神戸市北区にあるフレンチレストラン「セッタン」。土地勘のない私は「神戸」と聞いて勝手に都会の煌びやかな雰囲気を想像していたのですが、市内と言っても想像以上にいろんな場所があるようです。「セッタン」の最寄りは神鉄岡場駅。三宮から25分ほど電車を乗り継ぎ、そこからタクシーで20分というかなり辺鄙な場所にあります。
辺りは見渡す限りの棚田や山。そんな景色を見渡すような小高い丘の上に建ち、ガラス張りの店内は田舎に似つかわしくないほど洗練された雰囲気です。
2021年8月にオープンしたばかりだというこちらのレストラン。実はシェフがまさにここ北区の出身であり、数々の名店で研鑽を重ねたのち戻ってきたのだとか。「癒しの時代」と言われる現代にふさわしいレストランを目指しているのです。ここでいただけるのは摂津丹波のテロワールを表現した独創的なフランス料理です。食材の旨味を最大限に引き出すために手間を惜しまず、その食材の美味しさのピークを見極める熟成を得意とします。
今回私はランチ6皿5,500円のコースを選択。まず出てきたのは六甲と名付けられたアミューズです。ほとんどが六甲付近で採れた食材で作られたそうで、まるで六甲山の中を散策しているような気分が味わえます。田舎のレストランなのでもっとシンプルな料理を想像していましたが、思っていたよりもずっと本格的な料理が多かったです。
続いて出てきたのは「浦サワラ」のロースト。浦サワラとは脂肪分が10%を超える非常に脂の乗ったサワラのことで、主に一本釣りで水揚げされる特上の品です。火入れをすることで旨味が増すのですが、すべてに火を入れてしまうとただの焼き魚になってしまうので火加減が難しいところです。この皿では中心にレア感を残しながらも表面は香ばしく焼かれており、そのバランスが絶妙でした。合わせるのは鮮やかな菜の花のピューレと甲殻類のソース。またブラックオリーブのペーストにはエビの香りも移っています。菜の花のほろ苦さと甲殻類の香ばしさが、脂の乗ったサワラとの相性も良かったです。
また特にユニークだったのが、里山ポトフと題された一品。こちらは熟成させた猪肉を藁焼きにしてネギや大根、ちぢみほうれん草、白菜、ゴボウなどと合わせていただくのですが、その藁焼きの工程を見せてもらえます。お店の外に藁焼き用の石組が用意されていて、スタッフさんの案内で一旦席を離れて、ちょっとしたパフォーマンスを楽しみます。ほとんど火は入れてあるので藁で香りをつけるだけなのですが、風に乗って藁の香ばしい香りを感じるとこの後の料理への期待が高まります。先ほどの浦サワラの料理とは打って変わって非常にシンプルな料理で、だからこそ食材の旨さがより一層感じられました。
魚はブイヤベース風で、身をふっくらと仕上げたスズキに高菜の煮込みやアイオリソースを合わせます。少し磯臭さを感じましたがボリューム満点で食べ応えがありました。メインのポークは里山の野菜や春キャベツのピューレと合わせてさっぱりと。
シェフが修業をしていた大阪のフレンチレストラン「リュミエール」は、フランス料理のソースの肝であるバターやワイン、クリーム、小麦粉、砂糖などを99%使用しないというヘルシー志向な料理を得意とする名店。その影響を受けてか、「セッタン」でも伝統的なフランス料理のこってりとしたソースの姿は無く、どれもさっぱりとした味付けなのが印象的でした。
デザートやプティフールも出て、5,500円とはかなりリーズナブル。食後のコーヒーは外のテラスで風にあたりながら楽しむことも出来て、優雅なひと時です。料理・サービス・ロケーション共に満足のいく食事になること間違いなしです。(2022年3月訪問)
レストラン名 | SETTAN(セッタン) |
ジャンル | フレンチ/フランス料理 |
住所 | 兵庫県神戸市北区八多町屏風965 |
TEL | 078-224-5013 |
予算 | ¥5,500~ |
座席 | 16席 |
個室 | あり |
予約の可否 | 完全予約制 |
公式サイト | https://settan-kobe.com/ |