようになったんです」とシェフは嬉しそうに話してくださいました。こんなに素晴らしい料理をつくり、ミシュランの星を持つレストランでありながらシェフもマダムも驚くほど謙虚な人柄。今回私が東京から食べに来たことを伝えた時も「うちなどにわざわざ来ていただいて…」と謙遜されていて、その腰の低さもこのお店が多くの人から愛される理由なのだろうと感じました。
「昔から生まれ育った土地で常に進化し続けていきたい」─イタリア語で「昔から」という意味がある「ダ・センプレ」という店名にはシェフのそんな想いが込められています。どこにでもあるような普通のカフェがイタリアンレストランへと姿を変え、ミシュラン1ツ星を獲得する…並大抵の努力ではないはずです。しかしそれもシェフにとっては1つの過程に過ぎません。まだまだ進化し続けていきたいと語るシェフの今後に目が離せません。(2021年8月訪問)
データ
店名 | ダ センプレ (da sempre) |
ジャンル | イタリアン/イタリア料理 |
住所 | 三重県桑名市長島町小島670-3 |
電話番号 | 0594-42-2500 |
予算 | ランチ¥2,800~(平日限定) ディナー¥6,500~ |
席数 | 6席 |
予約 | 完全予約制 |
まとめ
「桑名=焼きハマグリ」というイメージしかありませんでしたが、今回「ダセンプレ」で食事をして桑名市の新たな名所を見つけたような、そんな素敵な気持ちにさせられました。わざわざ遠くから食べに来る価値のあるレストランですので、是非味わってみてくださいね。