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刑務所やオホーツクの流氷で有名な網走。北海道の東の果てとも言えるこの場所に、「オーベルジュ北の暖暖」という小さな宿があります。多彩な観光地がある市内には利便性の良い大きなホテルもありますが、せっかくこの自然豊かな大地に来たのなら、あえて緑に囲まれた静かな宿を選んでみてはいかがでしょう。
今回は実際に泊まってみた経験をもとに、「オーベルジュ北の暖暖」の魅力についてご紹介していきたいと思います。
まるで昭和?のオーベルジュ
このオーベルジュに足を踏み入れてまず驚くのがそのインテリアです。宿は「昭和レトロ」を絵に描いたような雰囲気で、古臭く雑多なおもちゃが所狭しと並んでいます。これではまるでおもちゃ博物館のよう。なんでもオーナーが自ら集めたものをこうして飾っているらしいのですが、お世辞にもセンスが良いとは言えません。しかしそれすら彼の意図するところであり、おばあちゃんの家に訪れた時のような気分になって欲しいという想いから、このようなスタイルになったのだそう。また屯田兵の開拓時代、今から130年余り前にこの地に入植した時の雰囲気を残したくてこんなインテリアになったのだとか。実際そんなおもちゃを見ていると、どこか昔懐かしい感覚を覚えました。
お部屋は12室とスイートルームが2つ。今回3人での宿泊だったのですがトリプルが不可ということで特別室の「オオイチモンジ」と「オオムラサキ」を2部屋予約しました。いずれも蝶の名前を冠しているあたり、大自然の中にある宿らしい。
特別室はセミダブルのベッドが2つ並んでおり、お部屋も広め。眺めのいい陶器で出来た浴槽なんかもあり、コテージ風の内装ですがゆっくり過ごすのにピッタリです。
本格フレンチには驚いた!!
オーベルジュと名乗ってはいますが、正直館内の様子を見ていると食事はそんなに期待できないなと思っていた私。ところがどっこい、「北の暖暖」の食事は予想以上にレベルが高くて驚かされました。
「北の暖暖」の夕食は本格的なフランス料理です。網走市は北海道の北東沿岸に位置する町。オホーツクの海の幸をふんだんに使用した料理は、東京で店を開けばあっという間に人気店になってしまいそうなほど洗練されていました。
まず出てきたのは人参のムースとウニ。さすがウニの産地なだけあって新鮮で、味がクリアに伝わってきます。ウニだけよりムースやジュレと一緒に食べた方が不思議とウニの自然な甘さが際立ち、美味しかったです。
つぶ貝のマリネは夏野菜と合わせてサッパリと。プチトマトの爽やかな酸味やトウモロコシの甘さがマッチしていて、こちらも夏らしい一皿です。
そして私が1番気に入ったのが帆立のポワレとトマトリゾット。帆立の名産地として知られるサロマ湖が近く新鮮な帆立が手に入るようで、表面をカリッと焼き上げた大粒の帆立とリゾット、そしてグリュイエールチーズのせんべいを合わせていただきます。食感はもちろんのこと、濃厚すぎない味わいがちょうど良く、まさかこんな場所でこんな本格的なフレンチが食べられるとはと驚きました。
もちろんディナーだけでなく朝食も素晴らしかったです。「北の暖暖」の朝食は和食。玉葱入りのだし巻き卵やサーモンのユッケ、肉団子スープなどなど、ひと手間ふた手間加えたような料理がお盆にこれでもかと並びます。フランス料理も美味しかったですが和食までこんなに美味しいとは…「オーベルジュ」を名乗るのも頷けます。
朝食は「風のテラス」と呼ばれるバルコニーが見渡せるカウンター席で。運が良ければエゾリスが遊びに来てくれるようで、眺めも抜群です。
深さ150cmの立ち湯にびっくり!!
夏場とは言え朝夕は肌寒い北の大地において、やっぱり温泉は最高のレジャーと言えるでしょう。「北の暖暖」はオーベルジュでありながら網走湖畔温泉を引いているお宿。館内には大浴場や露天風呂もあります。
そこまで部屋数も多くないので大浴場のお風呂は小さめですが、ここは露天風呂が非常にユニーク。なんと立ち湯になっていて、その深さは150cm!女性は足をつけたら顔が出ないほどの深さです。そのため湯舟の上からロープが垂れていて、これにつかまりながら入るというから面白い。
露天風呂からは網走湖がよく見え、眺めを楽しむのにも最適です。季節によって表情を変える網走の絶景を温泉に浸かりながら楽しむ…贅沢なひと時になること間違いなしです。
データとまとめ
宿名 | オーベルジュ北の暖暖(だんだん) |
住所 | 北海道網走市大曲39-17 |
電話番号 | 0152-45-5963 |
お風呂 | 大浴場、露天風呂あり |
露天風呂付き客室 | 無し |
予算 | 2名1室利用時、1人当たり1泊¥18,200~(朝夕付き) |
公式ホームページ | http://kitanodandan.com/ |
眺望も良く食事も美味しいのだから、もっとオーベルジュらしく館内も洗練された雰囲気に統一すればいいのにと思われる人もいるかもしれませんが、私はむしろこのアンバランスさがユニークで気に入りました。
多種多様な昭和のおもちゃが飾られる廊下には、同様に数々の有名人のサインも飾られています。「オーベルジュ北の暖暖」にはきっと、人を惹きつけるような底知れぬ魅力があるのだと思います。今回泊まってみてそんな事を実感したのでした。(2021年8月訪問)