詰所三國(坂井市/福井県)～越前ガニの本場・情緒あふれる古民家宿

年代物の調度品が飾られています

古民家宿を愛する人なら誰もが一度はアレックス・カー氏のプロデュースする宿に泊まったことがあるのではないでしょうか。アメリカ出身の東洋文化研究者であり、これまで全国各地の様々な古民家を再生させてきたアレックス・カー氏。特に四国の山岳地帯、徳島県祖谷にある古民家宿は有名で、氏の代表的な作品の一つです。
今回私がご紹介するのは氏がプロデュースした福井県三國にある古民家宿「詰所三國」。江戸時代には薬屋として使われていた建物が、百数十年の時を経て町家の宿として生まれ変わりました。

三國という町

立派な屏風

福井県の大河「九頭龍川」の河口に位置する三國は、1,000年以上前の文献にも登場する歴史ある町です。江戸時代には北前船の拠点として栄え、幕末から明治にかけて町の中心部に立派な町家が多く建てられました。現代においても越前ガニや甘エビの水揚げが盛んな港町です。

「詰所三國」は2部屋限定のお宿

三國の町には情緒あふれる町家が軒を連ね、当時の面影が今も残っています。この町を訪れる観光客はまだまだ多いとは言えませんが、三國の豊かな歴史を知り、美しい町並みを楽しんでもらうために古民家宿「詰所三國」はオープンしたのです。

「かぐら建て」のお部屋

吹き抜けの天井で開放感があります

「詰所三國」は2部屋限定の町家を改装した宿です。「詰所」とはそもそも、門前町にあった一時的な宿泊施設のこと。手厚いサービスがある宿ではなく、自分らしいスタイルで過ごせる仮宿場のことを指していました。「詰所三國」は町家の趣はそのままに、現代的な快適さを備えた「暮らすように泊まる」宿なのです。
それぞれ「行雲」と「流水」と名付けられていて、併設された2棟を再利用しています。IHを完備したキッチンに大きな冷蔵庫、オーブンレンジ、掃除機に洗濯機(洗濯機は「行雲」の部屋のみ)…日常生活で必要だと思われる電化製品は大抵揃っていて快適そのもの。非日常の空間の中で自由に暮らせるような工夫が施されています。
チェックインは同じ三國の町にある盆栽店で行うシステム。宿泊に際しての注意や、玄関扉を開けるための暗証キーの説明などもここで受けます。ここの盆栽展は古い三國の町にぴったりの趣あるお店で、ムード満点。気分も上がります。

キッチン、冷蔵庫、電子レンジも完備

今回私が泊まったのは向かって左側にある「行雲」というお部屋。開放感のある吹き抜けのリビングに和室、そして2階にはベッドルームまであって家族連れでも十分くつろげる大きさです。お部屋は「かぐら建て」と呼ばれる、見た目は平屋だけれど実は二階建てという全国でもここ三國でしか見られない独特な建築様式をそのまま残しています。
玄関をくぐってまず驚かされたのは入ってすぐの場所に飾られた立派な屏風の存在。よくよく見ると部屋のあちこちにそういった調度品が飾られています。薬局として使われていた当時の薬看板や壺など、蔵から出てきた年代物の調度品はアンティークな雰囲気。「暮らしやすいように」というコンセプトでリノベーションされた現代風のお部屋と見事にマッチしています。

三國と言えば越前ガニですが…

お部屋に置いてあったお茶セット

「詰所三國」では料理の提供を行っていません。しかしお部屋にあるIHクッキングヒーターで24時間いつでも好きな時に好きなものを自炊出来ますし、近くにはいろんなレストランがあるので外食をするのにも困りません。
三國と言えば一番有名なのは「越前ガニ」。食べログの全国カニ料理ランキング1位のお店は、ここ三國にある「川喜」です。しかしこのお店は1人40,000円以上の最上級のカニ料理店で、なかなか手が出しづらいです。とは言っても他にもリーズナブルな価格でカニを食べさせてくれるお店も多いです。また三國名物はカニだけではなく、甘エビや魚介類も充実しているので是非とも味わってみたいところです。

宿から徒歩1分の場所にあるフレンチ

また宿から徒歩1分の場所には「S’amuser(サミュゼ)」というフランス料理店もあります。旧大木道具店の古民家を改修した建物で、シェフはここ三國の出身。ランチは2,000円から、ディナーは4,000円からとお手頃です。
さらに三國にはピザやハンバーガーの名店もあります。食べログ百名店のピザ屋「バードランド」、地元名物三國バーガーが食べられる「三國湊座」などもオススメで、宿で食事の提供が無くとも何も不便はありません。

まとめ

2階のベッドルーム

華美な装飾や過度なサービスはありませんが、「詰所三國」には暮らすために必要な設備が十分に取り揃えられています。今回は1泊のみの滞在でしたが、これだけ充実していれば何泊でも出来てしまいそうだと感じました。
地域と密接に関わったこの宿は、三國の町を知ってもらうのに最適。是非宿を通して三國の町を体感してみてはいかがでしょうか。(2021年12月訪問)