広島でナンバー1の日本料理店として誰もが認める名店「季節料理 なかしま」。名店の醸し出す空気が間違いなくこの店には流れていました。それはお店に入った瞬間に感じます。明るく清潔感に満ちた店内でまず目に飛び込んでくるのが美しい欄間。そしてその下に並ぶお皿の数々です。ご主人の中島徹夫氏と女将さんの出迎えを受け、カウンター席に座ると、こちらの背筋もピンと伸びる心地よい緊張感です。
夜のみの営業で、それも18:00からと19:00からの時差スタート。いっせいにカウンターと後ろのテーブルの全員が一緒に食事を開始するやりかたです。私が行った日は隣の1組だけ先に始めており、残り12名は全員19:00スタートでした。ご主人は一人で12名分の料理を作っていくのです。女将さんとその他の女性スタッフは手伝いつつ、細かいサービスを受け持っています。皆の「はーい」という明るい挨拶の声とテキパキ動くチームワークの良さは見ていて気持ちがいいものです。
すべての料理が秒刻みで計られているようにベストタイミングで、焼きたて揚げたてで提供されます。スタッフの誰一人もその瞬間を見逃していないかのよう。だから私たちも熱々を最高の状態で頂きます。しゃべるのに夢中な人など一人もおらず、皆が真剣勝負のように、食べることに最大の注意を払っています。
しかもここの料理はすべて素晴らしいお皿やお椀に入れて出されます。例えばお造りは人間国宝の方の作品である有田焼白磁に、名物の蓮根まんじゅうは江戸末期の古伊万里に。味の方も絶品ですが、同時に器も愛でるのでその喜びは2倍です。
炭火焼きで焼き上がったところの熱々ののど黒は、脂が乗っていてカリカリで最高の出来ですが、お皿の方は100年前の輪島塗の沈金の作品です。食べ終わって現れるお皿の柄にまた感動なのです。
ご主人がお料理に集中できるのは、ほぼすべてはコミュニケーション能力抜群で明るい女将さんの存在によるものでしょう。料理や器の説明をはじめ、その接客ぶりは人の心を惹きつけます。指導がいいのでしょう。女性スタッフも皆さんしっかりしていて感じよく丁寧です。リピーターも多く、予約が取りにくい店というのも納得です。味の良さだけではないのです。
かつて出された広島版ミシュランで唯一日本料理で3つ星を獲得したお店だけのことはあります。隣の席のカップルは1時間早く食べ終わって帰り際、次の予約を取っていました。広島じゃなく東京にあったなら、私も次の予約を取って帰りたいものだと羨ましい気持ちでした。
(2020年9月訪問)
レストラン名 | 季節料理 なかしま |
ジャンル | 日本料理 |
住所 | 広島市中区東白島町10-4 TOHAKUビル |
TEL | 082-225-3977 |
予算 | コース料理 15000円(税サ別) *夜のみの営業 |
座席 | 14席(うちカウンター8席) |
個室 | なし |
予約の可否 | 完全予約制 |