御料理 一燈(日本料理/福井市/福井県)～カニの季節にカニ以外の料理にトライ！！

古民家を改装した数寄屋造りの建物です

北陸の冬の味覚の代表格と言えば真っ先にカニが思い浮かぶでしょう。しかしここ福井市を訪れる前日に別の店でカニを食べたこともあり、今回はカニ以外の日本料理を探すことにしました。
そんな中で今回私が見つけたのは福井市にある「お料理一燈」という日本料理店です。生産者から直送される最上級の食材で北陸のテロワールを最大限に表現していて、それが人気の秘密となっています。

数寄屋造りの建物でいただくミシュラン2つ星の和食

蕪のすり流し

「お料理一燈」があるのは福井市さくら通り沿い。京都のデザイナーに依頼し、制作したと言う店内は古民家を改装した数寄屋造りの居心地の良い空間で、なんだか風格も感じられます。今年のミシュランガイドでは２ツ星も獲得しています。

右が大将。緊張感が伝わります。

席はカウンターと個室で計15席。大将の倉橋紀宏氏は寡黙な職人気質で、一皿一皿真剣に向き合っている姿が印象的でした。お弟子さんも沢山おられるようで、厨房には程よい緊張感が満ちています。コースが7種類あることに加えてカニのシーズンということもあり忙しいのでしょう。皆さん調理に集中されているのでお客さんとのコミュニケーションはほとんどありません。私はスタッフさんとのおしゃべりを楽しみたいタイプなので少し残念でしたが、食事を静かに楽しみたい人にはぴったりのお店でしょう。

11,000円のコースの内容は？

ブリは辛味大根の鬼おろしと

「お料理一燈」では11,000円のコースをはじめ、この季節ならではの越前ズワイガニのフルコースなど計7つのコースを用意しています。今回は一番お手軽な11,000円のコースを注文。このコースにカニは含まれていませんが、北陸の冬の味覚を存分に味わえるラインナップになっています。
福井弁の大将がまず出してくれたのが牡蠣の松前蒸しと加賀野菜・源助大根。こちらは酢味噌でさっぱりといただきます。シンプルな料理ですが蒸し加減もばっちりで、こういうところからもお店のレベルの高さが伝わってきます。

幽庵焼きは少し身が硬めでした

また椀物に自信があるようで、湧き水や厳選された昆布を使ったこだわりのお出汁で炊いた料理は絶品。この日は蕪のすり流しで、中には甘鯛や里芋、自家製のカラスミが入っています。蕪の甘みとカラスミの塩味、甘鯛の旨味が絶妙な組み合わせで美味しかったです。
お造りもどれも地のもので、朝獲れのアオリイカとメジマグロ、そして敦賀で揚がった17kg超えのブリの3種類。ブリは辛味大根の鬼おろしとワサビをつけていただくのですが、脂が乗っていて味わい深かったです。

創作性が高いお料理

キノコともち米のあんかけは美味

またお凌ぎで出た料理は創作性があって面白かったです。キノコやきくらげ、お揚げはあんかけ仕立てになっていて、下のモチ米と一緒にいただきます。素朴でどこか家庭的な料理なのですが、決して家では真似できないような出汁の旨さを感じる逸品。熱々で思わずほっこりしてしまうお味でした。
またメインの若狭牛の炭火焼きも非常にレベルが高かったです。たっぷりの刻みネギが載った若狭牛は山椒のソースで。噛めば噛むほど旨味が口いっぱいに広がり、お肉の柔らかさも理想的でした。

焼き胡麻豆腐

そして私が特にユニークだなと感じたのが、メインの後に出てきた焼き胡麻豆腐の存在です。カリカリと香ばしく焼かれた胡麻豆腐は同じく胡麻のクリーミーなソースと共に。まろやかですが胡麻の香りが芳醇で、料理のラインナップにセンスの良さを感じました。
お食事は福井県産の無農薬のコシヒカリを土鍋で炊いたものと、酒粕を使用した豚汁。生姜もよく効いた具沢山の豚汁は食べ応え抜群です。
今回11,000円のコースだったので量が少ないのではないかと心配していたのですが、焼き胡麻豆腐を食べる頃にはしっかりお腹いっぱい。味はもちろんのことコスパの良さや満足度も高い食事となりました。

まとめ

福井県産の炊き立てごはん

東京や京都でこのレベルのものを食べようと思ったらこれの2倍3倍は払わないといけないので、非常に良心的な価格設定だと思いました。せっかく冬の福井に来たのにカニ無しだなんて、どうなんだろう…と思っていたのですが、カニが無くとも北陸には素晴らしい食材が豊富にあるということを、「一燈」で食事をして実感しました。(2021年12月訪問)