一度行ってみたい宿と何度も繰り返し行きたい宿の違いは何だろう。宿は本来、日頃のストレスや旅の疲れを癒し寛ぐためのものだと思いますが、宿マニアの自分にとっては旅行の最大の目的は宿であり勉強対象なので新しい所へ行くと館内を歩き回り学ぶためのアンテナを張り巡らし何かの脳内物質が高まるのか下手をすると夜も眠れないという状態になってしまいます。そんな私が本当に寛ぐことのできる数少ない宿が四万温泉にある「四万温泉 豊島屋」です。渓流沿いに広がる四万温泉は、四万の病を治す薬効があると言われ、一口に四万温泉と言っても40を超える源泉から成り立っている温泉で場所によって泉質が違います。この豊島屋の地下から湧く無色透明の温泉は、特に泉質が素晴らしく行くたびに何とか自宅にひけないものかと思ってしまうほど。食事処「篁」でいただく「里山懐石」とよばれる食事も、1人ずつ炊く白米や地元の食材を活かした料理など滋味深く飽きがきません。
四半世紀近く通う中で少しずつ改装されていて、以前のことを懐かしく思い出したり、毎回どこか変わったところがないかを探したりするのも滞在の楽しみになっています。
また、行くたびに覚えていてくれるご主人や女将さん、先代の頃から永く働いている従業員の方もいて居心地が良く、リピーターのお客さまが多いのがとてもよくわかります。
お名前がわからなかったので長く布団敷きのおじさん(本当は何でも出来る人なのに)と呼んでいたお世話になった従業員の方が今年亡くなられたと伺い、本当に長い時が経ったと思いました。私はこの方のことが大好きでした。地元に根ざし、いつも楽しそうに働いていて、定年後も忙しい日には宿に手伝いに来てくれていたおかげで毎回お会いすることが出来ました。話をしたり、地元のことを教わったり、一緒にお祭りを見たりとたくさんの思い出があります。
東京駅から直行のバスが出ているのも魅力で官民一体の「旅して日本プロジェクト」主催の温泉総選挙では「女子旅部門」2年連続で1位を獲得しています。元々景観などに配慮されていて派手な看板などのない街並みや良質な温泉で人気のあった四万温泉ですが、最近以前より客層が若返っていて街に活気があるように感じます。お洒落なカフェやイタリアン、フレンチなども出来ていて今後どうなっていくのかが非常に楽しみなエリアです。
実は「四万温泉 豊島屋」は、最初に伺った時から今に至るまでずっと日帰り入浴の受付をしていません。新鮮な一番風呂を宿泊しているお客さまに入ってもらいたいのだそうです。
何度もお風呂に浸かって、のんびりして、美味しく食べて、安心して眠る。温泉との相性もあるのかおかげさまで、一泊だけでも帰るときには必ず、疲れが取れて元気になっていることを実感できる本当にありがたい宿なのです。
旅館名 | 四万温泉 豊島屋 |
住所 | 群馬県吾妻郡中之条四万3887 |
TEL | 0279-64-2134 |
お風呂 | 大浴場、露天風呂、家族風呂(貸し切り) |
予算 | 12,800円~ |
露天風呂付客室 | あり |