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先日、「あるところ」に行ってきました。
……はい、今「あるところってどこよ」と思った皆さん。別にもったいぶっているわけでも濁しているわけでもなく、実は「あるところ」というのが店名。「あるところ」は佐賀県唐津市の鏡山のふもとにある今注目の日本料理店。夜になると街灯すら無く真っ暗闇が広がるこの田舎で、昔ながらの和食を振舞っているお店です。
「となりのトトロ」に出てきそうな台所
「むかしむかし、あるところに…」そんな出だしで始まるような物語の世界。そんな日本昔話の中の料理に憧れ、この店名に決めたと話す店主の平河直氏。自ら改修したという築130年の民家で、誠実に料理に向き合っておられます。
まるでジブリ映画「となりのトトロ」に出てきそうな佇まいの台所は、年季の入ったかまど付き。炊飯器や最新の便利な調理器具などはここにはありません。あくまで昔ながらのやり方で、和食の原型とも言える素朴で優しい料理を作られているのです。
平河氏は元々福岡出身の方。東京で長年修業をし、7年前にこちらのお店をオープンしました。特に縁もゆかりも無い土地だったそうですが、この唐津の田舎が長年夢見ていた昔話の世界のイメージにぴったりだったそうです。
究極の家庭料理
高級食材を使って複雑な味わいをつくり出す…勿論それも美味しいですが、「あるところ」の料理にはそれとは全く異なった魅力があります。言うなればそれは「究極の家庭料理」。どれもがシンプルで食べやすく、ホッとする味なのです。
まず出てきたのはほうれん草と百合根の胡麻和え。家庭的で真似したくなるお味ですが、茹で加減や胡麻の風味一つとってみてもやはりプロの技だなと思わせてくれる一品でした。
また〆鯖は唐津の海で獲れた新鮮な鯖を使用。程よく脂が乗り、おろしポン酢でいただきます。こちらも酸味のバランスがちょうど良く、鯖の風味がしっかり感じられます。
また自家製のカラスミを使用したカラスミ餅も美味しかったです。熱々モチモチのお餅とカラスミの塩味が絶妙で、華やかさはありませんが洗練された優しい味わいです。
この日の魚料理は鰆の西京焼き。料亭などで食べるとやたらと塩辛かったりしますが、ここのはやはり素朴さがあります。それでいて火入れの具合や中のふわっとした食感は高級店に引けを取らず、付け合わせの茎ブロッコリーの揚げ物も相性ばっちりでした。
「おむすび」にびっくり!!
またホヤの貝柱とセロリのかき揚げは少量の塩につけていただきます。揚げたてホクホクのかき揚げは衣が軽く、サクッとした食感。何個でも食べられそうな美味しさでした。
そしてメインにはガスコンロを持ってきて、あらしゃぶを囲みます。魚はもちろんのこと、出汁の染み込んだ野菜も美味。もしかしたらこの後ご飯を投入するかもしれない…なんて思いながらも出汁を飲み続けてしまったのですが、出てきたのはなんと塩むすび!
日本料理店で食事をすると、大抵釜で炊いて余ったご飯をおむすびにして持たせてくれますが、はじめから握って出してくれるところは初めてです。しかも「おむすびころりん」などの日本昔話に出てきそうなあの綺麗な三角の形そのまま!いつもお食事が出る頃にはお腹がいっぱいで「量は少なめで」とお願いするのですが、あまりの美味しさにおかわりしてしまいました。2個目は梅干しを入れて海苔で巻かれたおむすびで、こちらも美味。なんでおむすびにするとより美味しく感じるのでしょうか…不思議です。
レストラン名(ジャンル) | あるところ/日本料理 |
住所 | 佐賀県唐津市鏡732 |
TEL | 0955-58-8898 |
予算 | ¥12,000~ |
座席/個室有無 | 座敷あり |
予約の可否 | 完全予約制 |
公式サイト | http://arutokoro.com/category/home/ |
まとめ
どの料理も一見シンプルなのですが、このシンプルさこそ「あるところ」が目指す料理の形なのでしょう。店主の平河氏もその料理スタイルに誇りを持っておられ、曲げることはありません。
やっぱり和食って美味しい。そんな風に思わせてくれる素朴で優しい料理に出会えました。(2022年1月訪問)