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「え、本当にここ?」初めて的山荘に訪れた時、思わずそんな感想を抱いてしまう人は多いでしょう。1964年創業の「的山荘」は大分県日出町(ひじまち)にある老舗日本料理店。立派な塀に囲まれていて、まるで寺社仏閣のような厳格さも感じさせます。
重要文化財の建物が料亭に
「的山荘」は元々、大正4年に巨万の富を築いた成清博愛が建てた別荘。国の重要文化財にも登録されており、古き良き日本の伝統家屋の雰囲気がそのまま残っています。
敷地は3,670坪にもなり、別府湾を一望できる絶好のロケーションです。門をくぐると玄関前のロータリーまで綺麗な石畳が続き、まるで参道を歩いているかのような気分にさせられます。庭園も美しく整備されていて、季節によってさまざまな顔を見せてくれるのです。私が訪れたのは夏の終わり。青々とした木々とその奥に見える別府湾の青が素晴らしかったです。
建物内は書院などの座敷飾りや彫刻など、江戸時代以降の伝統手法が散りばめられていて雰囲気も抜群。最大50名まで収容可能な畳張りの大広間にはテーブルと椅子がセットされています。よく見てみると伊藤博文の書が飾られていたり、日本画家・今中素友の3.2mもある美しい富士の絵が飾られていたり、歴史の中に浸りながら食事を楽しめるのが魅力。
大広間の他にも、皇族方の迎賓館として使用された個室もあって静かに食事を楽しみたい人にもぴったりです。
的山荘でいただける料理とは
そんな厳かな雰囲気のお店だとなんとなく敷居が高そうですが、「的山荘」のメニューを見てみるとかなり良心的であることが分かります。私はこの日3,300円の定番の「昼懐石 的山」を注文しました。
「的山荘」でいただけるのは、城下かれいをはじめ関アジ、関サバ、豊後牛など地産地消を志した懐石料理。
城下かれいとは大分県日出町で獲れるマコガレイのことを指し、他のカレイとは育った環境が違うのだとか。なんでもこの近くの海底には真水が湧き出るところがあるらしく、そこで育ったマコガレイを「城下かれい」と呼んでいるそう。プランクトンが多い環境のため育ちも良く、肉厚なのが城下かれいの特徴です。かつては将軍に献上する魚で庶民は食べることが禁じられていたそうで、そんな贅沢なカレイをいただくことが出来るのも、この日出町という土地だからこそかもしれません。
3,300円のランチの内容は
さて肝心のコースの内容ですが、重要文化財のレストランだし本格的な日本料理…とは残念ながらいきません。料金が料金なので当然ですが、「昼懐石 的山」で出てくるメニューはカジュアルな日本食です。
まず出てきたのは八寸。鯛の刺身やバイ貝、栗とイカのぬた和え、鴨肉、サツマイモなど派手さはありませんが、基本に忠実に丁寧に作られているのが分かります。
その後に出てきた茶わん蒸しはかなり美味しくて、出汁の旨味が効いていました。お椀はエビと小豆の真丈で、エビの甘みと豆の風味が意外にも相性が良かったです。どちらもシンプルですが洗練されている印象を持ちました。
メインは豊後牛のステーキ。3,300円のコースでステーキが出てきたのにはびっくりしましたが、表面が焦げているし冷めていてローストビーフのよう。付け合わせはヤングコーンとパプリカで、彩りは良かったです。
デザートのアイスを含めて全5品のコースでしたが、値段なりの無難なメニュー構成だなと感じました。しかしここの醍醐味は何と言っても重要文化財の中で食事をすることにあります。ここへは歴史ある建物のムードを味わう目的をメインにしてくるほうが良いでしょう。普通重要文化財であったら入場料だけで1,000円はとられてしまっても不思議ではないので、そう考えたらこのランチ代はかなりお得かもしれません。
データ
店名 | 日出町的山荘(てきざんそう) |
ジャンル | 日本料理 |
住所 | 大分県速見郡日出町2663 |
電話番号 | 0977-72-2321 |
席数 | 50席 |
個室 | 有り |
予算 | ¥3,300~ |
予約 | 予約可 |
お店HP | http://tekizanso.com/ |
まとめ
本格的な懐石料理は11,000円からいただくことが出来ます。これを食べずしてこのレストランを評価するのはいささか早計かもしれません。
大分県日出町というと、大分のどんな田舎かと思いますが実は大分空港から別府・大分方面へ車で30分。空路で大分に入る時、ランチの選択肢として「的山荘」を入れてみてはいかがでしょうか。(2021年9月訪問)