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ペアリングで出された特別本醸造
佐賀県鹿島市。古い町並に酒蔵が並ぶエリアがあります。有名な酒造「鍋島」が経営するオーベルジュ「御宿 富久千代」が2021年5月にオープン。その中の日本料理店「草庵 鍋島」が宿のオープンに先駆けて3月にオープンしていました。茅葺屋根の古民家宿の中のお店はカウンターに最大6席限定の贅沢なカウンター割烹です。
料理長は28歳と若くしてたしかな経験を持つベテラン。鍋島の誇る日本酒ペアリングの夢心地のディナーの詳細をお届けします。
築200年・文化財の古民家のカウンター割烹

出される器もすべて価値のあるもの
大将と呼ぶには若い料理長の西村卓馬氏。3代目蔵元兼杜氏の飯盛直喜氏がこのお店を開くとき「頼んできてもらった」「来てもらって本当によかった」と絶賛する料理人です。東京神楽坂の3ツ星店「石かわ」や福岡の人気フレンチ「Restaurant Sola」でも研鑽を積んできたと言います。愛嬌もあってゲストとのコミュニケーションもばっちり。カウンター割烹にふさわしい方のようです。
サービス係のスタッフは料理人でもあるという女性と、最近入ったばかりなのにとてもしっかりした女性の2人。飯盛氏も挨拶かたがたやって来て、カウンター内でゲストの相手をしてくださいました。

サービス係の女性2名が丁寧にもてなしてくれる
17時一斉スタートのディナーは、私たち宿泊ゲストの他に外から来られた常連さんと初めてのゲストの男性各1名で、計5名のゆったりしたカウンターです。
築200年の茅葺古民家であり文化財に指定されている貴重な建築物なので、カウンター内で薪火はおろか炭火も使うことが禁止されているとか。そんな不便さもものともせず、大将は厨房の方へ焼き物をしに走り去り時々消えてしまいます。だからその間を繋ぐために飯盛氏やサービス係の女性たちが大活躍するのです。
「鍋島」の銘酒とペアリングで頂く至極の料理

一皿目の鮑と竹の子
はじまりは食前酒から。流通していないのでここでしか飲めないという発泡性の純米大吟醸の濁りを頂きます。空きっ腹に染みわたる美味しさ。
1皿目は唐津の鮑と竹の子の煮物。合わすのは鍋島で1番最初に作った特別本醸造を温かくして。お腹がホンワカと温まります。料理にももちろんピッタリ。
次は対馬の穴子とふきのとうの揚げ物が出ました。合わせるのは42℃で燗にされて出てきた甘みのある本醸造。穴子の甘みを引き立てます。食材を知り尽くした料理人と日本酒を知り尽くした蔵元との絶妙なコラボがなせる技なのでしょうか。次は白甘鯛と蕪のお椀。明治時代の輪島塗です。すべての器も必見の素晴らしいものです。

お酒もお任せのペアリングで
純米大吟醸 山田穂40%はお造りに合わせます。第1弾は平戸の平目をあん肝で和えてとってもいい味わい。天草の車海老もプリプリに新鮮です。鍋島の日本酒を醤油とブレンドして下関で作ってもらっている刺身醤油やポン酢も出されます。
第2弾はトラフグのたたき。芽ネギとポン酢で食べやすくなります。赤ナマコは土佐酢のジュレで、苦手だったのに酢の美味しさもあって完食できました。
白味噌仕立ての白子に感動

お替りしたかったお粥は雲丹やカラスミ入り
次にお粥が出ました。唐津の紫雲丹、カラスミと有明海の海苔を載せて。山田錦を合わせました。後引く美味しさのお粥です。
お肉料理も出ました。佐賀牛のヒレ肉の炭焼です。九条ネギや原木椎茸、鵜こっちょうの温泉卵添え。肉に合わせてシークレットの鍋島ブラックラベルの登場です。購入価格は24200円の高級品です。最低限の表示しかない真っ黒のラベルです。シャープでやや酸味のある日本酒が膨らみをもたせつつ、口の中で食材と一体となった時、肉の脂を溶かしてくれてさっぱりする印象です。

とても気に入った白味噌仕立ての白子
ご飯の前にもう一品。白子のお椀が出ました。白子はあのぶよぶよした形が苦手で、あまり普段食べません。でもここで出たのは京都風の白味噌のお椀に入ったお餅のように丸い形の白子。膨らんで表面に焦げ目も付いていてクセもなく絶品なのです。白味噌にこれほど合うとは!ここの白子ならいくらでもいけます。
のどぐろの炭火焼きの炊き込みご飯が最後に出ました。これも美味しすぎて全員がお替りしたほどです。
デザートの出来立てココナッツアイスと塩のアイスも、さっぱりしていい締めくくりでした。日本酒ですっかり夢見心地となった私の頭が、冷たいアイスで少しだけシャキッとしたのでした。
レストラン名(ジャンル) | 草庵 鍋島 日本料理 |
住所 | 佐賀県鹿島市浜町 乙2420-1 |
TEL | 0954-60-4668 |
予算 | コース 22000円~ |
座席/個室有無 | 6席 |
予約の可否 | 完全予約制 |
公式サイト | https://fukuchiyo.com/souan.html |
まとめ

炊き立てのご飯を披露する料理長の西村さん。お若い!
普段それほど日本酒を飲まない私ですが、ここでのペアリングはやはり体験してみてよかったと思います。さすがは日本酒のプロ集団。料理の一皿一皿にぴったりの鍋島の銘酒を合わせて、料理の美味しさをまた倍増させてくれるのです。
私でもこれほど感動しているのですから、日本酒好きで鍋島のファンの人には本当に堪らないお店だろうと思います。この素敵なお宿にも泊りがけでお食事に行ってみてほしいと思います。
(2022年1月訪問)

お店のまわりの古い町並