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国の重要伝統的建造物群保存地区にも指定されている愛媛県内子町。江戸中期以降特に火事に見舞われることもなく、今でも当時の姿を保っています。そんな歴史的にも価値のある内子町に、2020年リニューアルオープンした「オーベルジュ内子」という宿があります。
今回は実際に泊まってみて、一体そこがどのような宿なのかご紹介していきたいと思います。
歴史の町・内子
江戸時代から明治時代にかけて和紙や和ろうそくで栄えた内子町には、京都のような古き良き建物が多く残ります。特に和ろうそくは当時海外でも評価されるほど質が高いことで知られていたそうで、全盛期にはこの小さな町で全国生産の30%を担っていたというから驚かされます。
「ろうそくってそんなに差が出るものなの?」と思われるかもしれませんが、内子の和ろうそくは煤(すす)が少なく、火が消えにくい。その上蝋も垂れないという優れものなのです。今でも職人さんが手作りしている様子が見られるので、内子に訪れた際には見学してみるのがオススメです。
また大正天皇の即位を祝い建てられたという内子町のシンボル、内子座も外してはいけません。かつては歌舞伎や落語などが演じられたこの舞台は、今日でも文楽などの劇場として活躍しています。公演が無い時には地下の舞台装置を見学することも出来るので、内子観光の目玉的存在です。
5室だけの温泉オーベルジュ
そんな内子の中心地から少し外れた丘の上、町を見渡せる絶好のロケーションに建つのが「オーベルジュ内子」です。自然に囲まれた5室だけの小ぢんまりとした宿で、館内には温泉施設まであります。
大浴場は町営のため地元の人も入りに来るのですが、私が訪れた9月初めはコロナの影響で日帰り客の入浴は中止。ゲストのみ可ということでしたが、その日のゲストは私たちだけだったので完全に貸切状態でした。
現在の「オーベルジュ内子」はオーナーが内子町で、オペレーションを町の企業が担当しています。昨年の2020年までは別の企業が運営しており、もっと和の雰囲気が強いオーベルジュだったようですが、内装を大幅にリノベーション。新しいオーベルジュとして生まれ変わりました。
今回泊まったのは「やまざくら」という名前の77㎡のお部屋。レセプションから敷地内を少し歩いて行くとヴィラタイプのお部屋が並んでおり、その1番手前のお部屋です。部屋は和モダンな家具を中心に上手くまとまっている印象で、バスルームが広め。お部屋でも温泉を楽しむことができます。
ただ、窓ガラスが大きいので日中は陽がよく入り明るいのですが、夜になると照明の少なさを感じてしまいました。また自然に囲まれているからしょうがないとは言え、夜になると灯りを求めて窓に虫がべったり。出来ればご飯の時にターンダウンしてすだれを降ろすなどのサービスがあれば良かったでしょう。
一方大浴場はと言うと、普段地元の人も入りに来るというだけあってかなり広々としています。大浴場や露天風呂がある他に、奥にはサウナや水風呂も。今回は貸切状態だったので悠々と使えましたが、普段はどれほど混むのか…気になります。
地産地消 内子の食材を中心に
オーベルジュに泊まる楽しみの一つが、やはり食事でしょう。ここ「オーベルジュ内子」では内子の食材をふんだんに使った贅沢なフランス料理が味わえます。シェフはこの宿がリニューアルオープンしたのと同時に新しく来られた方。中でも薪焼きにこだわっているようで、薪焼きならではのジューシーで深い味わいが堪りません。想像以上にレベルの高い料理が多く、ゴ・エ・ミヨで掲載されていると言われても納得してしまう気がします。
特に美味しかったのが薪で焼いた鴨肉です。普通にガスで焼くのとは違い、食材の水分を閉じ込めて香り高く焼き上げることが出来る薪焼き。旨味を逃がさないようじっくりと焼き上げられた鴨肉に合わせるのはマンゴーのソースとベリーのソース。どちらも鴨や薪の香りを邪魔しないような味付けで相性が良かったです。
また内子野菜をバーニャカウダで食べさせるスタイルもユニークで良かったです。お皿に美しく盛られた野菜は計20種。普通なら途中で飽きてしまいそうなものですが、バーニャカウダのソースをつけると無限に食べられてしまうから不思議です。野菜自体もみずみずしく新鮮さが伝わってきました。
フォアグラは大洲の鰻やサフランの焼きリゾットと合わせて。まるで焼きおにぎりのようにカリッと香ばしい焼きリゾットとフォアグラは醬油ベースのソースでいただきます。サフランやミックススパイスなどどこかエスニックな風味が意外にもフォアグラとマッチしていました。
オーベルジュと名乗っていても料理が大して美味しくない宿はいくつもありますが、ここはかなりハイレベルでした。朝食も満足の行くラインナップで、小さな土鍋で出てきたカレーが美味しかったです。更に「カレーと合わせてどうぞ」と出されたのが生卵。しかも3種類の中から選べる方式で、牛すじの甘辛いカレーに入れるとまろやかになって最高でした。
泊まってみて…
今回実際に泊まってみて思ったのは、想像よりずっと良い宿であったということです。ただもちろん改善点もあります。とても充実していたディナーでしたが、レストラン内の明かりが少なかったことが気になりました。料理の写真を撮るにしてもスマホのライトを当ててなんとか撮れるレベルだったので、もっと照明を増やした方が良いでしょう。
また今回は外部からの入浴が禁じられていたので問題ありませんでしたが、高級感を演出したいのならばそういったシステムも廃止した方がいいです。とは言っても先述した通り大浴場は町営の施設らしいので、どうしてもその制度を残す場合、宿泊者がいない10時~15時に入浴時間を制限するなどしてみてはどうかと思いました。
データ
宿名 | オーベルジュ内子 |
住所 | 喜多郡内子町五十崎乙485番地2 龍王公園内 |
電話番号 | 0893-44-6565 |
予算 | 2名1室利用時、1人当たり1泊¥33,000~(2食付き) |
お風呂 | 大浴場、露天風呂有り |
露天風呂付き客室 | 半露天付き |
公式サイト | https://r.goope.jp/auberge |
予約 | 予約可 予約が取り難いので早めに予約を |
まとめ
とは言え、食事のレベルの高さや雰囲気の良いお部屋、そして行き届いたサービスは十分お値段に見合ったものだと思います。内子には古民家を再利用した宿が多いですが、温泉に入れてここまでグルメを楽しめる宿は他にありません。もし内子での滞在を考えているなら、「オーベルジュ内子」を宿の候補として選んでみてはいかがでしょうか。(2021年9月訪問)