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福岡市の薬院にある「le sud ル・シュッド」さん。その名前が南を意味するのでシェフは南仏がお好きなのかなと行く前から想像していました。
2月のとある平日のディナーにお伺いしました。現在最大4テーブルのみの営業のところ、その夜はたまたま私たちの1テーブルだけで貸切となりました。7皿8000円のディナーコースは、博多の都心にしては良心的な料金設定です。どんな料理が出たのでしょう?
美味しい料理と共にお聞きした興味深いシェフと奥様のお話はどういうものだったのでしょうか?
シェフが南仏ニームで運命の出会いをした女性とは?
店名であるle sudはフランス語で南の意味です。実際聞いてみると、やっぱりもともと南仏が好きだったというシェフの手塚卓良氏。日本のお店で研鑽を積み、プロヴァンスのお店で4年ほど修業して帰国。日本では福岡の名店「レザンドール」でシェフを8年勤めた後2020年3月3日、このお店をオープンされたのです。一緒にお店をオープンしたのが2007年に南仏の小さな町ニームで運命の出会いをしたという奥様の昌美さんです。
コミュニケーション能力抜群の昌美さんとの会話は、我々だけで貸し切りの静かなディナータイムを楽しく盛り上げてくれました。彼女はソムリエ兼パン焼き職人でもあり、このお店に欠かせぬ存在です。パンに関してはパン屋さんを開いているほどの名人です。そしてもちろんシェフにとっても唯一無二の大切な存在。お店を開くときにはコンセプトから何から何まで2人でとことん相談して決めて出来上がったというのですから。
そんなお二人が出会った南仏のニームの地は思い出の場所。お店にもラベンダー畑のポートレートが飾られていました。そして置いてあった小さなメニューの紙にもその美しいイラストがプリントされていました。
スペシャリテは絶品のスープ・ドゥ・ポワソン
このお店の料理の大きな特徴は、肉を出さないで野菜と魚介だけのメニューだということです。メニューには食材のみ記載されています。左に魚介、右に野菜の名前が並びます。
ヒラメとカリフラワーのムースにパール柑を添えたアミューズ。そしてブリの厚みたっぷりのカルパッチョに紫大根などの野菜添えの冷前菜がでたあと、印象的な料理の1皿目が登場です。
それは柔らかい鮑のバターソテーとホワイトアスパラに優しくまろやかな菊芋のソースを添えてた一皿です。春先取りの気分。
これまた春の気分に浸れたホタルイカのソテーの後、シェフのスペシャリテで、私が一番気に入った一品「スープ・ドゥ・ポワソン」が出ました。南仏などでよくある魚介のスープはどろっとしている印象でしたが、ここのスープは全く異なっていてサラッとした液状です。メインの前の口直しにもなるとシェフ。
このお店の特徴はお肉が出ないこと
どろッと濃厚でないのが日本人の口に合うのです。聞くと平戸から届いた魚屋オニカサゴ、トマト、サフラン、青菜などいろいろ入っていますが甲殻類のビスクではありません。お皿もスペシャリテのスープに合わせた美濃焼のものです。
メインの魚料理は玄界灘の鰆。オーブンでなんと5~6回も焼き、最後に皮面をパリっと仕上げています。蕪のソースがぴったりで、付け合わせの葉玉葱も絶品と言える味わいでした。
肉料理が出ないのは実は私は大歓迎です。コースでアミューズから前菜、魚料理と続くと、肉料理の前に満腹になってしまいます。魚で終われば、デザートまで美味しくいただけて嬉しいのです。
コースに合わせて出されたパンは昌美さんの天然酵母パンで、体に優しい滋味深い味わいです。
デザートも手抜きなく、あまおうのソルベ、苺のアイスパウダー、カカオのチュイールを添えてあります。甘みもちょうどよく、さっぱりしてもたれない好みのデザートでした。
メニュー構成の爽やかさが南仏のイメージ通りで、とても素敵で満足のいくディナータイムとなりました。
レストラン名(ジャンル) | le sud(ル・シュッド) フレンチ(フランス料理) |
住所 | 福岡市中央区薬院1-6-25 ルネスキューブ1階 |
TEL | 092-791-4450 |
予算 | 魚介と野菜のおまかせコース ランチ 4,000円(税込) ディナー 8,640円(税・サ込) |
座席/個室有無 | 14席 個室なし |
予約の可否 | 完全予約制 |
公式サイト | https://www.lesud2020.com/ |
まとめ
よりによってコロナ禍が始まった2020年3月にオープンされたこのお店。大変な中頑張ってきたというシェフとマダムですが、お二人が一緒に築き上げてきた料理の素晴らしさは訪れる人すべてを感動させてくれるのです。ここまで生き残って来られた理由がよくわかりました。
そしてこれからもっともっと人気が出てくるはずのお店だと確信しました。
(2020年2月訪問)