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フロント前の廊下。情緒があります。
古民家は、その土地の歴史や文化を伝えてくれる貴重な存在。いま日本全国に古民家を再利用したレストランやカフェ、宿が増えていますが、岐阜県美濃市にもそんな古民家宿が存在します。
和紙作りで栄えた美濃の町に溶け込むようにして建つ「NIPPONIA美濃商家町」という古民家ホテルは、古き良き文化を残す特別な宿なのです。
美濃の昔ながらの町並み

古く趣のある建物が並ぶ美濃の町
岐阜県中部にある美濃市は、1300年もの歴史がある美濃和紙の産地です。現在でもその名残は多く見られ、町の至る所に設置されたデザイン性豊かな和紙の灯篭が夜になると光を灯し、美濃の町を明るく照らします。
国の伝統的建造物群保存地区に指定されている町並みは、今も江戸時代から明治時代にかけて造られた商家がいくつもあり、昔懐かしい風景が広がっています。

この建物は「うだつ」が上がっています
実は「うだつが上がる/上がらない」という言葉が生まれたのもこの地。そもそも「うだつ」とは、屋根の両端を一段高くして隣家からの延焼を防ぐために造られた防火壁のこと。裕福な家庭しかこの「うだつ」をつけることが出来なかったので、“「うだつ」もつけられないような境遇にある“=「出世できない、金銭に恵まれない」という意味として使われるようになったのだとか。
しかし美濃の町を見渡してみると、その「うだつ」がある建物が多く見られます。それはつまりそれだけこの美濃という町が和紙産業で成功していた証なのです。
庭園のある「満月」のお部屋

引き出しなどもレトロなデザインが素敵
NIPPONIAは全国各地にありますが、どれも共通して言えるのは「その土地の歴史や文化を伝えてくれる古民家を、ホテルやレストランとしてリノベーションし、再生している」ことにあります。
「NIPPONIA美濃商家町」は、元々和紙の原料を取り扱っていた商人の別宅を改装し、宿泊施設にしたもの。母屋に3部屋、蔵を改装して3部屋、計6室のお部屋はそれぞれ全く異なる造りとインテリアです。

夜になるとこの廊下がめちゃくちゃ寒い(笑)
私の泊まった「満月」は97.33㎡もある定員6名の一番広いお部屋です。居間には大きな床の間、奥には板張りのベッドルーム、玄関脇には茶室もある格式高さを感じます。茶人が愛する趣ある庭園もかなりの広さ。まるで和紙の豪商のお宅に招かれたような気分にさせられます。
また和紙の町だけあって宿の中には和紙の専門店「Washi-nary ワシナリー」があったり、照明やティッシュボックスが和紙になっていたりとこの地域らしさが全面に感じられます。
お風呂も温泉ではありませんが庭に面したヒノキ風呂が気持ちよく、十分くつろぐことが出来ました。
NIPPONIA美濃の食事

素朴な朝ごはん
宿に泊まる楽しみの一つに「食事」がありますが、「NIPPONIA美濃商家町」では夕食の提供を一切行っていません。「うだつの町並みに明かりが灯るころに、町の美味しいお店で夕食をお楽しみください」という言葉と一緒に案内されたのが近辺のお勧めのレストラン。
地元のお店を紹介するやり方は、地元の飲食店には歓迎されますが正直これと言っていいお店があるわけでもないので、食事の楽しみが無いのが残念な点でした。

食事は居間に運ばれてきます
朝食だって季節の食材を生かした昔ながらの素朴なラインナップ。敢えてシンプルな料理を提供していて、長良川の天然鮎の干物や旬の野菜の和え物、煮物、土鍋で炊いたご飯、漬物など身体に優しい献立です。母屋の台所で作って運んでくれるのですが、あまり印象に残らない質素なものでした。
NIPPONIAの宿泊料金は決して安くありません。わざわざこの地に来て泊まるような人は客層的にもっと本格的な食事を好みます。夕食も朝食もちゃんとしたものを出す宿に変えた方がリピーターは増えるのではないかと感じました。
データ

ゆったりとしたヒノキ風呂が嬉しい
宿名 | NIPPONIA美濃商家町 |
住所 | 岐阜県美濃市本住町1912-1 |
電話番号 | 0575-29-6611 |
お風呂 | 部屋風呂のみ |
露天風呂付き客室 | 無し |
予算 | 2名1室利用の場合、1人当たり1泊¥13,387~ |
宿HP | https://nipponia-mino.jp/ |
まとめ

田中千智さんの作品がフロントに展示されていました
同じNIPPONIAでも運営会社はいくつにも分かれています。「篠山城下町ホテルNIPPONIA」や「NIPPONIA HOTEL大洲城下町」などを運営する「VMG HOTEL」は地元企業が運営会社で、夕食をつけるのがポリシーです。宿の中にレストランがあり、夕食の提供を重視しています。私としてはちゃんとした料理人を雇い、その地方独自の夕食を提供するシステムのほうが嬉しいです。
ただそうは言っても、最高の美濃和紙でしつらえた1棟貸しの客室と、町に溶け込むような建物は風情があってよかったですし、美濃でのホテル選びに悩んでいるなら是非とも勧めたい宿ではあります。(2021年10月訪問)