「Cueillette(キュイエット)」
フランス語で「果物の収穫」を意味する言葉。山梨県と言えばブドウや桃の収穫量が全国で1位という果物の楽園です。そして今回ご紹介するフレンチレストラン「キュイエット」は、山梨県の中でもとりわけ日照時間の長い町の一つ、韮崎市穂坂町にあります。寒暖差があり、上質なフルーツが育つこの場所。初夏には桜桃、秋にはブドウやリンゴが実り、食卓を彩ります。
そんな田舎町のブドウ畑の中にある「キュイエット」は、本格的なフレンチを味わえると長年多くの人から愛されているレストランなのです。
このお店の特徴はなんと言っても地産地消にこだわっている点にあります。店の敷地内でシェフ山田真治氏のご両親が無農薬野菜や低農薬のブドウを栽培しているようで、彼の作る料理にはこうした採れたての野菜が並ぶのです。また自家栽培以外でも、極力韮崎市内のものを使うようにしているそうで、地元の味が楽しめるのが魅力でしょう。
さて、私がこのレストランを訪れたのは7月のはじめ。ちょうど桃が旬を迎える時期です。季節に応じてガラリとメニューが変わるキュイエットの料理ですが、今回は5,000円のランチコースを注文。プリフィックス制でメインとデザートは好きなものを選べるのですが、せっかくなのでプラス2,200円でメインを甲州ビーフに変更しました。
1品目はこの時期限定のお店の看板メニュー、桃のスープです。丸一日かけて作る冷製スープの中にはよく熟れた桃と、甘みの少ないカカオのパイが添えられます。塩味はほとんどなく、スープというよりはデザートに近い一皿でしたが、桃をスープにしようという発想が面白く、爽やかな風味が特徴的。
また前菜のマスを使った料理は桜のチップで燻製に。合わせるのは黄色のパプリカソースと、この地域で栽培されているというスモモ。先ほどの桃とは違って程よい酸味が美味しく、マスとの相性も抜群です。
そして私が特に気に入ったのがゴールドラッシュという山梨県産のトウモロコシを使ったエスプーマ。ごちゃごちゃと余計なものを入れずにシンプルにトウモロコシの甘みを生かしたこの料理。ふわふわとして冷たいエスプーマの上に揚げたトウモロコシと、イチジクの入ったトーストがのせられ、食感や風味、温度にいたるまで違いを楽しむことが出来ます。
一方メインの甲州ビーフはマデラ酒で柔らかく煮込んだ料理。フォークで簡単に裂けてしまうほど柔らかく、付け合わせには敷地内で収穫された無農薬野菜が添えられます。
これほどの料理を味わえるというだけあって、月曜日のお昼にもかかわらずお店はほぼ満席。調理スタッフが少ないのかサービスの提供もぽんぽんとスムーズにはいかず、ゆっくり食べていたら2時間半はかかっていたかもしれません。しかしこんな山梨の田舎町とは思えないほど料理が本格的で、シェフの腕は本物だなと実感しました。
残念ながら梅雨の時期で空はずっと白い雲に覆われていましたが、本来ならお店の窓から美しい富士山の姿を見ることが出来るのだとか。「是非今度は冬にいらしてください。雲も少なくて、ブドウ畑と富士山が綺麗に見えるので」と店員さん。今度はゆっくりと時間をとって、またガラリと変わったキュイエットの料理を味わいに訪れたいものです。(2021年7月訪問)
レストラン名 | キュイエット (La Cueillette) |
ジャンル | フレンチ/フランス料理 |
住所 | 山梨県韮崎市穂坂町三ツ澤1129 |
TEL | 0551-23-1650 |
予算 | ランチ¥5,000~ ディナー¥8,000~ |
座席 | 38席 |
個室 | 有り |
予約の可否 | 予約可 |