目次
本州最西端、山口県下関市にあるフレンチレストラン「レストラン高津」。創作性溢れるユニークな料理が楽しめると話題の、カウンター8席のみの小さなレストランです。ミシュランやゴ・エ・ミヨに載っているわけではありませんが、食べログのレビューが軒並み高評価だったので思い切って予約。実際に行ってみた感想をご紹介していきたいと思います。
レトロな洋館のカウンターフレンチ
山口県下関市の高台の上。有形文化財にも指定されている大正時代の洋館に今大人気のフレンチ「レストラン高津」はあります。かつて捕鯨会社のオフィスとして使われていたこの建物はすっかりリノベーションされ、外観とは打って変わってスタイリッシュな空間が広がります。L字型のカウンターはゆとりがあり、奥にはオープンキッチンでシェフが腕を振るいます。
シェフ高津健一氏はアジアベストレストラン50に2年連続選出された福岡の「ラ メゾン ドゥ ナチュール ゴウ」でスーシェフを務めるなど、輝かしい実績の持ち主で、今の場所で自身のお店をオープンしたのは5年前のことになります。
「レストラン高津」では地元山口県の食材をふんだんに使用した独創的なフレンチを楽しむことが出来ます。
気さくなシェフ
普段から少人数でやられているそうですが、この日はアシスタントが病欠とのことで料理も接客もシェフが1人でこなされていました。と言ってもシェフに焦っている様子は一切なく、むしろ余裕さえ感じるほど。料理の合間に雑談に応じてくださったり、笑顔の絶えない素敵な方でした。38歳にして20年の業界歴だけのことはあります。
シェフはお酒が全く飲めないらしく、普段はもう一人の方に任せているそう。しかしこの日は一人ということでボトルと一緒に何やら紙を1枚持参。「すみません、カンペ見てもいいですか?」「これはですね~、スッキリとした甘さが特徴…って書いてあります!(笑)」と説明している姿は愛嬌があって、好感が持てました。
1人ということで食事自体は3時間の長丁場でしたが、記念日のカップルのためにデザートプレートを用意したり、記念撮影に応じてくださったり、お客さん一人一人を大事にしているのが伝わる温かなサービスが素晴らしかったです。
独創的な料理が光る
「レストラン高津」のメニューはランチ・ディナー共に16,500円のコースのみ。今回はディナーに訪れたのですが、その創作性溢れる料理の数々に驚かされました。
まず出てきたのはアミューズのカボチャのピューレ。滑らかで上品な味わいのピューレには、今が旬のいくらをトッピング。「長門ゆずきち」という山口県オリジナルの柑橘の皮を削って爽やかな風味も演出しています。いくらは年がら年中スーパーなどでも見かけるため、てっきり旬とは無縁の存在だと思っていたのですが、旬のいくらはプチプチ感が強いのだとか。カボチャとの相性も良く、アミューズに相応しい料理でした。
そして私が特に気に入ったのが前菜で出てきたマグロのお料理です。酢漬けにしたエシャロット、赤ウニと和えられたマグロの上には黄色のエスプーマが掛けられているのですが、実はこれ焼きナスの泡。ちゃんと食べてみると焼きナス特有の香ばしい香りや風味が感じられます。脂の乗ったマグロを酢漬けのエシャロットがさっぱりと仕上げ、且つウニの甘さが良いアクセントになり、すべての食材が絶妙にマッチしていました。
次いで出てきたのは鯖の料理。さすが海辺の町というだけあって料理にもたくさんの魚介類が使われています。こちらの料理はお酢で締めた鯖を、ジェル状にしたガリといただく一品です。梅干しや日本酒で作ったソース、そして大葉のオイルを垂らしてあって、和の風味が感じられます。とても一人で作業されているとは思えないほど凝った料理ばかりで、シェフの手際の良さを感じます。
レタスとシャインマスカットのユニークな前菜
またレタスとシャインマスカットの前菜も非常に面白い一皿でした。お皿にこんもりと盛られたレタスの上にはブルーチーズのクリームが掛けられ、薄くスライスされたシャインマスカットやパルミジャーノと一緒にいただきます。かなりボリューミーですが不思議と平らげられてしまうようなさっぱりとした料理で、フレンチというよりイノベーティブ料理と言われた方が納得できそう。
そして思わずクスッとしてしまったのが、熱々のパンと一緒に出された無塩バター。こちらは絵文字をかたどっており、一人一人怒り顔だったり笑顔だったりと表情が違います。ささやかですが、こうした遊び心は後々思い出に残るしいいアイデアだなと感じました。
メインは鹿児島県黒牛のもも肉。舞茸や黒にんにくのピューレでいただくのですが、全く脂っこく無くて食べやすかったです。上には同じく舞茸のパウダーも散らされていて、香ばしさをプラスしています。
デザートは2種類で、アーモンドミルクのブランマンジェとチョコのテリーヌ。ブランマンジェは梨や柑橘、バニラのオイル、そしてレモングラスのジュレなどと合わせた一皿で、独特の風味がユニークで異次元の香りのデザートでした。
一方チョコのテリーヌは旬のいちじくと合わせて。どっしりとして滑らかなテリーヌは濃厚ですがいちじくの甘みと相性バッチリ。コースは全部で10品でしたが、微妙だと感じる料理は無く、最後まで満足のいくものになりました。
データ
店名 | レストラン高津 |
ジャンル | フレンチ(フランス料理) |
住所 | 山口県下関市岬之町13-7 |
電話番号 | 083-234-2299 |
席数 | 8席 |
個室 | 無し |
予算 | ランチ・ディナー共に¥16,500~ |
予約 | 完全予約制 |
お店HP | https://restaurant-takatsu.com/ |
まとめ
今回はたまたまシェフ1人でしたが、それにしても小人数でやっているとは思えないようなコース構成で、他で見たことの無いような工夫がたくさんありました。
また「ただ作って提供するだけ」ではなく、お客さんとの交流を大切にしている姿が印象的でした。味が良ければあとはなんでもいいという人もいるかもしれませんが、私はお店の雰囲気やサービスも食事をする上で非常に大切な要素だと思っています。「レストラン高津」はそれがすべて満たされた素晴らしいお店でした。(2021年10月訪問)