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「すっぱい想い出を あなたに」
料理のメニューと一緒に書かれていたコピーが目を引きました。なんですっぱいの?・・・そう、このお店は酢の醸造所が経営しているのです。京丹後の宮津市で120年以上続くお酢屋さんとして知られる「飯尾醸造」さん。
この丹後の地に東京からシチリア料理の第一人者と言われる重康彦氏呼んで、2017年、お酢屋ならではの素材を使ったイタリアンの店を作られたのです。
イタリア語で「酢」を意味する「アチェート」という名のこのお店は、個性的な地方レストランとして知られつつあります。さてどんな料理が出るのでしょうか?
乳製品はあまり使っていないのが特徴
重シェフの料理の特徴は、バターなど乳製品を控えめにしていることでしょう。丹後の恵まれた魚介類や野菜などの食材はそのままでも新鮮で美味しいもの。こってりした乳製品のソースを使うより、お酢屋ならではの素材を駆使して、食材そのものの旨味を引き出す料理を生み出しているのです。
こちらで使われるお酢は特別です。昭和39年から宮津の農家にお願いして、無農薬の新米のみを原料に「米から酒、酒から酢」のすべてが自家製。無農薬のお米を玄米のまま13℃で1年間熟成させて作ります。メニューに入っている「富士酢の玄米のリゾット」は丹後の魚介をゆっくり煮込んだソースにその酢を合わせてある逸品です。そしてヘルシーであることも大きな特徴なのです。
7品8250円のボリューミーなディナーコースとは?
ディナーコースは7品8250円のボリューミーなものです。まずは前菜の前のプリモアンティパスト。タラをじゃがいも、玉ねぎと一緒にホエイで煮詰めた後、オリーブオイルと一緒に混ぜ合わせてふんわりさせたマンテカートをシュー生地で。横にあったのが米ぬかに漬けた鰆のへしこです。千枚漬けと合わせて美味しい組み合わせです。ここではこうした発酵食も積極的に使っているようです。
前菜の盛り合わせは豪華です。キジハタのカルパッチョ、宮津の真ダコはホエイで茹でて、紅芋酢でカポナータ(野菜の煮込み)添え。甘エビも麹のピューレのタルタルなど。いろいろあってバラエティ豊かで南イタリアっぽいですが、多少雑多な印象も。麹などを使っているので、私には味が濃い感じがしました。
富士酢の玄米リゾットは味わいがあって美味しい!米酢に使っているコシヒカリを使い、バターの代わりに米ぬかでとろみをつけているそうです。魚は黒豆の酢をかけて香り付けしているそうで、かなり凝っています。まさにこのお店のスペシャリテのようです。
この後パスタと魚と肉が続いて登場
パスタは2種類を少しずつ出してくれました。アカモクを練り込んだタリアテッレはコッペガニを乾燥させた外子と一緒に合わせて。イカスミのトルテッリーニはリコッタチーズを詰めたラビオリ風。肝も入ったソースです。
ボリューミーな料理が続くので、この辺りで私はかなり満腹に。魚と肉は半分にしてもらいました。
魚料理は甘鯛。炭火焼きでミカンを合わせているのがよく合っていました。肉料理は乳飲み仔牛や和牛ホホ肉の煮込みなど4種類からチョイス可能です。
肉料理を家族と二人で1皿にしてもらったら、なんと代わりにどうぞ、とサラミとチーズのセットを出してくださったのです。なかなか食べ切れず申し訳なかったですが、その気持ちだけありがたく頂戴したのでした。
スパークリングワインも、その後にオーダーしたワインも、通常のお店よりたくさんグラスに注いでくれたり、細かいことは気にしない、南イタリアのような気前のいいサービスに好感が持てました。
まとめとデータ
富士酢の飯尾醸造が運営するこの店は「丹後を日本のサンセバスチャンに」プロジェクトの旗艦店でもあります。
バスク地方のように海と山に囲まれた自然豊かで食材も豊富な丹後だから、美食を求めて都会から人々が食べに来てほしい。そしてこの店が町を変えることができる存在でありたい。そういう目的で重シェフは日々頑張っておられるのです。
上質な酢や土地ならではの発酵食などを使う、特徴ある地方レストランとして、「アチェート」はますますたくさんの人を集める存在になってほしいと願っています。「地方では一軒の飲食店が町を変える」がコンセプトですから。
(2021年12月訪問)
データ
店名 | aceto アチェート |
ジャンル | イタリアン(イタリア料理) |
住所 | 京都府宮津市新浜1968 |
電話 | 0772-25-1010 |
予約 | 予約可 |
席数 | 30席 |
個室 | あり |
予算 | ディナーのみ営業 ディナーコース 8250円(税込み)~ |
お店のwebサイト | https://www.aceto.jp/ |