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JR広島駅から広電で20分ほど。八丁堀駅周辺は中四国地方最大の繁華街です。人で賑わう雑居ビルの5階にひっそりとあるフレンチレストランこそが、今回ご紹介する「中土(なかど)」です。まだ出来て2年ほどのお店ですが、ゴ・エ・ミヨで3トックを獲得されている人気店です。
いま広島で大注目のフレンチレストラン
「中土」の料理をひと言で表すなら「独創的」「革新的」という言葉が相応しいでしょう。今でこそフレンチの第一線で活躍されているシェフの中土征爾氏ですが、元々は和食やイタリアンの料理人として厨房に立っていた方。多彩な経歴を持つ方だからこそ「フレンチ」という枠にとらわれず、ユニークな料理を創りあげられるのでしょう。
その証拠に広島名物の「イカそうめん」や「美酒鍋」からヒントを得たという料理が登場したり。シェフはジャンルを超えてあらゆる方面からインスピレーションを受けているようです。
席はカウンターが5~6席、個室が2つありますが、せっかくならシェフの手捌きが見られるカウンター席がオススメです。アシスタントさんは2名ほどいるようですが料理はほとんどシェフが担当しており、目の前で手際よく料理が出来上がっていく様子は見ていてワクワクさせられます。
創作性溢れる料理の数々
「中土」で出てくる料理はそのどれもがひと手間もふた手間も掛けられたオリジナリティに富んだ料理です。液体窒素を用いたりアルギン酸カプセルを使ったり…まるで化学実験のようなモダンガストロノミーの調理方法で、「中土」でしか味わえない料理を生み出しているのです。
まず出てきたのはなにやらゼリー状の膜に覆われたアミューズ。御猪口に載っていて、やはり見た目からは味が想像できません。実はこれ、廿日市のアサリを使用したクラムチャウダー。噛むと中のスープがじゅわっと弾けて、一気に風味が広がります。アサリには糖の吸収を助ける作用があるそうで、シェフはコースの初めにこのような料理を出してくれたのです。そういった小さな気遣いからシェフの優しさが伝わります。
続いて出てきたのは40種類もの野菜を使用したサラダ。マイクロベビーリーフやロマネスコ、絹さや、芽キャベツなど、それぞれに適した調理法で一つずつ丁寧に仕上げられています。見た目の華やかさは勿論のこと、添えられたソースやオリーブオイルのパウダーなど味のバランスもしっかり考えられています。
サラダの後はパスタ…ではなく、ホワイトアスパラを使った温前菜。麵のように縦に割かれた細長いホワイトアスパラは、オランデーズソースと自家製のカラスミと合わせて。シェフが普段仲良くしているという和食店の料理を参考にしたメニューらしく、紫蘇の花が散りばめられていたり、確かに和の要素を感じます。実はここに訪れる前日にたまたまその和食店に訪れてその料理を食べていた私。自家製麺にたっぷりのカラスミをかけているのですが、参考にしたと言っても似ているのはカラスミくらい。あとは全てフレンチナイズされていて、全く別の料理です。アスパラの甘みとカラスミの塩味が相性抜群で、美味しくいただくことができました。
見た目からはまったく味が想像できないユニークな料理
どの料理も個性豊かですが、私が特に面白いと感じたのは、アスパラの後に出てきた魚を使った2品です。
1品目は瀬戸内のカワハギを使った料理。とは言っても何やら白いパウダー状のものが上から掛けられていて、ぱっと見の「カワハギ感」は一切ありません。脱水乾燥して旨味を凝縮させたカワハギは、発酵トマトと柑橘のソースで。上の白いパウダーは辛味大根を液体窒素で冷たいパウダーにしたもので、新感覚の「お造り」といった感じでしょうか。シェフの発想力と料理センスには驚かされます。
2品目は同じく瀬戸内で獲れた鯖。こちらはマリネしてリンゴのピクルスやリコッタチーズ、おからと合わせています。しかし出てきたのは謎の緑の物体。鯖もリンゴも見当たりません。実はこちら「広島菜巻き」という広島県の名物をヒントにしたそうで、広島菜で具材を巻き込み、上から更に広島菜のパウダーをまぶしてあります。ひとくち食べてみると、まずシャキッとリンゴの食感が伝わり、その甘酸っぱさと旨味たっぷりの鯖、そしてリコッタチーズの滑らかさが最高のマリアージュを生んでいます。
スペシャリテはイカそうめん!?
またスペシャリテのイカとトリュフを使った料理も美味しかったです。こちらは「イカそうめん」からインスピレーションを受けた一皿で、細く切ったイカを白ワインのソースやトリュフのピューレでいただきます。上から卵黄やチーズトリュフをトッピングしていて、カルボナーラのようでもありますが、イカの食感や甘さが感じられて美味。スペシャリテに相応しい料理でした。
また広島県に来たら欠かせない牡蠣もピスタチオやパクチーで味付けるなど非常にユニーク。付け合わせには何やら見たことの無い不思議な食材が…。キウイを小さくしたような見た目ですが、中は魚卵のようにびっしりと粒々が詰まっています。こちらはオーストラリアが原産のフィンガーライムというフルーツ。ライムと呼ばれるだけあって爽やかな酸味が特徴で、「キャビアライム」という別名もあります。今回初めて見る食材でしたが、牡蠣の嫌な香りを消してくれて、今後色んなお店で見かけることになりそうだなと感じました。
食材の組み合わせも面白いですが、まだあまり知られていない食材を積極的に取り入れて、新しい料理を創り上げるという姿勢が素晴らしいと感じました。
レストラン名(ジャンル) | 中土(フレンチ) |
住所 | 広島県広島市中区堀川町4-18 胡子GRIT 5F |
TEL | 080-5919-8148 |
予算 | ランチ¥9,900~ ディナー¥16,500~ |
座席/個室有無 | 14席/個室あり |
予約の可否 | 完全予約制 |
公式サイト | https://nakado-s.com/ |
まとめ
既に予約が取りづらくなっているお店ではありますが、今後ミシュランで星を獲得すればますます注目が集まり予約困難な人気店になるでしょう。その前にこうして訪問できたのは非常にラッキーでした。これからも中土シェフの活躍に目が離せません。(2022年2月訪問)