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スキンヘッドに真っ赤な蝶ネクタイ。これからコントでも始めるのかというような出で立ちで現れたのは、寿司業界で知らない人はいない「照寿司」の大将・渡邉貴義氏です。
元々町の小さなお寿司屋さんだったという「照寿司」。それが現在のような人気に至ったのは、大将のその派手なパフォーマンスにあるでしょう。通常、お寿司屋さんの名前で画像検索をすると寿司の写真がヒットするものですが、「照寿司」というワードでヒットするのは決めポーズをした大将の写真ばかり!
ちょうど私が訪れる1週間前にもTBS系列の番組「新・情報7daysニュースキャスター」で紹介されていましたが、決めポーズでまさに人生が変わってしまった方なのです。
世界一有名なお寿司屋さん?
「自分は世界一有名な寿司屋だ」
ひょっとすると傲慢にも聞こえてしまう大将のこの言葉。しかし「照寿司」の活躍を知ればその言葉がブラフでは無いということに気づきます。今や「照寿司」の人気は日本国内だけに収まりません。海外でも活躍の場を広げる大将は、2019年マカオ、北京、ストックホルム、バンコク、ニューヨークなど5つの国と地域で寿司を握り、その腕前を披露したのだとか。その活躍はニューヨークタイムズでも大々的に取り上げられ、「世界の照寿司」という言葉が相応しい人気を見せています。
最高品質のネタにこだわる「照寿司」では、昼夜共に38,500円のコース1本で勝負。東京でもここまで高いお店はそうありませんが、戸畑という小さな町に遥々訪れる人が後を絶たないのです。
もはやエンターテインメント!「寿司オペラ」とは?
目の前で大きなブロック状のマグロを捌いてみせたり、クエを丸ごと抱えてみせたり、日本刀のように立派な包丁を持ってポーズを決めてみたり。カウンター内で行われる大将のパフォーマンスは、寿司屋の域を軽く超えています。
なんとなく「回らないお寿司」というと大将が黙々と寿司を握り、客も静かにその味を楽しむものを想像していましたが、「照寿司」では常に笑いが絶えません。自らのスタイルを「寿司オペラ」と大将は称していましたが、まさに劇場型エンターテインメントと言えるでしょう。彼にとってはパフォーマンスもすべてひっくるめて「照寿司」のお寿司。お客さんを楽しませる手段の一つなのです。
寿司屋と思えない程の前菜の量にびっくり!
厳選された高級食材を使用し、ボリューム満点のお寿司を提供しているこのお店。「お客さんにお腹いっぱいになってもらうこと」を信条としているそうで、お寿司の前に何皿も前菜が登場します。食の細い人はもしかしたらお寿司にたどり着く前にギブアップしてしまうのでは…と思うほどで、煮ダコや黒アワビ、白子、トラフグの唐揚げなどなどバリエーションも様々です。
特に私が気に入ったのが1番初めに出てきた海苔巻き。シャリは無く、塩釜のマグロとムラサキウニ、そして一緒にイタリア産のキャビアをたっぷり包みます。目立ちたがり屋な側面がピックアップされている大将ですが、目利きの腕は確か。マグロは脂乗りが良く、ウニもクセが無い甘さで美味しかったです。
シャリがユニークな「照寿司」の握り
計10品以上の料理を味わったあと、出てきたのは待ちに待ったお寿司。「照寿司」のシャリは酒粕酢を使った独特の強い味わいで、人によっては好き嫌いが分かれるかもしれません。私は幾分かシャリのインパクトが強すぎてネタの旨味が掻き消されてしまっているように感じましたが、濃い味付けに慣れた外国人には向いていそうです。
お寿司は1貫ずつ手渡しで。カメラを構えるとすかさず決めポーズをしてくれるので撮影がはかどります。お寿司も他所と比べるとひと回りくらい大きくてボリュームたっぷり。お腹の空き具合に応じてシャリの量を調整したり、パス出来るので無理は禁物です。
私は特に「バタフライ」と呼ばれる昆布締めした鯖のお寿司が気に入りました。まるで羽を広げた蝶のように見えることから名付けられたこの1貫は、見た目のインパクトも抜群。脂が乗って柔らかく、鯖と昆布の風味、そして先ほど少し主張が激しいと感じていたシャリとも相性が良かったです。
「照寿司」のお寿司は、京風の薄めの味付けを好む私には全体的に味が濃く、かつ濃厚に感じるものが多かったです。正統派のお寿司というよりは、ちょっとひと味違うお寿司を楽しみたい人にオススメのお店と言えるでしょう。
レストラン名(ジャンル) | 照寿司(寿司) |
住所 | 福岡県北九州市戸畑区菅原3-1-7 |
TEL | 090-9567-2202 |
予算 | ¥38,500~ |
座席/個室有無 | 9席/個室無し |
予約の可否 | 完全予約制 |
公式サイト | https://terusushi.jp/ |
まとめ
ジャンルを問わず料理人の世界は厳しいものです。特に調理の様子が見えるカウンター席では度々そのピリついた空気を感じて、一緒に背筋を伸ばす気持ちになるのですが、「照寿司」ではそんな空気を一切感じることがありませんでした。
むしろお弟子さんが目の前で失敗してしまった時は笑顔でフォローしたり、自分もわざと失敗してお客さんの笑いをとってみたり。ビッグマウスが目立つ大将ですが、こういったところで彼本来の優しく繊細な人柄を感じてほっこりしたのでした。(2022年1月訪問)