大分県別府市と言えば言わずと知れた温泉地。特に鉄輪温泉は町の至る所からもくもくと温泉の湯気が噴き出す「地獄」の名所です。
以前この鉄輪温泉で「地獄蒸し」を利用した料理を提供するイタリアンに訪れ、すっかり魅了されてしまった私。今回は同じく「地獄」を使用した薬膳料理がいただけるというお店「蒸士茶楼(むしちゃろう)」さんにお邪魔しました。
日本人のほとんどは薬膳料理に馴染みが無いと思いますが、そもそも薬膳料理とは漢方の教えに基づいた健康食のこと。不眠や冷え性、食欲不振などなど症状や季節に応じて食材を変え、「未病」を改善する手助けをします。
「食は生命の基」という考えのもと、「蒸士茶楼」では本格的な薬膳料理をお手頃価格で提供しています。今回私はランチに伺って、3,000円のコースを注文しました。
ここの料理の最大の特徴は、「50℃洗い」と「低温スチーム」。名前の通りですが、「蒸士茶楼」では洗える食材はまず50℃で洗うことを徹底していて、食材の旨味や栄養素を最大限に高めてから調理に取り掛かるのだとか。
また「低温スチーム」は地獄の自然の蒸気を利用しているため美容成分やミネラルもたっぷり。野菜もお肉も余計な油は使わないよう「焼く」のではなく「蒸す」という調理方法にこだわっています。蒸気工学に基づいたオリジナルの釜は、食材にまんべんなく蒸気を当てることが出来るという優れもの。まさにここでしか体験できない味を作り上げています。
まず出てきたのは温かい柚子のジュース。50℃で洗った後低温で蒸して、種も皮も実も全部使ったこだわりの一品です。皮を使っているため苦みが強いですが、なんだか身体に良さそうな味。良薬は口に苦しってやつかもしれません。
続いて出てきたのは前菜の盛り合わせ。小鹿田焼きのお皿に載せられた前菜は、エビ、もずく、トマト、おから等々豊富なラインナップ。食材に応じて何℃で何分蒸すか変えているそうで、手間暇かかっています。中華料理のような要素がありながらまたちょっと違った風味で面白かったです。
またお店1番の人気メニューである「チーコー料理」は火や水を一切使わず、地獄の蒸気だけで作るスープ料理。薬膳の入った器にミネラルたっぷりのスープを注いでもらいます。脂っこいイメージがある中華ですが、これは非常にさっぱりとしていて身体に染み渡るような味わいです。
またその後は蒸籠に入った蒸し餃子やソーキ、メインの魚まで出てきてなかなかの量です。ですがこれだけ食べてもお腹がもたれた感じがしないのは、健康に気を遣った優しい味わいと調理法だからこそかもしれません。
個人的にはデザートでいただいたふかし芋が特に気に入りました。大分県産のさつまいも「甘太くん」はねっとりとしたスイーツのような甘さが特徴的で、焼き芋にすると糖度が40度ほどになります。それを自然の蒸気で蒸したデザートはコースの締めに相応しいお味でした。
しかし一方で「蒸す」という調理法にこだわっているために食感が単調で、食べている時のワクワク感があまり感じられないのが残念な点でした。個人的に魚はやはり皮面をパリッと焼いているのが好きなので、蒸して柔らかくなった食感というのがどうにも慣れませんでした。
とは言ってもグルメ続きでもたれていた胃にはちょうどいい休息になったと思いますし、何よりシェフも奥さんも非常に感じの良い方で、気持ちよく食事をとることが出来ました。今回初めてまともに薬膳料理というものをいただきましたが、「身体に優しいこと」にこだわり、ここまで手間暇をかけた料理がこの価格で食べられるのはかなりリーズナブルなのではないかと感じました。(2022年1月訪問)
レストラン名 | 蒸士茶楼 |
ジャンル | 薬膳料理 |
住所 | 大分県別府市鉄輪風呂本5 |
TEL | 0977-85-7775 |
予算 | ランチ¥3,000~ ディナー¥4,500~ |
予約の可否 | 予約可 |
お店HP | http://64cyaro.com/ |